211 初めての洞窟探検・・・ここは何処?貴方はだあれ?
あれ?ここはどこだ?
僕は真っ白な空間にいる。僕は横たわっているようだ。心の中では焦っているつもりなのだけど、身体はゆっくりと起こされる感じで上半身を起こした。僕の視界は天井では無く、座った視線の先になる。
「やぁ。初めましてだね。」
優しい言葉と優しそうな笑顔で、声をかけてきた男の人が視線の先に居る。不思議と警戒心が起こらない。普通ならビビりまくりの状況だと思う。
「あの。ここは何処で、貴方は誰ですか?」
少し困った顔になった男の人は優しそうな笑みを湛えて教えてくれた。
「君は面白い子だね。丁寧で失礼な質問をするなんて。」
「すいません。」
「大丈夫。怒ってるわけじゃないから。そうだね。ちゃんと質問に答えようか。」
「お願いします。」
「良いよ。先ずはこの空間の事だね。ここは精神世界という感じだね。何故ここに居るのか?それは私が呼んだからだね。まぁ気絶してくれないとここに呼ぶ事は出来なかったと思うけどね。
はぁ?といつもならなりそうなタイミングだけど、そういう感じにならない。不思議だな。
「そうだろ?不思議だろ?」
あれ、心を読まれてる?
「ごめんごめん。君の顔にそう書いてあったから勝手にそう思っただけだよ。」
「そうですか?僕は顔に出やすいのかな?」
「いいや。この世界が精神世界だからだよ。」
なるほど。精神だから心そのままなんだな。あっ?
「本当に色々と考える子なんだね?顔が100面相しているよ。」
やっぱり。
「でも、何で僕をここへ呼んだんですか?」
「うん。それなんだけど。君はこの世界の住人では無いね?別世界から来たね?」
おぉ?それの所為でここに来たと?しかもそれが判る?
「わかるよ。私はこれでもこの世界の歴史を眺めてきたからね。」
「眺める?」
「そう、眺める。私はこの洞窟の主なんだ。核と言ってもいい。」
主?核?何それ?
「ふふふ。やっぱりわからないよね?」
「違うんです。一応意味は解ってます。けど、何故僕が呼ばれる事になったのかが結びつきません。」
「そうかもしれないね。この世界は君の様に別の世界から来る存在は珍しくないからね。だから、僕の気まぐれだね。」
「気まぐれ?!」
「そう気まぐれだ。だが、その気まぐれにも理由がある。ねぇ、桜花君?」
ふと、呼ばれた名前を聞いて左手を触るとそこにあったハズの刀が無い。
「ご無沙汰しております。ダモクレス様。」
「うん。元気にしている様だね?しかも、ようやく宿願である使い手を見つける事が出来たようだね?」
「はい。」
桜花と呼ばれた人は僕の横に立っていた。何故気づかなかったのだろうか?
「あれ?主殿はビックリしているようだ。」
「そのようです。煉様。私は村正・桜花です。ビックリさせるつもりは無いのですが、ここは精神世界なので、この様な格好になってしまいます。」
戦国時代の女武将といういで立ちで、凛とした顔と立ち姿。僕の父親が好きだと言っていた芸能人のあれ、えっと、広末〇子さんに似た感じを受ける。透明感があって、色が白くて、甲冑が良く似合っている。凄く綺麗な日本女性って感じ。
「どうなされました?私の顔がおかしいですか?何かついてますか?」
見過ぎていたのかもしれない。桜花がアタフタしだした。
「ごめん。そうじゃない。綺麗だなっと思って。それに甲冑姿が良く似合っている。」
「えっと、そうですか。それは良かったです。はい。」
変な感じの返答が返ってきたが、アタフタは消えてない。そんな様子を傍から見ていたダモクレスは、声を出して笑っていた。
「やっぱり、面白い。君は最高だ!」
「ダモクレス様。そんなに笑わないでください。」
桜花はダモクレスに怒って、諫める。それを受けてお腹を押さえながら、必死に笑いを堪えようとするダモクレス。なんだこれ?
「ごめんごめん。本当にごめん。でも面白く・・・ぷっ。」
思い出し笑いでもしているのか言葉が続かないダモクレス。そんなにツボッタのか?徐々にシラケてくる僕はただ、見ていた。ようやく、落ち着いたのかダモクレスは話を続ける気になったようだ。
「まぁ、お察しの通り、桜花君とは昔から知っている知り合いなんだ。かの女帝リン・M・ジャポネスが彼女を利用していた頃に知り合ったという訳だ。まぁ詳細は省くよ。私はこの洞窟の主であり、核でもあり、『聖剣』とよばれる剣でもあるのだよ。彼女が以前仕えていた主と共に世界を統一した者が使っていた剣って事になる。それが、私だ。」
『聖剣』かぁ。ファンタジーの醍醐味だね。
「で、その聖剣様はただの気まぐれで呼んだんだろ?何がしたいのさ?」
僕に聞かれた『聖剣ダモクレス』はちらっと桜花を見てから、僕に語った。
「君は恋人が、追われている者なのは薄々気づいているね?」
「まぁ。」
「その恋人の追っ手がもう直ぐここに到達する見込みだ。」
「えっ?」
「それに気づいた桜花は、君がこの洞窟に入って直ぐに私に伝えてきた。君に伝えて欲しいと。」
「でも、それなら桜花が直接、僕に語り掛ければ良いだけなんじゃ?」
「君は姿がわからない者の忠告に耳を傾ける事が出来るかな?」
「いや。それは。」
「そういう事だ。だからこの場を設けさせてもらった。」
落ち着きはらった『聖剣ダモクレス』の言葉に頭が支配された。
恋人に対する追っ手の接近。危険が迫っている事。僕はどうすれば良いのか?




