２３０ 死んだ後に・・・悪魔虎(デビルタイガー)
大牙黒虎が神獣フェンリルを追いかける。その異常事態に備えるには何をすれば良いのか？
≪どうやら、大牙黒虎の群れのボスは悪魔虎の様です。大悪魔に進化していません。≫
「どういう事？」
≪大牙黒虎は進化する事で悪魔虎になり、さらに進化する事で大悪魔虎になり、それより進化すると魔王虎そしてそれ以上になると大魔王虎になります。≫
「なるほど。」
≪ですが、この群れは悪魔虎がトップの様です。もしかすると本体として後に来るかもしれませんが、手負いのフェンリル一体にはこれで充分との判断かも知れませんね。ですが、そうであれば、チャンスがあります。ランクはＳで止まります。が、倒し損ねたり、仲間を呼ばれると大変ですから最大限の注意をしてください。≫
「わかったわ。皆、凌いで速攻で倒して逃げるわよ。」
「「おぉー！！」」
「でもどこに逃げるの？」
「それは倒してから考える！！」
なるほど、シェリルらしい考えだ。賛成だ。
「了解。」
≪後、１分です。前方から来ます。≫
予告通りより少し前にフェンリルが姿を見せた。何も言わずこちらを見て敵意を表す事無く、アタシ達の横を通り過ぎてアタシ達を盾にする感じで後ろに回り込む様に奥に行く。
「ジャスト！！」
パインとチェリーとベリーが召喚魔法を完成させる。
パインが風の精霊を。チェリーが火の精霊を。ベリーが氷の精霊を。それぞれ呼び出した。
チェリーが火の精霊の力を使って火の防壁を張る。その火の壁をパインの精霊で大きく煽る事で拡大させる。その瞬間に大牙黒虎がするが、目の前の火の壁に驚いた様子を見せる。そこにベリーの氷の精霊の力を借り、１００本の氷剣が飛び掛かる。基本的に多人数の敵を殲滅する時によく使うコンビネーションだ。
「行くよ！」
そして、そのままの状態で、アタシとシェリルがその中に飛び込む。そう、あの程度で死んでくれる敵では無いのだ。気勢を制するだけでしかないだろう事を想定している。ただ、氷剣を攻撃に使っているのはちゃんと理由がある。少しでも刺されば、動きを阻害出来るのだ。刺さった所から凍るからだ。アタシ達二人の後を火の精霊と氷の精霊と風の精霊の三体もついて来る。その後ろにパイン、チェリー、ベリーがいる。
アタシ達の目論見通り、何体かの大牙黒虎は氷により動けなくなっていたが、悪魔虎と思われる個体は何の被害も受けていない様だ。
「嘘だろ？」
≪いや。あれが普通だろう。≫
少し驚きを見せるベリーに氷の精霊は冷静に答える。アタシもそう思う。破格に強さが違うの身をもって感じるからだ。
『小賢しい人間ども。我らの邪魔をするという事がどういう事か分かっているのか？』
「喋ってる？えっ？アイツ？」
無傷で居る個体が話しかけてきている様だ。そうあの悪魔虎が。
≪悪魔虎は知能が高く話せます。デビルの名は伊達ではありません。≫
カミコちゃんが疑問に答えてくれる。
『馬鹿にしているのか？で、我らに敵対するという事なのだな？』
「何を確認しているのよ？獣は獣らしく突っ込んできたら？」
悪魔虎を煽るようにアタシは言ってやった。煽りはアタシの十八番だ。
『小賢しい人間よ。大人しくあの忌々しい狼を素直にここに連れてくれば、見逃してやるモノを。』
「へぇ～。そんなに優しいんだぁ～。それともアタシ達が怖いのかな？」
更に煽ってやる。何故こんなに煽って注意を集めるのか？それには意味がある。
『クックック。力の差が解らんとはな。では潔く死ねば良い！』
遂に攻撃を仕掛けてくる悪魔虎は自慢の爪で攻撃を仕掛けてくる。
素早い動きで気づくと目の前に居る。爪を避けて少し離れる。いや、避け切れなかったようだ。
「うっ！」
爪自体の攻撃では無く爪にまとわりつく様な黒い炎？がアタシの体に届いてしまったみたいだ。
受けた所はブスブスと黒い炎を上げている。
『口ほどにもない。これ位の攻撃が避けれぬとは。』
その言葉を聞いてアタシはニヤリとした。
「アンタこそ、たいした事は無いね。戦闘中に油断するとは。」
『？』
「遅いよ。」
そうだ。これだけ煽ってアタシに集中させて、敢て攻撃を少し受けたのには理由がある。
悪魔虎の頭が体から落ちる。そう、シェリルの剣が悪魔虎その体と頭を離した所から現れる。
「獣は所詮、獣ね。」
シェリルが姿を現す。そう、シェリルの奇襲を成功させるためにしたのだ。
そうして周りを見渡すと、無傷だった大牙黒虎の三体以外は、パイン、チェリー、ベリーと火の精霊と氷の精霊と風の精霊が倒していた。
「じゃ、残りはアタシが。」
アタシはそう言って、自分の剣を確りと持ち、大牙黒虎へ向かって行く。大牙黒虎もやる気十分の様で大きな牙を見せつけるかのように口を開けて攻撃してくる。が、もうその群れの統率は無いので、あっさりとアタシの剣の前に死体となって積み上がる。そして全てを倒し終えた時、不意に声が聞こえた。
「なかなか、やるじゃないか。聖なる者の仲間達よ。」
「いつの間に？」
≪索敵失敗です。瞬間移動です。≫
「良い物を見せて貰ったよ。まさか、悪魔虎がああも簡単にやられるとはね。」
そこには飄々とした感じの男が立っていた。
