246 訓練に訓練を重ねると?
「君が煉君だね?アリソンだよ。よろしくね~。」
「あっ、はい!煉です。宜しくお願いします。」
どこか、間の抜けた感じの話し方をするザバルティさんの仲間であるアリソンさん。
今日はアリソンさんに、魔力についての講義をしてもらう事になっている。
魔力量を増やすためにする訓練だ。精霊魔法とは基本的には精霊そのものを召喚して使役するか、契約している精霊の力を借りて魔法として行使するかの二つある。基本的に精霊と契約を交わすと爆発的に魔力はアップするらしいのだが、基本的魔力が高い方が断然良い。
そういう事もあり、魔力の訓練をする事になったんだけど。
「こうやって練ったら、バーンって放つ感じで。」
という様に、アリソンさんは感覚派の天才肌の様で容量を得ないのだ。
はっきり言って難しい。僕は天才では無いから。
「う~ん。同じにならないね?どうしようか?」
どうしようかって言いたいのは僕です。
「アリソン。彼には話しても難しいでしょう。実践あるのみですよ。」
「でも、コーネスどう実践するの?」
「そうですね。では、魔力の受け渡しとかをしてみてはいかがでしょうか?」
「魔力の受け渡しかぁ~。面白そうね~。やってみるわ~。」
そう言ってアリソンさんは僕と正面向きに向かい合って手を握ってきた。
「じゃあ~。行くよ~。」
するとドンっという感じでアリソンさんの魔力が僕の体中を駆け巡っていく。何て言えばいいのだろうか?本当に流れる様に体中を駆け巡って入ってきた方の逆の手へと流れて行ってしまう。
「す、すごいですね?」
「そぉ~?ありがとうね~。」
満更でもないようなかおになるアリソンさん。ちなみにコーネスさんは僕がここで訓練をしている間の世話をしてくれている。専属のメイドさんだ。アリアさんと同じエルフ族みたい。
「良い感じですね。煉さんどうですか?魔法の動きが凄く分かるんじゃないですか?」
「確かにそうですね。凄いです。後、初めより流れる場所の太さが太くなった気がします。」
つまり、広がったと言うのかな?
魔力回路が太く広がったみたいだ。もともと微量の魔力しか持っていなくて流れる量も少しづつだったから、一気にアリソンさんの魔力流しのおかげで、強制的に拡張されたみたいだ。
「うんうん。良いですね~。これであれば、最大魔力量も増えそうですね~。」
アリソンさんは簡単に魔力を任意に流せるが、これはやはり魔力の扱いに長けているからのようだ。自分がやってみた時にそれが分かった。
「これなら、少し頑張れば、精霊との契約が出来る様になった時にはかなりの魔力を持つことになるかもね?」
「ほ、ほんとですか?」
「うん。そうだね~。」
コーネスさんとアリソンさんの二人から太鼓判を貰った感じになって嬉しかった。これで一歩進める。
◇◇◇◆◇◇◇
「では、準備は良いか?」
「はい。」
僕は今、精霊契約という儀式をおこなう為にラムザさんに連れられて、精霊とコンタクトが取れる場所へと来ている。
「でも、どうやってここを知ったんですか?」
「簡単な事だよ。俺はそもそも火の大精霊フェニックスから直接紹介された火山のペレと契約したからな。ペレに聞けばわかるって寸法だ。」
「あぁ~。なるほど。」
そういう事か。ここは人の街から遠く離れた天然の要塞を越えた先にある。精霊に要が無ければ来る事がないであろう場所だと思う。
「さぁ、あともう少しだ。行くぞ。」
「は、はい。」
ラムザさんがさっさと厳しい山道を先に歩いて行く。
初めは、ラムザさんの所有する飛空艇で現地まで行く予定だったんだけど、「これも良い訓練になりますね。」とミーリアさんが麓から山道を歩く様にと指定されて歩いて行く事になった。
「優しいんだか、厳しいんだか。」
≪わからぬのか?お主には。≫
「そうだね。ペレさんはわかるの?」
≪我は火山の大精霊ぞよ。そんな些細な事わかるに決まっておろうが。≫
「そ、そうですか?」
たぶんわからないんだろうね。この返答は。と思っているとそれに同意するかのように『村正・桜花』がリンっと鳴る。
≪ふん。我を馬鹿にするとは、中々に粋がるじゃないか?≫
「おい。ペレ。その『村正・桜花』お前よりは先輩のハズだぞ?」
≪はぁ?≫
「たしか、700年前には存在している刀だからな。」
≪なんと?婆なのか?≫
その言葉を聞いてなのか『村正・桜花』から憤怒の感情が伝わってくる。
≪失礼した。申し訳ない。失言じゃ。≫
「へぇ~。素直に謝るんですねぇ~。」
僕は少し驚いた。気位が高そうなペレさんが直ぐに素直に謝罪できるのはイメージに沿わない。
≪なんじゃ。お主は我を何と思うておるんじゃ?≫
「まぁ、良いじゃないか。」
ラムザさんが助け船を出してくれる。
≪ぬぅ。そうは言うが。≫
「ペレ。少しは年上の貫禄を見せろよ。」
≪うぬぅ。≫
ペレさんは何かを言いたそうにしていたが、ラムザさんの説得で黙った。
「ほらほら、煉君も行くぞ。」
「は、はい。」
そうして、僕はラムザさんの後を追って険しい山道を上った。




