219 信者の私・・・地下都市ハイマー
現在、この地下都市ハイマ―は噂の域を出ない街である。理由は簡単で、都市国家スパルタの防衛上の拠点になりえる場所だからだ。では、どうやって人を増やしているのか?という点だが、あちらこちらからシャルマン商会経由で、奴隷を買ったり、難民に紹介したりしている。ある意味で世界的弱者を集めていると言える。この世界においてはどこにでも戦争が有る為に弱者は切り捨てられているのが現状だ。勿論と言っていいのかわからないが、孤児院も多数用意されていて、さらに教育が受けれるようにと、学校まであったりする。
さらに、税金は今の所基本的に無し。ただ商売をしている者からは収入の何パーセントかを支払う形で商売を認めるという形をとっているようだ。ただし、この街に入るためには誓約書にサインをする必要が有り、しない限りは街に入る事が出来ない規則が有る。この誓約書の内容はこの街の事を話さない事と出入りに対する規則を守る事が書かれているようで、その内容にそぐわない行動をした者は即座にギアスがかかり、話せなくなったりするようだ。つまり、防衛と世界的弱者の救済を重要事項としている為に繁栄を後回しにしているそうだ。それが現在の地下都市ハイマ―の置かれている状況だ。
都市国家スパルタはエンデ魔王国から独立したばかりの国なので、国外に対する状況は決して油断はしていない。世界に認めてもらう為に、シャルマン商会を最大限利用し、国として認める事と友好国としての繋がりを多数持つことに成功している。また、ザバルティ様の縁が深いアスワン王国・フリーア王国・ジェスター王国の三国も友好国として使節団を派遣し、在中員を置く事を検討しているとの噂が有るほどだ。実際に、その話は現実であり準備が進んでいる様だ。
「リリアーナ隊の皆にはあの向こうに見える道を通ってエンデ魔王国の西にあるミスル国に向かって欲しいとの事だ。この道を行って先にある迷宮から出れる場所がミスル国の森にある小屋に繋がっているんだ。そこから、近くの街に向かう事が最初の指示だな。近くの街はビテングという名前だ。先ずはそこに拠点を作ってくれ。斥候に出ているシェリル隊とはそこで落ち合ってくれ。彼女達はこの上の都市国家スパルタから出発しているから、先に着いているとは思うが、隠密行動であるから表立っての接触は無いと思って良い。ビテングの街に着いたら、屋敷の購入を考えてくれ。その屋敷を拠点とするつもりがあるから、それなりの大きさを考える様に。屋敷の購入の時にはシーリスが同行する事になると思うから、街に着いたら、馬車からゲートを利用してミーリアに報告してくれ。」
「わかりました。」
ビテングの街がミスル国での第一拠点になる。ミスル国は小国なので、それほど捜索に時間が掛るとは思えない。ただし、小国とは言え、代々の魔王国からの襲撃を撃退してきた国であるので、警戒網は馬鹿にならないのでは無いか?と考えられる。だから注意が必要だ。小屋を出てそのまま西に進むと直ぐに街へ繋がる道がある。その道を利用してビテングへ向かう。ナビゲートはカミコちゃん頼る形になるが、基本的に地図を頭に入れているので、迷う事は無いだろう。
「リリアーナ隊長。準備出来ました。」
「了解。では、ロバートさん出発します。」
「あぁ、大丈夫だとは思うが、魔物などにやられる事がない様に、確りな。」
「はい。」
こうして私達は地下都市ハイマーのザバルティ様の屋敷を出発した。
この地下都市は非常に大きいサイズの地下空間全体を都市として機能させている。ちなみに私達が向かう場所への道の先にも検問は存在する。その検問場所に行くまでの道は舗装されており、石畳が敷かれているので、馬車は動きやすい。石とは言え平らでどうやって加工しているのかが気になる仕様だ。
また、その舗装された道に並行して水路がひかれている。綺麗な水が流れている。そして、街の中心から検問所迄はかなりの距離がある為に、ポイントポイントで、休憩が出来る仕様になっている。そこでは水が飲めたり出来るような設備が整えられている。水道?蛇口?とか言う設備だ。ザバルティ様の屋敷に設置されていた流しと呼ばれる設備に近い仕様だ。
「本当に凄い街ですね。これを国が造るとなると一体いくらのお金がかかってしまうのでしょうか?」
「そうね。国が買えるんじゃないかしら?それも大国が。」
「そ、そうかもしれないですね。」
私達には想像もできない額になるに決まっている。この道路と呼んでいる街道にしたって、半端ない。その道路の両脇にある水路も半端ない。所々で蓋がされていて渡れるようになってるし、休憩所だって、その辺の街の貴族の屋敷にある設備より良いんじゃないだろうか?
「それにしても、道が良いからってこの馬車、揺れないですよね?揺れなさすぎじゃないですか?」
「お二方とも初めてですか?この馬車にはタイヤという物とサスペンションという設備が搭載されていて揺れない馬車になっているんですよ?」
「「はぁ?」」
御者の一言で私達は固まった。それはもう氷魔法にでもかかったように。




