25 入試2
申請した建築実技だ。建築と言っても幅は広い。設計から建設まである。
私は、設計をした。前世でしていた仕事だ。今世でみ見ていないタイプの建設技術を敢えて駆使してみた。
それは、設計だからだ。建設になると素材の用意から必要になるからだ。
もちろん、この設計における素材は必要になるこの世界では未知の設計になるだろう。
そして、ここが大事だが。とても大事だが、前世の記憶のある私にはどうしても、温泉と言えば露天風呂に旅館だ。あれを再現したい。温泉があるという事がわかった時から、これは外せないのだ。
しかし、マカロッサ領には源泉はない。となると王領にある源泉を利用する必要がある。その為には国に施設建設許可が必要になる。それには設計者として関わる事しかないと踏んだのだ。その為に試験を利用する事を選んだ。絶対に選んでもらう為にも必要だと勝手に思った。温泉の為にも主席を諦める事になってもだ。そんな強い想いを持って挑んだのだ!!
失礼。少し熱くなりすぎた。
さて結果はどうなるのかわからない。渾身の出来だ。障子ひとつ、襖ひとつ、どれが欠けてもダメだから全て設計した。時間はかかったが問題は無い。妥協はないのだ。
気が付いたら、試験時間ギリギリまでかかっていたのは追記しておこう。
◇◇◇◆◇◇◇
「すまぬ。私にもこれが何なのかサッパリわからん。未知なる物と言っても良い。」
「なんと、ダンバル殿でもわからんのか?」
「しかし、これほど精密な設計図を作れる物がいるとは俄かに信じがたい。しかもそれが受験生であるとは信じられん。」
「我がアスワン王国が誇る設計士にそこまで言わせるとは・・・。一体何者なのだ?」
「どうやら、マカロッサ家の跡継ぎになるザバルティ殿のようです。」
「マカロッサ家かぁ。」
「なんだ?マカロッサ家とは?何かあるのか?」
「ダンバル殿はご存じないか?」
「あぁ、ダンバル殿はホランド神聖国の出身者だからな。」
「で、マカロッサ家とは?」
「マカロッサ家は特殊な家系で、子爵家でありながら、力をもっている家なのだ。建国を手伝ったとされる最古の貴族の家系なのですよ。」
「しかも、アスワン王国の王族と同じくフリーア王国の王族の血統でもあるのです。」
「では、何故子爵なのだ?」
「それは、権力を持たない事で服従する事を誓ったと聞いている。」
「いやいや。それは俺が聞いている事と違う。時の王があまりに有能過ぎて危険視して子爵に留めたと聞いている。」
「なんと。どちらにしても力を秘めた一族であるという事か。」
「そうだ。それにマカロッサ家は港のある領地であり、交易が盛んな所だ。情報が集まる場所でもある。」
「それにしても、凄い者が現れたもんだ。このアスワン王国の未来は明るい!」
「ダンバル殿にそうおっしゃって頂けると嬉しい限りだ。」
「わしは、この設計図を使って建設したい。さぞ凄い物が出来るであろう。こうしておれん。建設大臣に掛け合わねば!」
「お待ちください。ダンベル殿。」
ダンバルと言われた男は扉にぶつかるようにして部屋の外にでた。
その後を、先ほどまで一緒に話をしていた二人の男も慌てて追う。
◇◇◇◆◇◇◇
私達5人は各自で自己採点をおこなった。
皆、座学については90点以上あると思われる。
そして、実技も緊張する事なく終えれた事を確認した。
後は結果を待つのみだ。
「私は特待生になれるかな~?」
「アリソンは頑張ったよ。自信を持てよ。」
アリソンとトーマスがそんな会話をしている。
「まぁ、やれるだけの事はやったろ?」
「そうですね。鬼気迫る勢いでしたし。」
ロバートにミーリアがそんな感じで同調する。
「そりゃあ、ミーリアにはまけられないもん。」
「うん。理由はどうであれ、アリソンも皆も頑張った。」
「でも、ご主人様は大丈夫だったのですか?建築等をえらばれておりましたが?」
「そうだよ~。ザバルティ様は自信があるのですか?」
「それはわからんよ。ただ、私が知る限りの知識をぶち込んだ傑作の設計図になった事だけは確かだ。」
「凄い自信ですね。」
引き気味なトーマスがそう言う。
「神の使徒の力のフル活用ですか?恐ろしい。」
ロバートが同じように引き気味にそう続ける。
「そうだが?どちらかというと前世の記憶に私の情熱込めたというのが正しいかな?」
「ご主人様。その情熱は特等生になる為にぶつけたのらないいのですが・・・違うのですよね?」
「よくわかってるなミーリア。」
「あれですか?自身の欲望を優先しましたね?」
「何を言う。質の高い露天風呂に旅館は国の為だ。」
「あぁ~やっぱり露天風呂と旅館なんだぁ~。」
「「「「絶対、個人の欲望だ!!」」」」
「ぬぅ。皆だってあれが出来たら、絶対に涙を流して【ありがとうございます。これは国の宝になります。】っていうぞ。」
そう言ったのだが、皆がジト目で私を見るのはなんでだ?
露天風呂と旅館の素晴らしさを知らない者達はこれだからイカン。
神の使徒である私が個人を優先し、欲望のままに行動するわけがなかろうが!!
≪マスター。試験に受かり、特待生になる事が目標ではなかったですか?≫
なぜだろう。私に対するシステムの声が冷たさを持っているような気がする。
「これだから、知らないという事は恐ろしい。」
私は独り言のようにそう言って、やれやれという態度をとり部屋へ引き下がったのだった。




