247 精霊契約の儀式?
かの場所は遠き彼方にある竜が住まう山々が囲むいと高き山頂の光り輝く洞窟の中にある。
その話はほんとうだった。
燃える谷。凍る泉。風が強く吹き付ける平原。砂と化す岩肌の続く岩山。
これらを超えた先にある闇が支配する山脈の一番高い山の頂上にある光の洞窟。
苦難の旅だったハズだけど、この山脈の麓まで飛空艇で来ている。
「そんなに気に病むな。これも君の実力だ。昔から運も実力の内って言うだろ?ここまで来れる物を持っている者と知り合えた事が煉の運であり、つまりは実力だ。」
ズルをしている気がするけど今は一刻でも欲しい時だし、ラムザさんの言葉を聞いて気にしない事にした。
「それにしても、飛空艇なんて凄いですね。ゲームかアニメでしか見た事なかったです。」
「確かに自慢だよ。だけど、ゲートを知ってしまった今ではチョットな。」
「ドラ〇〇んの世界ですからね。」
「何だそれ?」
「いや。何でもないです。」
同じ転移者でもラムザさんと僕とでは地球に居た時の時代が大きく違うみたいだ。それに法則が有るのか無いのかも良く分からない。
「ところで、煉にはどんな精霊が力を貸してくれるのかな?今から楽しみだ。」
「何でですか?」
「いやなに。今までここに俺の部下をよく派遣していたんだ。精霊と契約させる為に。」
「へぇ~。そうなんですか?」
「あぁ。だけどな中々に大精霊と契約を結べる者は居なかった。みなその眷属ばっかでな。煉だから、大物を拝見できるんじゃないかと期待しているんだ。」
≪ふふふ。そう上手くいくとは思えんな。この小僧ではな。≫
あの会話の後から、どうも僕に対して厳しい反応を示す様になった火山のペレさん。
ただ、『村正・桜花』は嬉しそうな反応をしている気がするけどね。
「まぁ、直ぐにわかるさ。ほら、煉。目の前に見える場所が精霊契約をおこなう場所だ。」
「えっ?」
示された場所は洞窟のいたる所から光が差し、光が集中している神秘的な場所だった。
どうやったら、そこに集まるのだろうか?科学的にオカシイ場所だ。
「ここですか?」
「そうだ。よく気を張ってみろ。今のお前なら気づくんじゃないか?」
ラムザさんの言う通りに集中して、その光の集まる場所を見る。目ではわからないが、そこに気が集まっている不思議な空間である事がわかった。
「わかったか?」
「はい。」
「では、わかるな?」
僕はうんと頷くとその光の集中する場所へ行く。そしてその中に入って目をつむる。数秒後には声が聞えてきた。
≪くすくすくす。≫
≪人間がきたね?≫
≪異界人?≫
≪異界人?≫
≪異界人?≫
笑い声に交じって疑問の様な言葉が僕の耳に聞こえてくる。
≪無理。≫
≪むり。≫
≪ムリ?≫
あまり歓迎されていないような気がする言葉が続く。
≪だれ?≫
≪ムリ?≫
≪弱い?≫
≪強い?≫
≪変な恰好?≫
≪可愛くない?≫
やはり、否定的な言葉ばかり。
≪邪神に見初められてる?≫
≪まぁ怖い。≫
≪複雑?≫
≪無理?≫
辺りに居たであろう精霊の気配が消えた。
「えっ?」
「これは面白い!初めてだ!」
「無いがですか?」
≪誰もお前と契約を結ばなかった事がじゃ。≫
「えっ?」
ペレさんの言葉に衝撃を受ける僕をよそに、ラムザさんは笑っている。
「これは衝撃的な展開だな。ただの一つも煉と契約しないとはな。あり得ない事だが、ある意味で快挙だ!ははは!」
「いや、笑い事では無いですよ?俺真剣なんですからね?」
≪凄いのぉ~。≫
何故か、ペレさんは感心している様子だ。皮肉だろうか?
そんな事を思っていると急に集中していた光が拡散してそして光が強まる。
僕は思わず目を瞑る。
「うあぁ!」
≪神崎煉とやら、汝をこちらへ呼ぶ事になった。≫
そう言葉が聞えた気がする。
≪お待ちください。その者は我が主の友の者。連れ去りは困ります。≫
≪心配するな。それより精霊神様の下知だ。≫
≪そんな!まさか?≫
ペレさんが話している様子がわかるが誰と話しているのかわからない。辺りは光に染まり見えないからだ。
≪お前たちはそこで待て。そう時はかからぬ。≫
そう言葉を紡いで、その存在は僕をに意識を向けた気がする。
≪では、異界の世界より招かれた者よ。行くぞ!≫
「えぇ?何処にですか?!」
僕は予想できない事態に慌てていた。
≪その刀は?≫
その瞬間に僕の持っている『村正・桜花』は激しく抵抗するかのように力を出しているのがわかった。
≪ほぉ~。≫
感嘆の声を出したその存在は近づいてくる感じがする。
≪普通の鉄は跨げないが…面白い。≫
その存在は僕が持つ刀『村正・桜花』に気づいたのか、ぼそりとそう呟いた気がする。
そう思った瞬間僕の体が浮いた気がした。緊張し体が強張る僕に気が付いたのかその存在はゆっくりと僕を見つめた気がする。
≪心配するな。≫
そう発言した。だが、僕は体に力を入れた。いや正確には入れようとしたのだが、思う様に入らない。おかしい。僕は恐る恐る目を開くと僕は下を見る。そこには僕の体が横たわっていた。
≪では、行くぞ。≫
その声のする方を見ると、そこには長い鼻をした赤い顔、下駄を履いている存在が居た。
そう、あの天狗の様な格好をしたモノが居た。
「て、天狗?」
≪よくわからぬが、急いでいる。≫
再度促されて、天狗は僕を左手で掴むと右手に持ったヤツデの葉を振ったのだった。




