206 始まった冒険者としての日々。
冒険者を始めてからは、Fランクの冒険者依頼を毎日こなす日々が始まった。
正直ツライ。だってさ、どぶ掃除や飼い猫捜索や、お店の手伝いとかばっかなんだよ?とは言え、午前中はFランク依頼をして、昼からは薬草採取等の常駐依頼の採取系を行う。実は採取とかはアリアさんに教えてもらっている僕にはそんなに難しい事じゃない。だから、その採取系の依頼の途中で狩りや、武術訓練をおこなう。そんな感じ。
「魔法が覚えたい。」
「残念ながら、煉君にはその素養が無いみたい。」
こういう会話を以前にしたから、魔法については知識だけ与えられるという感じで、対抗処置を学ぶという物になっている。だからなのか、少しずつ、MPが増えて行っている。
「残念ながら、魔法が使える様になるのは相当レベルが上がらないと無理かな?」
と言われている。レベルが1上がっても1増えるか増えないか?そんな感じ。世の中厳しいです!!
で、冒険者ランクがEになる頃にはかなり薬草の知識はついた模様。判別できるようになった。ちなみにスキル『薬学』が付与されてました。その反面、武に関してはどうにも素質が低かったのか、スキルのお陰で動ける程度です。情けない。はぁ~。
「煉、今日も元気だね~。」
「今日もラブラブね~。」
なんて、声をかけられるようになった。色々と街の中のミッションをこなしてきたから、顔と名前が少し売れた。やっぱり、飼い猫の捜索とドブ掃除が効いたかな?
一番厄介だったのは、なくなった形見を探すという案件だ。結論的に見つかったのだけど、酔っ払って無くした物だったから、目星がつかず、街中をあっちこっち回ったよ。手がかりは、無くなった形見だけ。形見は指輪で、そこそこの価値のある物だったけど、それよりも形見という事が問題で、それこそドブの底を攫ったり、街中の酒場を一軒一軒回って店中を探し回ったよ。結果、依頼主の家のソファアのクッションの隙間に会った時は安堵もしたけど、イラッときた。因みに依頼の時間は僕一人で動いてた。アリアさんには低すぎる依頼ばかりだからだ。
「一緒にやるわよ?」
「いや、初級は僕一人で大丈夫です。」
なんて、カッコつけたせいで、魔法の力を借りる事が出来ずに大変だった所があるのは否めない。
で、僕が一人で動いている時間を使ってアリアさんは調べ物をしていたようだ。何を調べているのか聞いた。
「う~ん。わかったらね~。」
と答えられて終わった。まぁ焦って聞く必要も無い訳だから、追求する事はしなかった。
その内教えてくれるだろう。
ちなみに、男女の関係は・・・進んでない。う~ん。キスは出来るし、手を繋いだり出来るんだけど、それ以上はちょっと・・・ヘタレな神崎煉です!
でもまぁ、焦る必要ないよね?時間は沢山あるのだから!
えっ?そんなに余裕こいて大丈夫かって?大丈夫!大丈夫だよ?大丈夫だよね?
「何?どうかした?」
「イヤ、考え事をしてただけ。」
「真剣な顔して私を見てくるからどうしたのかな?って思ったよ?」
「ごめん。あはははは。」
どうやら、考えていたら、アリアさんに向かって真剣に心で質問をしていたようで、不審がられてしまった。あはははは。
「まぁいいわ。それより煉君昇格おめでとう。」
「ありがとう。」
「これで煉君もEランク冒険者になったから、次のステップとして一度洞窟に挑戦してみましょう。」
「本当?」
「本当よ。で、今回は2人では心もとないから、ブライトさんとブライトさんの旧友の二人を入れて5人で行く事にしましょう。ブライトさんには前からお願いしていたから連絡をしてくれてるはずよ。」
「おぉ、凄い!」
「あとは日程調整して、行くだけね。」
「よし、頑張るぞ!」
「う~ん。そんなに張り切らなくても良いかなぁ~?」
「えっ?なんで?」
「それは、メンバーに会ってみたらわかるとおもうけど・・・。」
どういう事だろうか?気になる。
「思うけど?」
「まぁ、当日までのお楽しみという事で。」
という感じではぐらかされた。まぁ深く考えてもこれ以上は何も教えてくれる様子がないから、無理だな。
「で、当日までは武術訓練をもう少しやりましょう。朝から晩まで、ね?」
可愛い笑顔で言われたけど、何故かソワソワする。可愛い顔で言われたからじゃないよね?多分。
「ハードな訓練になると思うから、覚悟してね?」
「えっ?」
やっぱ、そうなるらしい。僕についていけるのだろうか?不安だ。
「大丈夫よ。レベルも何故か想定より上がっているし、ね?」
笑顔なんだけど、やはりドキドキする。これは恋のドキドキじゃないと思う。
「はははは。頑張ります!」
「笑わない!」
「はい!頑張ります!!」
「よし!」
あれ?キャラ変わってない?アリアさんがピリッととした顔で、昔見たビ〇ー隊長のような感じになってる?鬼軍曹?いやいやいや。
「明日から、私の事をアリア軍曹と呼びなさい!」
「えっ?え~。」
「冗談よ。冗談。」
とアリアさんは言っているのだが、何故か、眼がギラギラしていた事は伝えておきたい。




