220 信者の私・・・同志
驚かされっぱなしの私達は検問所に着くころには、氷が解けた。
「ご苦労様です!話はラムザ様から聞いております。どうぞお通りください。後、私が迷宮を出るまでご案内させて頂きます。」
検問所で待っていてくれたのはラムザ様の部下でキャリーさんだ。ラムザ様の側近という事らしい。偉い人がまた出てきたと思って緊張していたら、『神の使徒の仲間』である私達の方が、偉いと言われた。お互い相手が偉いと言い合って笑ってしまった。
「あははは。」
「ふふふふ。」
「では、対等という事で。」
「そうですね。対等という事で決着しましょう。」
キャリーは迷宮を案内する間、色々と私に話してくれた。
自身の生い立ちからラムザ様の元に至るまで、それからの事。互いに思う相手は違えども同じような思いを抱く同志である事を確認した。仕える主が違えども思いは同じ。良いものだな。と思う。そういう意味での友得たと言えるのではないかと思う。
「でも、ラムザ様もすごいと思っていたけど、ザバルティ様はもう別格よね。やる事のスケールが半端ないわ。」
「いやいやいや、ラムザ様も凄いじゃない。今や、世界の『シャルマン商会』の商会長であり、世界のクラウン『シャルマン』の代表で、『シャルマンの総帥』なんだから。」
「「ふぅー。」」
同タイミングでのため息に二人して笑った。
「全く、思い人が凄すぎるって大変よね。」
「本当にそう。ちょっと頑張ったぐらいじゃあね?」
「「はぁ~。」」
重なる二人のため息にまた笑ってしまった。
「それにしても、この迷宮って何なの?」
「これはこの道からの侵入を防ぐのが目的なのよ。」
「そうなの?」
「そう。だから、普通にこの迷宮を抜けようとすると、最終階層でエンシャントドラゴンと戦う事になるわ。」
「えっ?」
「やばいでしょ?これもザバルティ様の力よ。ドラゴンを従えてしまったのよ。しかも、一人でね。」
「うっそぉー!」
どんだけよ。そのエンシャントドラゴンを従える方と戦おうとしていた自分がとても恥ずかしい。というか、優しい人で良かった。ある意味でジラベルト隊長は運が無かったのかもしれないな。
「どうしたの?顔色悪くなってるけど?」
「だって。」
そこからは、私の番だった。生い立ちから、ザバルティ様の仲間になるまで、そして仲間になってからの話をした。
「そう。そんな事があったのね。運が良かったのか?それとも運命だったのか?」
「どっちだと思う?」
「どうだろ。でも私は運命だったと思いたいかな?」
「なんで?」
「そのおかげで、今こうしていられるから。同志になれたから。」
私はその言葉で、同じように思ってくれているのだと認識できた。キャリーさんも私が思っているように同志と認識してくれている。その事が嬉しかった。
「同志?嫌だった?」
「ううん。嬉しい。男ばかりが同志じゃない。女にだって同志と呼べる存在が出来てもいいよね?」
「そうよ。私達は主は違えども同志よ。」
「そうね。」
私はキャリーさんと、いやキャリーと固い握手を交わした。
「あの。あの先にある魔方陣は?」
「あぁ、ごめんなさい。あれが目的地よ。」
同志キャリーとの一時の別れが来たという事だ。私達は、魔方陣がある目的地まで無事に到達できたという事だ。
「私はここまで。ここから先は、森にある小屋の近くに出るはずよ。」
「キャリーありがとう。」
「いえ、こちらこそ、楽しかったわ。必ずまた会いましょう。その時は朝まで飲みあかしましょ。」
「ええ。楽しみにしてるわ。」
私達は別れを済ませて魔方陣へと足を踏み入れた。正確には馬車に乗ったままだが。
総勢250名にのぼる私の隊は無事に迷宮を抜け、魔方陣に入り、小屋の近くへと到達した。
「ここからは、カミコちゃんの指示に従うわよ。」
≪かしこまりました。≫
私達はカミコちゃんのナビゲートに従い森の中を目的地へ続く街道へと向かった。カミコちゃんにお願いして近くにいる魔物を狩りながらの行軍にした。少しでも狩りをしておけば、傭兵集団として見られるだろう。
「やばいですね。凄く魔物の動きが遅く感じるし。ザバルティ様から頂いた武器の斬れ味もスパスパ斬れて怖いぐらいですね。」
「そうね。本当にそう。あのキツイ訓練を耐えてこなしてきたからこそだと思うわ。」
「そうですね。本当にきつかったですもんね。あっ、思い出しただけで気分が悪くなってきた・・・。」
「大丈夫?」
そう聞きながら、私も少し思い出して気持ちが悪くなりそうだ。
「隊長。かなりの魔物を退治したんですが、渡された魔法カバン(マジックバック)に全て入ってしまったんですけど。これって・・・。」
「考えるのをやめなさい。一キロ四方の容量は余裕であると聞いているわ。」
「マジですか?」
「マジよ。」
実はそれも10歳の頃のザバルティ様が遊びで作った物らしい。だから、カバンが子供のリュックの様な感じなのだ。でも、それをあえて所望した理由は言うまでもない事だろう。
私達の常識って何だったのか?今はよくそれを思う。




