244 ザバルティグループ緊急会議
招集したメンバーが揃ったとシーリスが呼びに来た。
屋敷にある会議室は100人ほどが座れるスペースがある。
この部屋は某テレビでやっていた大銀行の会議室に似せて作った場所だ。
重厚で気品のある造りになって居る。
たまに父アルカティが、この部屋を利用していると聞く。
今日は、私が利用する。皆を呼ぶとここぐらいしか場所が無いと言う事が一番の理由だけど。
私が部屋に入り自分の席に向かうと一斉に皆が頭を下げる。うん。これは止めて欲しい事の一つなんだけど、ミーリアやトーマスから、「頭を下げる事をやめる事は出来ません。ザバルティ様は、貴族の世界に居る方なのですから諦めてください。」と言われ、止めてくれない一つだ。
私が席に着くと、皆も頭を下げる事を止めて席に座る。
「では、これよりザバルティグループ緊急会議を始めます。本日は私が司会を務めますので宜しくお願いします。」
間髪入れずにミーリアが宣誓する。
「「「「よろしくお願いします。」」」」
皆が答える。その一連の流れを見て私はビックリする。
「ちょっと?ザバルティグループ?それ何?それに緊急会議って?」
「ザバルティ様。おっしゃる意味が分かりませんが?ザバルティ様を中心とするグループであるのは間違いないでしょう?それとも、ザバルティ一家緊急会議の方が良いですか?」
「いや、そういう意味ではないよ?」
ミーリアは冷静に答える。すると、スススとシーリスが隣に来る。
「ミーリア様は前からこういう事をやってみたかったそうですよ?御前会議?重役会議?とかおっしゃっておられました。」
「えっ?」
ミーリアを見ると、爛々と輝く目をしていた。そして他の皆をみるとどうも楽しんでいる様子がある。
「うん。わかった。」
私が頷くと、スススとシーリスは元の場所に戻り、ミーリアに一礼する。
「では、問題がないようなので進めます。」
そうして、私がシーリスに指示した内容を総括して、【アリアさん救出&煉さん育成】と題打ち、細かな指示を議題として取り上げ、会議は進行していった。ちなみに、何故かラムザとアイゼンさんも参加している。心の中で思いっきり突っ込みを入れる。
一人は世界の【シャルマン商会】会長であり、もう一人は最近話題の魔王国から独立した都市国家スパルタの独立王。この二人が、参加する会議って何?って、後から聞いたら「何か楽しそうな事するんだろうな?」って思ったって言っていた。おかしいだろ?おい!
滞りなく指示されていく。それに対する疑問を直接私に聞いて意図をりかいして頷く皆を見ると悪くないと思う自分が居る。
そして全てが終わるとミーリアが締めとばかりに大きく頷く。
「では、頭取、最後の言葉をお願いします。」
「えっ?頭取?私?」
「そうです。何か問題でも?」
やはり、ここにきてもミーリアはブレていなかった。目は爛々と輝き冷静な言葉で返してくる。皆は神妙な顔でうんうんと頷いている。これはあれか?プレイか?まぁいいか。
「では・・・やられたらやり返す。〇返しだ!」
それまで、乗っていたであろう皆がポカンとした顔になった。ただ一人ミーリアだけは違う反応だ。
「おぉー!」
一人手を挙げて声を上げる。それを見た皆は慌てて同調する。
「「「「おぉー!」」」」
そして、それを満足そうに頷いて見ているミーリアを見て苦笑する私だった。
たまには、こういうのも良いだろう。木霊のように鳴り響く声を聴いてそう思った。
◇◇◇◆◇◇◇
「のって頂きありがとうございました。」
会議室を出て私室に戻ると、ミーリアが入ってきて感謝を述べる。
「いや、いいよ。ちなみにミーリアは知ってるの半〇直〇。」
頭を横に傾げてはて?という顔になるミーリア。
「半〇直〇ってなんですか?」
「そうだよな。知る訳ないよな?」
そう、この世界の住人であるミーリアが知るはずのない言葉だ。
「人の名前ですか?」
「そうだよ。人の名前だ。煉さんが元居た世界で、私が前世で生きたで生きた世界の人の名前だよ。」
「はぁ。そうなんですか?」
まぁ、架空の人物ではあるけど、人の名前である事は間違いない。
そう言えば、あの続編はでたのだろうか?小説の方は読んでいたけど、TVの方は続きを作製するという話だったけど、主演の人が忙しいとかで、予定が立っていなかったな。
その場のノリでミーリアは答えたんだな。ミーリアは一人世界に入ってたんだろうな。まぁ、深く考えても仕方がないな。
「それより、皆は理解力が早いな。」
「そうですか?普通だと思いますけど?」
組織において難しいのは、人の理解力だ。如何にトップの考えを下の者に理解させるのかが成功のカギを握ると言っても過言ではない。理解して動くのと理解せず動くのとでは成功率も達成率も変化する。
そもそも会議で物事を決めるというのは非常に難しい。結果多数決で決定というのが普通だ。物事の決定は少数で決まるし、その方がレスポンスが良い。
だから、会議とは物事の決定をする場所と言うより、発表の場所だと言えるのではないかと思う。それを主要メンバーに周知させる事がその役目ではないかと思う。
もちろん、全てがそうであるとは言えないだろうが、多数決で決めると言うのはフェアではない気がするのは私だけだろうか?それに責任もなかなか追及しにくい。
明確な責任者が出ないからね。
「さて、私も準備をしようかな。」
「わかりました。」
私が向かうのは鍛冶場。この間、リリアーナ隊に配ったら、他の皆も欲しいと言ってきた。だから私はそれに答える事にした。




