表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

258/367

258 特殊な入り方。


僕の目の前に広がる景色に何の変化も見当たらない。

ただ、日本の田舎の風景?みたいな場所だ。一つ違うとするならば、道の横に大きめな石の灯篭がある程度だ。それがあるからと言っても誰も気にしないのではないだろうか?


「ここに、何かあるんですか?」


「もちろんです。これが目印になります。」


梅花さんはそう言って、石の灯篭を指す。


「これは灯篭と言って、特別な物です。」


「確かにここまでくる間にあったモノより大きいですけど、それだけではないんですか?」


そうなのだ。この道には一定間隔で灯篭が置かれている。右にあると次は左にあるという感じに設置されているんだから、特別であるとは思えないんだよね。


「資料にも書いてあったと思いますが、ヒミコ様が治める地域の中は全て結界が張られており、わからないようにしてあります。それ自体はヒミコ様の趣味です。という訳では無いのですが、偶に侵入してくる者がおりますので、それから守るという意味合いも含まれています。で、目印として色々な物が用意されています。ヒミコ様の宮殿の目印は基本的にはお教えできませんが、目標となるのは、あの鳥居です。」


確かに、よくわからないけど何番目かの鳥居を潜る時に特別な事をした記憶があるな。


「で、ここはこの石の灯篭なんです。ここから入る場所は温泉街なのです。でここは。」


と言って梅花さんが石の灯篭を地面に向かって押し込むと、ガンという音と共に灯篭の向こう側に、その更に向こうへと向かって道が開かれた。

石畳になっている道で両サイドには石の灯篭が規則正しくたっている。道を照らす灯篭という感じだ。そこに元々あったかのように出現した道はずっと森の奥へと続いている様だ。


「という感じです。時間が経つとまたこの入口は消えてしまいます。さぁ、行きましょう。」


ニコッと笑って先頭に立ち入っていく梅花さんに連れられて僕達も入っていく。

森は木が高く密集している為に暗い。そこに灯篭の光が道を照らす様子は幻想的な光景を形成している。暗くなればなるほどに、より綺麗に見えるんではないだろうか?

小さい頃に祭りの夜の神社の光景を思い出す。爺ちゃんに初めて連れて行ってもらった時に縁日の屋台で買ってもらったりんご飴を思い出した。それまでは夜に出歩く事も無かったから、より一層、あの夜の風景を記憶しているのかもしれないなぁ。


「この道の先にある温泉は精霊が好きな温泉ですから、別の地域からも良くお越しになりますよ。」


「そうなんですね。」


「今日も、沢山の方々がお越しになっているかもしれませんから、出会いもあるかも知れませんし、逆に絡まれる事があるかも知れません。」


『その心配は不要じゃ。』


「うん?また?」


「どうかなさいましたか?」


「今、ヒミコさ、まが、急に割り込んで僕に話しかけて来てるんですよ。」


『なんじゃ?嫌なのか?』


「大丈夫ですか?」


交互に話しかけられる事で、どう答えたら良いのかわからない。


「同時に質問されても答えられないよ。先ず、ヒミコ様の方は別に嫌じゃないですよ。ただ、ビックリしただけです。梅花さんの方の答えは大丈夫です。ところで、ヒミコ様どう問題が無いんですか?」


『なんじゃ?ヒミコ様って?いつからそう呼ぶようになったんじゃ?』


「キヌさんや他の方から注意を受けてそう呼ぶようにしました。」


『やめい!ワシが許す!良いな?様はいかん!!』


「でも、怒られるのは僕なんですけど?」


『うるさい!徹底して指示を出しておくから気にするな!良いな!』


「はい。わかりまいした。ではヒミコさんで良いですか?」


『ダメじゃ!呼び捨てに決まっておろうが!!』


「いやいや、それは無理がありますよ?」


『ワシが良いと言っておるから良いのじゃ!わかったな!!』


と言って、それ以上言わせる気が無いのか、呼びかけても繋がらなかった。

僕には拒否権が無く、ヒミコさんには有る。なんと不公平な事だろうか!

結果、何がどうして大丈夫なのか、分からなかった。


「どうでした?」


梅花さんが聞いてくる。僕がヒミコさんと話していると分かって黙って待っててくれた。


「どうもこうも、無いですよ。呼び方が気に入らなかったみたいで、一歩的に決められて、通信も切られました。」


「はぁ?」


「何か、ヒミコ様と僕に呼ばれるのは嫌みたいです。で、さん付けにして呼んだらよれもダメだと。呼び捨てにしろと命令されました。それを厳命するとも言ってました。」


「嘘でしょ?」


「いや、嘘ついても僕には何の得も無いですけど?」


「それはそうよね?でも、本当に本当なの?」


「はい。どうしたら良いんですかね?」


「「「言われたように呼ぶ。」」」


「ですよね。あははは。」


何故か、ここで三姉妹は息が合う様子を見せる。本当の姉妹なのかは分からないけどね。

三人ともちょっと前のめり過ぎないかな?


「他には無いんですか?」


「はい。ありません。」


正直に答えるしかないよね?だって無いもの。


「はぁ~。そうですか。仕方ありませんね。」


「まぁ、ヒミコ様ですからね。」


うんうんと、皆さんが頷いていらっしゃる。なんだろね?これ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ