２４２ 色々ある優しさ。
「うっ。」
頭から足先まで痛い・・・。あれ？痛くない。
「気がつきましたか？」
「あっ？桜花？」
「そうです。」
「アリアさんが、アリアさんが。」
僕は思い出し慌てる。
「知ってますよ。見ていましたから。今慌ててもどうにもなりません。どう転んでも煉さんが勝つ見込みはありませんんでした。」
「だけど、アリアさんが！」
「心配は要らないと思います。直ぐに殺される事は無いでしょう。」
「なんでそう言い切れるんだ！」
落ち着いている桜花を見ていると段々と腹が立って来る。
「貴方に頑張ってもらう事があの者の望みであるからです。」
「直ぐに起きて追わないと！」
「それは無理ですね。」
「なんで！！」
僕は取り乱す。
「今の煉さんでは倒す事が出来ません。」
「そうかもしれない。そうかもしれないけど、ブライトさん達が「無理です。」」
一刀両断される。それも僕の言葉に重ねる様に。
「先ずは落ち着く事です。そしてこれからどうするかを確りと考え行動する事です。」
「いや、だけど！」
「煉さんはアリアさんを助けたいんですか？それとも見殺しにしたいんですか？」
「助けたい！」
「で、あれば今は落ち着いて考えるのです。アリアさんを助ける為に。焦っては助けるどころか殺してしまう事になりかねません。」
「だけど、桜花だって言ったじゃないか？今の僕では助ける事が出来ないって。」
「そうです。」
僕は兎に角気が気じゃない。どうにかなってしまいそうだ。それでもよく考えろと桜花は言う。
「でもどうしたら？」
「あの者は言いました。≪邪神の使徒≫であると。であるならば、≪神の使徒≫が居るハズです。しかも遠くない所に。」
「何で、そう言い切れる？」
「光あれば闇がある。であるならその逆もまたあるという事です。それが摂理です。だから、今は自分が出来る事を確りとする事。それが今の煉さんが出来る事です。」
ぐずる僕の前に立った桜花はいきなり僕の頬を叩いた。
〔バシン！！〕
「痛い！」
「本当に、落ち着きなさい！今、貴方が置かれている状況を打破するのに、『慌てる』という感情と行為は必要ありません！今、貴方がすべき事はあの者を倒せる力を手に入れる事です！良いですね！！」
「は、はい！」
「よろしい！」
僕は『村正・桜花』が始めてみせる剣幕に圧倒された。
研ぎ澄まされた感じというのだろうか？暴力の中に見せられた優しさを感じた。
不思議な感覚だ。
確かに、桜花が言うように、今の僕では力不足だ。
力を得るためにあがく必要がある。今はそこが僕の頑張るべき所だ。
「さぁ、ぐずる時間は終わりです。さぁ、目覚めなさい。」
「わかったよ。ありがとう桜花。」
◇◇◇◆◇◇◇
「・・・おい。大丈夫か？」
「うっ！」
「やはり、体中が粉々の様だ。これでは私達では治せない。やはり、ザバルティ様の所へ連れて行くしかない。」
「待ってくれ！ワシの仲間なのじゃ。勝手に連れて行くのは辞めてくれ。」
「では、アンタも来るかい？」
「わかった。少し待ってくれ。他の者も連れてくる。」
「構わんが、急いだほうが良い。死んでは治せないぞ！」
その場をかけていく音が聞こえる。
「あ・・・。」
「少し痛みだけは取ってやれるが、治すには私達では無理なのだ。だから少し我慢してくれ。」
それを聞いて安心した僕はまた気を失った。
◇◇◇◆◇◇◇
次に気が付いた時には、僕はベットの上に寝かされていた。
「ここは？」
誰もいないと思った僕は独り言を吐きながら辺りを見渡す。
「おぉ、気づいたか？体はどうだ？」
そういえば、体は粉々になったんだっけ？僕は体をさすったりして確かめるが、何処にも痛みが無い。
「どこも痛くない。」
「そうか。それは良かった。少し待っておれ、皆を連れてくる。」
そう言ってブライトさんが出て行って直ぐに他のメンバーと見慣れないメンバーが部屋に入ってきた。
「あの、ブライトさんこの方達は？」
「馬鹿垂れ！この状況を見てわからんか？お前を助けてくれた方々だ。クリスチーナもお前は助からんと言っておったんじゃぞ？」
そこまで酷かったの？
「四肢が千切れ、体中の骨が粉々になっていたからね。」
「えっ？クリスチーナさんが普通にしゃべった？！」
「ふふふ。驚く所が違うんじゃないかい？」
バーナードさんの突っ込みを受けた。
「でも、魔法がある世界では治せると思っていたから。」
「バカモン！普通は治せんわ！！」
いつも通りの反応をしてくれるブライトさん。そしてあきれ顔を見せるメンバー達。
「そろそろ、良いですか？紹介したいんですが。」
「すいません。ミーリア様。お願いします。」
ミスコンティさんが、代わりに謝罪しお願いしている。
「では、煉君。ご無事で何よりです。私はミーリアと申します。でこちらにいらっしゃる方が、ザバルティ・マカロッサ様です。煉君を治してくれた方ですよ。」
「ザバルティだ。よろしく。」
「神崎煉です。ありがとうございます。」
僕は感謝を述べた。でもこの二人にはどこか懐かしさを感じた。でもあった事は無いはずなんだけど？しかもすごく優しい目を僕に向けてくれている。そうアリアさんと同じ優しい目だ。
