233 死んだ後に・・・再会
ひゃほーい!
もう直ぐ会える。あの人に会える♪
ニマニマしていたのだろうか?隣に居るベリーが引き攣った顔でアタシをつついてくる。
「怖いから、その顔止めて。頼む。」
「そ、そんなに?怖い??」
コクコクと頭を上下させるベリーの顔は若干青くなっている。って嘘でしょ?そこまで?アタシの顔って凶器なの?嘘だぁ~?
「本当に怖いよ。気をつけた方が良い。」
「そんな~。」
アタシは愕然として手を前についてしまった。
喜びの顔のハズが、人に恐怖を与えてしまうとは。アタシはどうしたら良いんだ!
≪ニマニマしなければ良いのです。≫
神の声をアタシは聞いた。決してカミコちゃんでは無い。神の声だ!
そうだ。いつもキリってしておけば良いんだ。それなら出来る。
≪今回のザバルティ様は何て言ってくれるのでしょうか?『ステファネスよく頑張った!』と言いながら頭を撫でてくれるのでしょうか?≫
「ちょっと!今言ったじゃん。顔ヤバいって。ニマニマしない!」
神の声では無く邪神の声だったのか?アタシはカミコちゃんに良い様にやられている事を自覚したさねぇ~。
「今度は落ち込んでるし。わけわからん?『百面相女』と呼ぼうかしら?」
≪『百面相女ステファネス』≫
ちょっと、待って直ぐに心立て直すから!って心で叫びました。はい。
「おい。そろそろ、ザバルティ様がいらっしゃるビテングの街の拠点に着くぞ。用意しろよ?」
チェリーが呼びに来てくれたが、今はそれ処じゃない。アタシの一生のあだ名がつくかつかないかのターニングポイントだ。
「ザバルティ様もいらっしゃるそうだ。」
「はい?はい!?」
アタシはこうしては居れない。直ぐに準備しなければ!!
「また、顔変わってるよ~。これは決定かな?」
遠くの方で、そんな言葉が聞こえた気がするが今はそれどころでは無い。ザバルティ様に会えるタイミングなのだから。
◇◇◇◆◇◇◇
「お勤めご苦労様。無事で良かった。」
ザバルティ様がそう言って出迎えてくれた!超嬉しいし、超カッコいい!と心で叫んだ。本日2回目。
「お出迎えありがとうございます。」
シェリルがガラにもなく控えめな女を演じてるよ。けっ!
「ステファネス。どうだった?」
「どうって事ないよ。」
すげぇ嫌な事があったよ~。って心では答えてるけど、ザバルティ様を目の前にするとどうしても、そっけなくなる。しょうがないじゃん。アタシは媚びる女は出来ないから!
「そうか?カミコちゃんが何か言っていた気がするんだが?」
「別に問題ないっス。」
ちょっとちょっと。カミコちゃん?もっと言って。アタシの代わりに詳細を説明してやってください。お願いします。
≪説明してあります。≫
「そうか?じゃあ聞き間違いかな?」
「あぁ。」
優しい。マジ優しい。惚れるぜ!アタシみたいな者にも気を使ってくれるなんて。ありがたくて涙が出るぜ。おぉヤバい。本当に出そうだ。見せられん!
アタシはソッポを向く。見られたくないからな。
「それより、ザバルティ様。報告があったと思いますが、戦闘後に回復させたフェンリルがおります。見て頂く事は出来ますか?フェンリルは会話ができますが、何分森出身の者ですから、失礼があってもお赦しください。」
「聞いてる。大丈夫だよ。連れて来て。」
「はい。」
「あっ、いや私の方から行こう。案内してくれないか?」
「あっ。はい!ステファネス!」
「う?うん。」
こうしてアタシが案内する事になった。あっ?良い匂いがする。ザバルティ様の匂いだ。って、駄目アタシ。確りして、この先には目ざとい奴が居るんだから、注意して!
自分に言い聞かせて、馬車の中に入る。
ちなみに馬車はザバルティ様が購入した敷地の中の中心にある小さい山の裏に置いてある。と言ってもまだ敷地内には建物は無いので、馬車の近くでお会いしているので、直ぐの所に居た訳だ。
「ザバルティ様。この先です。暴れる事は無いと思いますが、何分怪我をしているので、注意してください。」
アタシが喋る前にシェリルが注意を促す。ちっ、良い所を全部持って行くつもりの様だ。アタシは一度ザバルティ様を見て頷きの了解を頂いて中に入った。
「フェンリル。暴れるなよ?」
『小娘が。そんな事する訳が無いだろうが?・・・貴方様が?」
アタシに雑な返事をしたフェンリルは急に改まった声をだした。そう、ザバルティ様を視界に入れた途端に変化した。
『申し訳ありません。この右腕の所為で上手く動けませんが・・・。』
そう言いながらフェンリルは無理やり立ち上がり、頭を垂れる。
『神獣フェンリルの末席に居るモノです。この度はお助け頂きありがとうございます。』
「えっ?何、この変わり身?」
『控えろ小娘!このお方はもう既にただの≪神の使徒≫様では無い。もう片足を神の領域に入れていらっしゃる方だ。』
えっと、何故アタシはフェンリルに怒られているのでしょうか?意味わからん?
「フェンリル。大丈夫だ。充分に気持ちは伝わったから、楽な体勢になってくれ。」
『で、ですが。恐れ多いです。』
「いや、本当に大丈夫だから楽にして。」
「しかし・・・。」
「ザバルティ様が良いとおっしゃっているのですよ?」
ミーリア様が一言。
『貴方様は・・・いえ。何でもありません。では横にならせて頂きます。』
フェンリルは体をゆっくりと床につけたのだった。




