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257 近場に行きます。


人を近づけない険しい山々が聳え立つ場所。

その山の一つにひと際険しい山の山頂。

その山頂の中にある神々しい光が差し込む場所に青年が横になっている。

そして、その青年を同じ年位の青年が優しい目で見つめている。


「上手くいったか?」


「あぁ、お前の予定通りに進んでいる様だ。」


「そうか。」


「でも本当に良かったのか?お前の孫なのだろう?」


憂いを持った顔つきになる青年に精悍な顔の男は聞く。


「可愛い子には旅をさせろと言うだろ?」


「それはそうだが・・・、まぁ信じて待つしかないか。」


何か言いたそうにする精悍な顔の男は自分を納得させるように押し黙る。


「では、私は戻るよ。」


そう青年は言うと、横たわる同い年位の青年の頭を愛おしそうに撫でると、その横で添い寝をする感じでくっついている刀を見てニコリとする。


「あぁ、ここは任せろ。なぁペレ。」


『そうじゃ。任せると良い。』


綺麗な顔立ちの女性が返事を返す。常人が見る事が出来ないその女性に軽く会釈をすると、青年は消え去る。そこには魔法の残滓が残り、一陣の風が吹き、何処からともなく一つの白い羽が舞っているんであった。



◇◇◇◆◇◇◇



見送った感じの精悍な顔つきの男と綺麗な顔立ちの女性は横たわる青年を見る。


『人間とは不思議な生き物よ。』


「確かにそうだな。【かわいい子には旅をさせろ】とは、俺たちの故郷でよく聞いた言葉だが、なかなかその立場になると難しいものだ。」


『ふふふ。まぁ、苦労しておるものな。』


「仕方がないだろう。その【子】の為に、お前の親分と話をつけてお前と契約して、ここまで来たんだからな。今はその【子】も無事に転生してくれていて、何時でも会う事が出来る様になったんだ。」


『そうよな。そのおかげでこうして我はお主の傍にいる訳だからの。』


昔を懐かしむ男女の脳裏にはここまでの道のりが呼び起こされている様だ。


「時代は次の世代に、か?」


精悍な男の顔には厳しくも優しさがにじむ顔になっている。


『・・・。』


その言葉に返事をすることなく精悍な顔つきの男を優しい眼で見ているだけだった。



◇◇◇◆◇◇◇



「あれ?」


「煉。どうしたの?」


直ぐに僕の異変に気付いた桜花が聞いてくる。


「いや、今頭を撫でられた気がしたんだけど、気のせいかな?」


僕は撫でられたと思った頭をさする。


「気のせいでは無いかもしれませんよ?」


「えっ?」


「現世の煉さんの頭を撫でた人が居る可能性がありますからね。」


そうか。そういう事があるよね。梅花さんの説明に納得する。


「ところで、今から行くのは一つの集落を形成している場所ですよね?」


「そうですね。ある意味で城下町的な場所ですね。ヒミコ様を主とするエリアの中でもヒミコ様がいらっしゃる宮殿の近くになりますから。直ぐに着きますよ。」


そう。僕達は今、このエリアにある集落に向かっている。

資料を見たり、案内役の梅花さんの話から、やはり、旧日本式に形成されている地域となっているようなのだ。

僕の知る昔の街並みとは京都の街並み位なもんだ。

それより更に前になると僕にはわからない。せいぜい、時代劇で見るようなモノぐらい。


「楽しみだな。ねぇ、桃花さんは行った事あるの?」


「あります。ヒミコ様が統治しているエリアは行動できる許可が下りてますから。」


「なんだよ?さっき迄の元気は何処に行ったの?」


「旅とは知らない所に行くものです。」


分かり易く、すねていらっしゃる。

でも仕方ないよね?僕は来た事が無いんだから。ねぇ?


「桃花。子供みたいな事しないの。」


「でも~。」


「でもじゃありません。」


プププ。桃花さんが梅花さんに怒られてる。笑える。

グイっと桃花さんが僕の方を向いてきた。


「何、笑ってんのよ!」


「いや。笑ってないですけど?」


「ニヤニヤしてるじゃない!キモイんですけど!!」


うぁ、八つ当たりだよな?これ。

ちなみにキモイって言われて少しへこんだ。キモイはきついよね。


「今のは煉が悪い。確かに笑っていた。」


「そうだそうだ!」


桜花参戦!って感じか!戦慄が走る!

ここで、『なに?!』って言えばノリが良いんだろうけども。


「いやいや。何で僕が悪くなるの?八つ当たりじゃん?!」


僕は懸命に自分の正当性を主張する。


「裁判長!煉さんは、嘘をついてます。実際に私が怒られているのを見て、笑っておりました!」


「うむ。判決を下す!煉は全ての罪を認め、謝罪する事。そして荷物持ちを一時間!」


いつから裁判長?そもそも裁判っていつ始まったの?と心で突っ込みながら。


「すいませんでした~。」


やる気のない声で答えた僕も十分子供っぽいかもしれない。


「これにて一件落着!」


「はは~。」


いつから裁判長から、お代官様に?色々ごちゃまぜになってません?桜花と桃花さんの茶番劇が繰り広げられた。


「うふふふ♪」

「あははは♪」

「おほほほ♪」

「けっけっけ♪」


皆が笑っている。一つ笑い方が変なのが有るけど。それはスルーした。


「さぁ、おふざけはそれぐらいにして、中に入りますよ?」


「えっ?」


僕には何もない所に見えますけど?何処に入るんですか?えぇ?


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