194 我らビラッキオ隊 その6
「ビラッキオ隊長。どうするんですか?」
勢い込むリリアーナ。を見て俺は更に考え込んでしまう。あのリリアーナがこの狼狽ぶりだ。
何か無いんですか?リリアーナ様。」
「イインデン。アレは、いえあのお方は私達が何人かかってもどうにか出来るような存在ではありません。それに、どんな詭弁を弄してもあの方を欺けることは出来ません。私達に選べるのは、許された事だけです。許された事は、この国に迷惑をかけないで国外に出る事。もしくは国に帰る事。それか、あのお方の仲間になる事。それ以外にありません。」
イインデンは黙るしかないな。リリアーナの剣幕は凄いからな。なんて様子を見ている訳にもイカンな。だが、どうすれば良い?リリアーナがあんな感じなのに、俺が考える事なんてたかが知れてるからな。
「で、リリアーナはどう考える?」
「とにかく穏便に済ませる以外はあり得ないでしょう。」
「で、どうしたい?」
「祖国に戻っても良い事はないといます。このまま傭兵を続ける為にも遠くへ行くか、仲間にしてもらう以外ありえないでしょう?」
「そんな!逃げるんですかい?!国を裏切って迄?」
イインデンが叫んだが、リリアーナは一瞥しただけ。まぁ、イインデンはあの場に居なかったから仕方が無いから少し可哀そうではある。
「裏切る?ではイインデンは戻りたいのか?」
「いえ、そうでは無いですが、そんなに強い相手何ですかい?」
まぁ、そうなるだろうな。
「埒があかん。とりあえず、全員をここに集めろ。先ずはそれからだ。俺たちは今回の作戦に不参加とする。」
こう命令しておかなければ、暴走して問題を起こす様な事になれば、全滅は免れないだろう。
「リリアーナ。ところで、ジルベルト隊の行方はわからんのか?」
「全滅。もしくは無力化されている物と思われます。捜索隊は出しても大丈夫ですか?」
「かまわん。責任は俺がとる出せ。」
迂闊なまねをして逆鱗に触れてしまう事になるのは問題だが、確かめる位は問題とされないだろう。
「ビラッキオ隊長。二人で相談したい事があるのですが?」
「わかった。少し時間を取ろう。」
リリアーナから急な申し出だが、こんな事態だというのにどうしたのだろうか?
「聞こえたな?皆一度下がれ。」
「「はっ!」」
リリアーナ以外は敬礼をして出て行く。そう様子を黙って見ていたリリアーナが真剣な顔を俺に向けてきた。
「どうした?そんなに真剣な顔をして?」
「隊長。私は思い出した事があるのですが、この様な話の昔話?逸話を聞いた事がないですか?」
「というと?」
「村を壊滅させた魔物を全滅させた天使の話です。その物語に出てくるのは女性ですが、あまりにも酷似しています。人外の能力に、洗礼した立ち振る舞い。そして何より・・・。」
「何より?」
一泊置いたリリアーナに聞き返す俺。
「敵でさえ、仲間へと引き入れる魅力です。」
確かに俺も小さい時に聞いた話だ。
「まさか?」
「そう、そのまさかです。もしかすると、この世界の覇者となるその人物ではと思ってしまうのです。」
「いや。まさかそんな事はないだろう?」
俺が記憶にある話は昔話だ。
◇◇◇◆◇◇◇
ある所に、壮麗な若き乙女が居た。
彼女は色が白く華奢な体躯をしているのだが、儚くはなく逆に生命力に満ちていた。
その乙女がある時、旅の途中で寄った村の近くで魔物を退治した事から村中から感謝され歓迎された。
そして旅の目的は別にある事から、村を離れる事になったのだが、その村は悪魔の軍団により全滅させられた。死滅とも言える壮絶な経験を村の者は全て等しくしてしまった。その知らせを受け取った若き乙女は激怒する。『小さき子供にまで手を出すとは許せない!』その正義の心を持って若き乙女は一人で悪魔の軍団に仕掛ける。はじめ、悪魔の軍団は油断していた。『ただの人間の女如きにに何が出来るものか?』しかしその考えは粉々に砕ける事になる。その若き乙女は人を越えた力を使い悪魔の軍団を滅ぼす。その滅ぼされた悪魔の中の数人はその若き乙女に忠誠を誓い仕える事になる。その悪魔の数人は子供を殺す事に反対した者達だった。その後、若き乙女は種族を越えた仲間が集い、世界を統一した。
◇◇◇◆◇◇◇
「まさか、リリアーナはあの男があの伝説の、歴史にただ一人の、リン・M・ジャポネス第一皇帝の伝説に似ているとでも言うのか?」
「その通りです。色々と違う事があるのはわかっています。ですが、初めて会った時に、あのお方の人外の力を感じました。それに、同じ国の潜入攪乱部隊とわかっていた上で、私達に『仲間にならないか?』と言っていました。それらは類似していませんか?」
「確かにそう捉える事は出来るが・・・。」
「確かに、その話を知っていてその様な行動をとっている可能性だってあります。しかし、あの圧倒的な存在感と力を見させられたわけでは無く、感じさせられた。そう理解させられたという事が私は一番似ていると思うのです。」
少なくともリリアーナはそう感じたという事だろう。
理解させられた。感じさせられた相手を敵として迎える事になるとは・・・。




