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19 真珠(パール)



私達「ザバルティ一行」は王都テーストへ向けて馬車を走らせている。御者は男三人が順番にする事に出発前から決めていた。現在はロバートが担当中だ。私は先ほどの休憩迄運転していたので、今は少し寝ようかと考えていた。


「少しお休みになられますか?」


「トーマスは寝ないのか?」


「えぇ、アリソンの勉強を見てますから、今日は次に寄る街までは起きています。」


「そうか、では後ろの方で横にならせてもらうよ。」


「えぇ~。ザバルティ様だけずるいぃ~。」


「お前は、勉強が間に合っていないから少しでも勉強だよ。」


「そんなぁ~。トーちゃんは厳しいなぁ~。」


≪アリソンの修学力は他の二人と比べても60%をきっています。≫


そう三人で交代にした理由にアリソンの勉強不足を補う目的もある。システムにも解析される程度しかない。あの横断幕に答える為にも妥協は許されない。だって一人でも落ちたら帰れないよ?故郷に。それにアリソンの父親からも頼まれた。「甘やかさず、勉強をさせてください。落ちたら目も当てられません。!!」って。そう思うなら、確りとやらせておいてくれたら良かったのにと思うが、これは仕方がない。アリソンは逃げるのがうまいから。逃げられない馬車の中が最高の勉強場所になっている。


「頑張れアリソン。その分同じ特Sクラスに成れたら、好きな物を買ってやるよ。」


「本当ですか~?」


「あんまり甘やかさないで下さいよザバルティ様。」


「あぁ、甘やかしではないさ。しかし不得意とする事をやるんだ。褒美があっても良いだろう?それにトーマスもロバートにも同じく褒美を与えるよ。」


「それであれば、意見はありません。」


「約束ですよ~。ザバルティ様。」


「ああ、約束だ。では頑張るように。」


「はい!かしこまりました!」


いつもと違う返事を返すアリソンに渋々といった感じのトーマスの二人を残して後ろに下がる。

実は亜空間魔法の応用で馬車の最後尾には外からはわからないが広い空間が一部屋分程ついている。およそ12帖くらいの空間である。そこにはベットが人数分用意してある。更にキッチンとトイレまである。現代でいうワンルームであるシャワー迄あるのだから凄いと言えるのではないだろうか?その分だけ魔石や色々な術式を利用し構築したのだが。


この装備のおかげで本当はノンストップで行けるのだが、他人の目をごまかす事と気分的な問題から休憩を取りながら進んでいるのだ。


≪マスター。私が索敵はしておきますので、お休みください。索敵対応レベルはB以上で良いでしょうか?≫


「そうだね。お願いするよ。」


私は自分の着ている装備をほどき、横になった。



◇◇◇◆◇◇◇



「ザバルティ様、村に着きました。起きてください。」


そう言ってトーマスに声をかけられた。


「ありがとう。では準備をするから少し待ってくれ。」


起き上がり、顔を洗ってシャワーを浴びて鎧を収納空間にしまい。貴族の礼服に身を包み外に出る。

三人は準備が終わっている様だ。


「待たせた。」


「大丈夫ですよ。門番に先に話をしておきました。」


「わかった。では行こう。」


馬車はロバートに任せたまま、ザバルティとトーマスとアリソンの三人で、番所へ行き身分証を呈示した。すると奥から、執事服を着た初老の男が出てきた。


「お待ちしておりました。ザバルティ・マカロッサ様。私はプロスペクター伯爵家の執事をしておりますセリドアと申します。我が主、カンガリ様より館に通すよう言われております。このままご案内させて戴いてもよろしいでしょうか?」


「わかりました。是非お願いします。馬車でもよろしいですか?」


「勿論です。厩舎がございますので、そちらへ回してください。馬で先導しますので、ついて来ていただきたい。」


改めて、馬車に戻り騎士の乗る馬に先導されて屋敷へ真っ直ぐに向かう。貴族の家柄であり次代のマカロッサ家当主になる予定のザバルティにとっては初めての領外への旅の為、王都テーストまでに寄る領主への挨拶は欠かせない物となっている。その為、事前に通る予定の家々に連絡をしてある。今後はそんなに気にする必要はないと思えるが、成人したばかりでもあるので、今回は仕方がないと踏んでいる。その為に余裕を持って行動しているのである。


マカロッサ家の領都アンバーは異文化の交流が盛んな地域なので、多種多様な建物が多い。ここプロスペクター伯爵領の領都であるパールは内陸にあるので、統一された雰囲気の街並みだ。ある意味アスワン王国らしい町並みと言える。しかも、縦横に真っ直ぐな道が続いている。綺麗な作られた街並みである。領主であるカンガリ・プロスペクターが当代となってすぐに建設された新しい街である。

賑わいもアンバー同様にある。しかし、綺麗な街並みの中に寂しさがなんとなく漂う街だと感じた。






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