21 元王都
プロスペクター邸で歓迎パーティーを終えて、翌日にはパールの街を出た。
何か寂しい感じを受ける街並みを横目に私達は昨夜の出来事の話をしたり、今後の事をどうするか等の話をした。また、私達が仲間内で馬車を引いている事を知ったカンガリ伯爵から御者を紹介された。どうやら伯爵が私を気に入ってくれたらしい。断ったのだが、勉強の時間を取れるならその方が良いとトーマスに言われ、受る事にした。それほどまでにアリソンの修学率が上がっていないという問題もある。こんな事なら、出発前に雇っておけば良かったなと思ったが、もう遅い。カンガリ伯爵の好意に甘えさせてもらった。プロスペクター家の専属御者の一人でブラウンという名前の者だ。王都のマカロッサ家の屋敷まで付き添ってくれる事になった。で現在はロバートと二人で話込んでいる。アリソンはトーマス先生に勉強を見てもらってる最中だ。
「今後の事を考えるとやはり御者を専属で雇う方が良いのかな?」
「そうかもしれませんが、馬車が襲われてしまって馬車を守る事が出来る者でないと意味がありませんし、守ると考えると1人では厳しいのではないでしょうか?」
「そう考えると、最低2人で3人居れば何とかなるってレベルか?」
「そうすれば、危険な旅であっても問題は無いかと思います。B級冒険者レベルの力が欲しいですね。」
「普通と違う事をしようとすると普通とは違う問題が出るな。どうするべきか?」
「順当に考えるなら奴隷が良いかも知れません。」
「そうだな。奴隷かぁ~。」
奴隷は地球にもあった過去があったらしいが、日本人から考えると忌避感があるからな。しかし、≪郷に入れば郷に従え≫って言葉があるのも事実だし、扱いを酷くしなければ良いだけか?
そん事を考えていたら、御者のブラウンさんが声をかけてきた。
「ザバルティ様、次の宿泊予定地の王領内のヌレイの街です。ここまでくれば後は王都までテーストは後1日位です。」
「わかった。では、皆準備して街に行こう。」
「「「了解です(~)。」」」
今回は領地を持たない王家の直轄地で代官がいる街だ。代官にまで手を取られるのは癪なので今回は街の中の宿屋に泊まる予定となっている。ただ、王都も近い為、警備は厳重になっていると思われるから、街に入るまでの門はシッカリしているので、入場許可を得なければならず、顔と身分証明をしなければならない。今回は冒険者ギルドにて発行されているギルド証を利用する。
「入場については1人につき銀貨一枚だ。」
5人分の入場料を払い街に入った。ヌレイの街並みは現代でいう所のイタリアの街並みに近い特にフィレンツェの街のようだ。街の中心に大きな川のダンヒ河が流れている。その両側に街があり外へと広がった形だ。
歴史を感じさせる街並みだ。川が中心となっているのだが、確りと川も柵がしてあり、外敵やモンスターの侵入を防ぐ事が出来るようになっているみたいだ。アスワン王国の王都であった歴史ある街だ。
本日泊まる宿は高級宿である。これもまた、カンガリ・プロスペクター伯爵の勧めに従った為だ。
何と、川の上に建つ歴史ある高級宿で、王族も宿泊なさるという人気の宿である。実は、王都が遷都された背景にこのヌレイの街が火山に近い為に危険であるという学術的見解も後押ししたらしい。とはいえ、現在トニービ火山は活動していないようだ。建国以来は一度あったとの記録がある程度になっている。
「ここは温泉っていうのがあるんだよね~。」
「そうだ。私はとても楽しみにしている。」
「温泉って何ですか?」
「温かいお湯が沸いている所があってその湯を浴びたり浸かる事の出来る施設だ。」
「お風呂と違うんですか~?」
「違う。天然のお湯だ。体にも色々良いとされている。美肌効果とか。」
「えっ?美肌?それは楽しみですぅ~。」
アリソンも興味がわいたらしいが、私は前世より温泉が好物だ。とても楽しみにしている一つだ。
その後、直ぐに宿についた。温泉宿サドラーは如何にも温泉があるっていう感じではなかった。
外観は王宮だった。王宮を改修する形で造られていたのだ。元王都であるから出来る事。ちなみに宿泊費用は今回出さないのでわからない。カンガリ伯爵様が褒美として出してくれる事になっており、宿には通達されているのだ。
「ザバルティ様。これは凄いですね。」
「圧倒されます。」
「やったぁ~。超がつく高級宿じゃない~。」
「うん。これは圧倒されるね。」
私の前世でも、今世でも未経験だ。元王宮の宿屋はそれはもう圧倒的な豪華さを演出している。
現代人がみても絶対圧倒されると思う。そんな宿に今日は泊まれるのだ。幸せだ。これは温泉も期待できるのでは?と期待値がとても膨らんだ。




