249 案内されたその先は神社?
「では、ご案内致します。」
僕達の驚きを放置して、案内を続ける和装の女性はドンドンと進んでいく。
すると、建物の中から別の人達が複数出てきて、僕達を出迎える様に立ち並ぶ。
その、出迎えをしている人の方から、声が掛かる。境内の様な場所に建物が並びその中心地辺りでの事だ。
「おい、キヌ。その者達はここより先には行かせんぞ!」
「これはまた可笑しげな事を申されますな?ヒミコ様はその事をご存じなのですか?」
「ふん。ヒミコ様を篭絡し今回の事を勝手に決行したお主に言う事は無い!」
「知らないという事ですか・・・。面倒ですね。」
「面倒だと?!」
何やら不穏な空気が流れだす。どうも僕達の事で揉めてるっぽい。
「まぁまぁ。そんなに怒らなくても良いではありませぬか?ソガ殿。」
「そうは言うが、モノノベ殿は気に入らないとは思わないのか?」
「そうですねぇ。キヌ殿、その者達の力を示して頂く事は出来ませんか?そうすれば、我らもヒミコ様の意向に逆らうつもりなど無いのですから、納得するでしょう。」
「モノノベ殿。今回の事はヒミコ様が直に命令された事です。ヒミコ様にお伺いになればよろしいかと?」
「ほぉ。さようでしたか。ではお聞きしに行くとしましょう。キヌ殿、ご案内して頂けますか?」
「御一人で行かれたら良いのでは?」
「流石に、私はキヌ殿を越えて伺う様な無粋なマネは致しませんよ。それともその者達をここに置いておくのに不都合がございますか?」
「いいえ。そのような事はありません。」
「では、お願いしてもよろしいですね?」
そう言われて、案内をしてくれたキヌさんという女性は僕達を見る。
「キヌさんでしたか?僕達は気になさらず行ってください。」
「大丈夫です。」
僕と桜花はそう答えた。その答えを聞いて仕方がないという様な顔になり、モノノベと呼ばれた者に顔を向けたキヌさん。
「良いでしょう。ただし、この方々はお客人です。もし何かあれば、処罰が下る事をご覚悟してください。」
「安心せい。我が精一杯もてなそうではないか。」
とソガと呼ばれた男がニヤリとして答える。
その様子を見た桜花は僕に近づいてきて小さい声で僕に話しかけてくる。
「大丈夫です。全て私が倒します。」
その言葉を聞いてやはり桜花も僕と同じ考えであるとわかった。
「では、キヌ殿。後の事はソガ殿にお任せして行きましょう。」
「わかりました。・・・どうなっても知りませんよ・・・。」
「えっ?何かおっしゃいましたか?」
その質問に答える事をせず、キヌさんは奥へと向かっていく。
「では、モノノベ殿。お客人のもてなしを任せましたよ?」
「ええ。任されました。」
ニヤリとしあう二人の男とその取り巻きの様な者達を見た僕はこういう奴ってどこの世界にも、居るんだなぁ~。って思った。
「じゃあ、お客人。こちらへどうぞ。」
男たちは僕達を囲う様にして周囲を固めると、移動を促してくる。
仕方なくそれに付き合い、しばらくついて行く。
境内から離れて外に出る。出るとは言っても、鳥居を潜る訳ではなく横にそれる形で塀で囲まれた神社の様な建物から離れて少し歩き平原の様な場所に出た。
「ここら辺で良いだろう。」
モノノベという名の男は立ち止まり振り向く。
「お前たち、痛い目に会いたくなければ直ぐにでも下山するんだな。」
「いいや。無理ですね。」
「はぁ?そりゃあどういう意味だ?囲まれているに理解してないのか?」
「いいえ。理解はしていますよ?ですが、無理です。」
「木っ端精霊が何言ってんだ?俺たちがわからないのか?」
「精霊?」
「ええい、面倒だ。やってしまえ!」
「「へい。」」
囲んでいた者達が一斉に襲い掛かってきた。
その一つの攻撃を避けて叫ぶ。
「ちょっと?何するんですか?」
「決まっておろうが、お前達が俺らに逆らえないようにするんだよ!」
「何か勘違いしていませんか?」
「うっせぇ!さっさとやっちまえ!!」
有無を言わさず攻撃を繰り出してくる男達。
「煉さん。もう話し合いは無理でしょう。ここはひとまず大人しくなって頂きましょう。」
そう言うと、桜花は近くにいた男の一人をぶっ飛ばした。
「「「はぁ?」」」
向こうにある大岩に激突した男は沈黙した。
それを見ている間にもドンドンと男たちをぶっ飛ばす桜花。技なのだろうか?体術?その動きがあまりにも早くて綺麗な動きなので、見惚れる。
「くそ!何だそいつは?!」
激昂しているソガと呼ばれた男。
そうこうしている内に、もうソガと呼ばれた男以外に立っている者は居ない。
「くそ!男の方だけでも!!」
ソガと呼ばれた男はどうやら僕に的を絞ったようだ。
リーダーっぽいだけあって、他の者より動きが良い。僕に切迫すると僕の腹を殴りつけてくる。僕は避ける事が出来ずにぶっ飛ばされる。
「うっ!」
「ふん。男は弱いようだな。」
「煉さん!」
桜花が近寄ってくるのを手で制した。
「大丈夫だよ。避ける事は出来なかったけど、見えているから。」
「もしかして、体の動かし方がまだわかってない?とかですか?」
驚きの顔になる桜花。いぶかしむソガという名の男。頷く僕。
そうなのだ。僕はこの精神体と呼ばれるこの今の状態での動かし方がわかってないのだ。
じゃなきゃ、あんなに遅い攻撃を避ける事が出来ないなんて、あの訓練をしてきた僕に出来ないはずがないんだから。




