228 死んだその後に・・・人探し
アタシの新たな任務は、人探し。
ミスル国というイグナシオ大陸にある小さな国にて、『アリア』という名前のハイエルフを探す事。
一人の女を探すためにアタシ達情報収集部隊と捜索部隊が編制されている。
正直言うと『気に入らない』という一言で片が付く。
だけど、『カーリアン帝国』での要人であり、『カーリアン帝国』が血眼になって探している人物であるので、仕方がないとも思っている。
更に、それを指示したのがザバルティ様であるから、『気に入る・気に入らない』というアタシの私見などどうでも良い。ザバルティ様が求められている事なのだから、喜んで素直に全力で任務に当たる。
では何が気に入らない部分なのか?『カーリアン帝国』の要人でハイエルフ。どう考えてもいい生活をしていたに決まっている。
そんな奴が自信の気まぐれで国を動かして迄捜索されている。つまりお金を使わせてまで探させている。民の税金を無駄遣いさせている。そう思ってしまうからだ。
とは言え、逃げ出したい場所であるのかもしれない。まぁ、前回の事件を見れば、そうなるのが自然な事なのかもしれないが。村の壊滅・村人の全滅。『目的がある』『他国の者である』からと言って同じ人間が全滅させる。壊滅させる。惨たらしい殺し方で殺す。それらが許される訳が無い。なのに平気でする者達を使役している国なのだから、想像するだけでも良い国とは思えないが。
「どうしたの?また考え事?アンタには似合わないわよ?ステファネス。」
「うるさい!ほっとけ。」
そう今回の任務にもシェリルが居る。この情報収集部隊の隊長がシェリルなのだ。ちなみに隊員はアタシを除くと全て元シェリルの部下。今はザバルティ様の仲間になっているから部下では無くなっているようだが、元々部下だから、対応はそのままの様だけどな。
「で、どうすんだよ?」
「簡単よ。しらみつぶしに全てを探すのよ。このミスル国内を。」
「何それ?効率悪くない?」
「効率?そりゃよくないわ。でもね。私達の任務は情報収集。その為には足で稼ぐ。耳で稼ぐ。口で稼ぐ。他には無いわよ。」
そう。シェリルの言う通り、『情報収集』という任務だからそれが普通。だと教えられている。
だからアタシ達は色々な者に変装したりして色々な所に入り込み、ターゲットに気づかれない様に探す。情報を集めると言うのが仕事であり今回の任務だ。で現在は、小さな村にシェリルと冒険者を装い情報を集めている所だった。メンバーはシェリル。アタシ。そしてチェリー・ベリー・パインの5名だ。
もちろん、この村にはその他にも数名居る。情報連絡員として表に出てこない様にしている者が数名いる。
「そんな顔しない。ザバルティ様がビテングの街に拠点を造るって言ってたから、そこでお会い出来るわよ。」
「はぁ?誰に?」
誰ってわかっているけど、とぼけた。
「ふふふ。決まっているでしょう?」
シェリルの顔は、いつもの揶揄う時の顔になってる。ムカつく。
「怒らない怒らない。顔に書いてあるんだから、読んだだけよ?」
すっとボケた答えを言うシェリル。だけど、言っている事は事実だから言い返せない。
「ふん!」
精々取れる態度がこれぐらいしかない。
そんなやり取りをしているタイミングでドアがノックされた。
「入るね?」
このノックの仕方はチェリー達で、問題ない時にするノックの仕方。
「ええ。」
シェリルが返事を返すと、ぞろぞろと入って来る。
「どうだった?」
「とくに凄い情報は無かったよ。」
「そう。」
「だけどね。この国ではエルフがそう沢山居るわけじゃないって、女将さんが言ってたよ。」
「じゃあ、エルフを片っ端から当たっていく方が良いわね。」
「そうだと思う。」
「じゃあ、ここまでの情報を持って、ビテングの街に行きましょう。私達はこのまま行く事にするわ。貴女達も一緒に冒険者パーティーとしてね。カミコちゃん他の者に連絡をお願いできる?ビテングへ集合って。」
≪了解です。≫
そう、連絡手段はカミコちゃんを使う。ただ直接話が出来る様にはなっていない。ザバルティ様がその気になれば出来るようだけど、されていない。もしかすると何名かは出来る人が居るのかも知れないけど、少なくともアタシ達は出来ない。あくまで伝言だ。だけど便利なのは間違いない。ちなみにカミコちゃんはカミコちゃんと呼ばないと対応してくれない。逆にカミコちゃんと言えばほぼどんな事も対応してくれる。ザバルティ様が認めている権能だけという制限はあるけど。
「それじゃ、泊まる所も確保したし、食べて飲んで寝ますか?」
シェリルがオッサン臭い発言をする。
「良いですねぇ~。」
賛同するパイン。
「じゃあ私は風呂に入ってきます。」
風呂優先のベリー。
「今日も飲むんですかぁ~。」
反対そうなチェリー。
「そうよ。飲むわよ。ザバルティ様に会えない時は飲むのが一番!」
とシェリル。まぁ、冒険者と言えば、飲む。そんなイメージがあるのは間違いない。
しかもこの村には地酒がある村でそこそこ有名らしいから、酒好きのシェリルが我慢するハズが無い。
そんな様子を見ていて笑ったが・・・はぁ、早く会いたいなぁ~。




