222 信者の私・・・ビテングの街
昨日の事を除けば、無事にそして順調に目的地ビテングの街に到着した。
今は、屋敷探しの途中だ。現在は宿を探す者達。屋敷を探す者達。そしてギルドに行く者達の三ヵ所に分かれての行動中だ。街の入り口では紹介状と承認証を呈示して、都市国家スパルタからの公的立場を利用している。なので、細かく詮索されない。勿論、軍事行動は避けるようにする事と魔物狩りが目的であると伝えている。まぁその証拠とするために魔物を狩って魔法鞄に入れてある物を全部出す事になっている。この世界にとって魔物は外敵であると同時に大切な物資にもなるから、資源を集めて来てくれた大切な客であり、外敵を排除してくれる友好的な立場であるとアピールする事にもなるのだ。
ビテングの街は魔王国に近い事もあり、領主も武闘派の者だと聞いている。だから、腕に自信のある者が多く集まっている街でもある。
その為、街には闘技場が中心に設置されており、毎日賭け闘技がおこなわれている。その割には、荒れくれ者は少ない。
それは警備に力を入れている街でもあるからだ。武闘派の領主の元に集まる者達も武闘派が集まっているのだろう。しかし、武闘派だけではなく智に長けた者が部下にいるのは間違いがない。優秀な人材が揃っているからこその、街並みなのだろう。そういう事から推測できるのは、この街を治めている領主が優秀な者という事だ。
まぁ、襲撃を繰り返す魔王国の近くに領地を与えられる存在であるのだから、国の中で優秀と見なされた者しか務まらないとは思う。
「ここも、難しいですかね?」
「そうね。この規模ではザバルティ様では手狭かもしれないわね。」
もう五件目の物件だった。
「ねぇ、スレインさん。敷地が大きい屋敷は無いかしら?古くても良いのよ。直して良いのであれば。」
「えっ?そんなんで良いんですか?それなら、あれが良いかな?あの、場所は中心地から離れてしまいますが良いのでしょうか?」
スレインさんと呼ばれた不動産の店員さんはここまで、綺麗で大き目な物件を見せてくれているのだが、幾分小さい感じがする物件ばかりだった。
「大丈夫です。立地より広さが欲しいのよ。」
「わかりました。では、直ぐにご案内します。」
不動産屋のスレインさんに連られて、街中を横断する様に進んで行く。馬車に乗っての移動なので疲れたりはしないがそれでも、精神的な疲れは出る。
「かなり遠いですね?」
「そうですね。先ほどの場所から考えると真逆ですし、中心地からは離れる場所になりますから。」
「そうですか。」
やはり、かなり場所としては中心地より離れるようだ。ある意味不便な場所になるのではないか?
「広い敷地ではあります。そこは間違いありません。ですが、本当に良いのでしょうか?不便になってしまうと思いますが?」
「大丈夫です。」
シーリスさんが即答する。
≪リリアーナ。安心しなさい。≫
そうは言うけど、カミコちゃん。不便な所は不便でしょ?
≪ザバルティ様が造られた地下都市ハイマーの事をもう忘れてしまったのですか?≫
あっ!でも。
≪それに、ラムザ殿が居るのですよ。≫
あっ!
≪さらにゲートがあるのですよ。≫
すいません。それらを合わせたら、全て心配は杞憂であると認識した。そりゃそうだ。世界のシャルマン商会の総帥が居る上にゲートがあり、ザバルティ様が建築される。そこが不便な訳は無いね。
そんなやり取りをカミコちゃんとしていたら、到着した様子です。
「着きました。ここです。でも本当に良いんですか?」
「ここは?」
「はい。乗馬が出来る商業施設でした。ですが立地の問題が大きく。流行らずに倒産しました。で、その名残りの施設があるのと、その敷地が広大な林がくっついていますので、広い敷地となります。」
「なるほど。わかりました。」
「ここでしたら、お安く提供できますが、不便なのは許してください。」
「わかりました。では契約書を用意してください。この場所を買います。」
「あ、ありがとうございます。直ぐに戻って用意します。」
「ええ。お願いします。私どもはここに皆を呼んでも良いですか?私はついて行きますので。」
「ええ。勿論です。」
「リリアーナ。ザバルティ様に報告と仲間を呼び寄せて。宿は要らないわ。他の者にお金を持たせて不動産屋まで来させて。」
「わかりました。」
テキパキとシーリス様は準備をし、ゲート付きの馬車では無い馬車で、不動産屋のスレインさんと一緒に行かれた。
私は指示通りにザバルティ様に報告した。それを受けてミーリア様が他の者にお金を持たせて不動産屋へと向かわせる等の指示を出していった。
「リリアーナ。ご苦労だった。先ずは一つ達成だな。」
「はい。ですが、これからが本番ですし、拠点の構築はいかがしますか?かなり敷地は広いですが、何も無いような場所ですが。」
「あぁ、そうみたいだね。カミコちゃんから情報は貰っている。後程そっちへ行って現地調査をするよ。あぁ、その前にゲートを設置しないとね。」
ワクワクした顔をしているザバルティ様は、またトンデモナイ事をしてしまいそうだ。と私は思った。




