192 死んだ後に。 その11
森の中。生き物たちの音が響き渡る。その中を息を殺してアタシは進む。
少し前のアタシには出来なかった事の一つ。そしてもう一つ出来なかった木から木へ飛び渡る事。
「人間はやる気になれば何でも出来る様になるもんだねぇ~。」
独り言を言いながら、今回の目的のビラッキオ隊を探す。探すと言ってもだいたいの位置は把握済み。なんせザバルティ様が居るからね。おおよその予測を事前に聞いているから、そこまで困る事は無い。
『ステファネス。止まりなさい。』
おっと、これはカミコちゃん。そう今は臨戦態勢だから、カミコちゃんはザバルティ様の私設兵団の全ての把握と助言をしてくれる。管理されてるとも言えるかな?
『管理はしておりません。あくまでも補助に過ぎません。』
へい。すみません。言い過ぎました。
『謝罪を受け入れます。』
で、どうしたんですか?敵はまだ先に居ると思うんですが?
『その通りです。ですが貴女より東1キロ先にロバートさんが中継点を築いてます。そちらに向かってください。』
へーい。了解です。
アタシは素直にその指示に従って東に進んで合流する事にした。
◇◇◇◆◇◇◇
「お疲れ~。」
「おぉ、ステファネスか。お疲れ。」
こいつはロバート。ザバルティ様の地元の友であり従者だ。生粋のけらいっつう事になる。従者としてはロバートの方がアタシより上。年齢は・・・アタシの方が上。だから、タメ語で話す事になった。ロバートがタメ語が良いって言うからだけどな。
『私の記憶ではそのような事実はありません。』
まだ聞いていたのかぁ~い!
「どうした?変な顔して?」
「何でもない。」
?マークを頭に浮かべた顔のロバート。つい冷たく返してしまった。
「まぁ、良いけど。お前はどっちに行く?」
「何?どっちって?」
「あぁ、本体の方と別動隊の事だよ。」
あぁ、その事か。
「で、アンタは?」
「どっちでも良い。もう直ぐトーマスがここに戻ってくると思うからそれまでに決めてくれ。お前が行く逆を俺が行くから。」
あぁ、なるほどね。カミコちゃんはその為にここに来るようにと指示したんだな。
「わかった。アンタが出るなら、アタシは別動隊の方に行くよ。」
こう見えてロバートは凄い奴なんだ。流石ザバルティ様の従者だと思う。武に関してはユカさんに切迫する強さだし、その上で偵察などはシェリルに切迫する能力の持ち主だ。一番にはなれていないけど、全て2番手。ザバルティ様の私設兵団はおよそ2000人かな?そのなかで色んなカテゴリーで2番になるんだから、オールマイティだよ。ただ、知力に関する物は弱いらしい。それでも平均位のようだから隠れた強者だとアタシは思っている。
「そうか。わかった。」
それからアタシはロバートから今現在の敵の状況や分かっている事を聞いた。雑談を交えながら。
「で、お前が養っているあの子達は元気にやってんのか?」
「元気だよ。つうか、そもそもそんなに前の話じゃねぇだろ?」
「確かにそうだな。あはははは!」
大笑いの意味がわかんねぇ。やっぱり相当バカなんじゃね?
「そんな顔をしてやるな。少し愉快な男なだけさ。」
築くとトーマスが戻ってきた。
「おっトーマス。お疲れ!」
「お疲れ。」
この男もザバルティ様の地元の友であり従者だ。この男は頭が良い。基本的にザバルティ様の参謀的立場だ。元々貴族の三男とか言ってたかな?貴族社会にも詳しく、色々知っている。ザバルティ様を除けば一番頭が良いんじゃないかな?ザバルティ様の信任も厚く、よく全体の指揮を任されている。何せ、ザバルティ様はアグレッシブだからな。
「ステファネスも参加してくれるのか?」
「そう。やるよ。」
「それは助かる。なら俺はここで待機しておこう。」
『もう少ししたらシェリルが来ますので、こちらに呼びます。トーマスさんはザバルティ様の所へお戻りください。』
カミコちゃんはアタシ達三人にそう伝えた。
◇◇◇◆◇◇◇
「待たせたね。」
「待ってねぇ~よ。」
「そういうなよ。」
シェリルがほどなくしてやって来た。トーマスはカミコちゃんの言う通りにザバルティ様の所へ戻って行った。ロバートは先に行くと言って出て行った。
「で、どうだった?」
「何が?」
「決まってるだろ?ザバルティ様のぬくもりは?」
「はぁ?!」
やっぱり、見ていたんだなコイツ。躓いたのはコイツの仕業なんじゃないか?
「やっぱりいい匂いがした?キュンとなった?」
「はぁ?何盛ってんだよ?」
「いいじゃん。良い思いしたんだから、それ位共有しようよ?」
悪友とはこう言う奴の事を言うじゃない?絶対そうだよ?あれは間違いなくコイツの仕業だよ?
「あれは、やっぱり作為的にアンタが仕掛けた事じゃないか?」
「ひゅひゅひゅ。何の事?」
絶対そうだ!
「お前だな?あの後大変だったんだからな?わかってんのか?」
「えっ?何が大変だったの?」
「ミーリアさんに睨まれた。あのまま戻っちゃったから・・・。」
「あぁ。タイミング悪いね。で、いい匂いした?」
「ああ。いい匂いした・・・じゃねぇ!反省しろこの野郎!!」
アタシは鉄拳をかました。・・・が、やはり避けられてしまった。こういう時位はまともに受けてくれよ!!




