181 我らビラッキオ隊 その2
「おれたちゃ最強ビラッキオ隊!おれたちを阻むものなのだない!ぎゃはははは♪」
俺の部下達が大騒ぎをしてんだ。最強!と歌えているから、この隊に居る事が誇らしいんだろう。自慢の隊に自慢の部下達だ。
「隊長。隊長も飲みませんか?」
「おう。お前ら俺を気にせず今日は好きなだけ飲め。」
「「「「「へい。ありがとうございます!!」」」」」
今日は、部下達の休養日だ。野営中も偶に幹部達のみで見張りをする日を作っている。俺なりの配慮の一つだ。この隊が勝ち残って来たのはこの団結力とバランスの良さだと思っている。
「皆楽しそうですね?」
「ああ。今日はゆっくりさせてやろう。じゃあ俺は少し休むぞ。」
「わかりました。」
俺は一人自分の寝床に入った。次起きる時は自分が見張りに立つ時だ。それにしてもいつの間にか1000人隊になった。その内ビラッキオ将軍と呼ばれるようになるかもしれないな。
「がはははは。」
「何、一人で笑っているんですか?気持ち悪い。」
リリアーナがいつの間にか居た。
「はぁ?なんでお前が来るんだ?」
「えっ?隊長が来いとおっしゃったんではないんですか?」
おかしい?何故だ?もしかして誰かのいたずらか?
「要が無いようでしたら、下がります。」
「ああ。そうしてくれ。」
まったく、誰の仕業か知らないが、質が悪いいたずらだ。まぁあれだけ騒いでいる位だから悪乗りだろうがな。
「それは、困りますね。私が貴方達二人に要があるのですから。」
「あぁ?てめぇは誰だ?」
突然現れたかの様にそこに男がいる。殺意などを感じない。それが逆に気持ち悪いのだが。
「これは失礼しました。私はレリクランと申します。ジルベルト隊所属です。ジルベルト様より手紙を預かってまいりました。これを。」
「預かろう。」
リリアーナがレリクランと名乗った男から手紙を受け取り、俺に渡してきた。確かに奴の手紙である証拠の隊の紋章が押されていた。
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親愛なるビラッキオ殿
ご機嫌麗しくお過ごしの事と思います。
今回の作戦において私事ではありますが、不参加とさせて頂きたい。
死体の方は、準備出来次第、そちらへ送る事は約束しよう。
この手紙が届くであろう日から数えて10日後に200体ほど届ける事をお約束しよう。
一方的ではある事は心苦しいが、我が隊は別任務に就かせて頂く。
また、連絡をする。
ビラッキオ隊の行く末に栄光あれ。
ジルベルト・スラング
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「ふん。つまりはこちらに力を貸せないという事だな?」
「いいえ。違いますよ。別任務が発生したので、協力できるのは死体の提供だけという事ですよ。」
俺はリリアーナを一瞥したが、リリアーナは問題ないというように頷いた。
「わかった。その協力をお願いしよう。」
「ありがとうございます。これで我が主も胸を下ろされるでしょう。親愛なるビラッキオ隊長に心苦しくもお断りを入れねばならない状況で、心配されておられましたから。」
「そうか。では問題ないと伝えてくれ。」
「かしこまりました。」
「で、お前達はどこに向かうんだ?」
「イグナシオ大陸のミスル王国です。」
「ほ~。これはずいぶんと遠くへ向かうのだな。」
「はい。どうやら、魔王国内に独立都市国家が出たとか?」
「ああ、それは俺も聞いている。」
「その魔王国内の紛争の中で、あのアリア様を見たと言う話が上がっているのですよ。」
「なに!アリア様が?!」
「ええ。で、その真偽を確かめる様にと閣下から命令が下されました。生きて連れ帰るようにと。」
「それは、大変な任務に就くのだな。」
「困ったものです。」
「そういう事ですか。ではこの地へはやはり、新設の潜入攪乱第九部隊が導入されるのですか?」
「そうお聞きしています。」
突如リリアーナが会話に参加してきたが、どうも少しは話を聞いていたようだ。
「わかりました。ではジルベルト殿にはこちらは心配されない様にとお伝えください。」
「重ねて主に代わり感謝申し上げます。では今宵はこれで失礼いたします。」
そうレリクランは言うと姿を消した。
「突然現れて、突然消えるとは噂に違わぬ者達のようだな。」
「ええ。その相手をさせられる村の者は敵方とは言え、可哀そうですね。」
リリアーナは可哀そうであるという気持ちを持っていたのか?初耳だな。
「何ですか?私の顔に何かついていますか?」
「いや。何でもない。」
俺は驚きのあまりリリアーナを見過ぎていたようだ。
「では私は、自分のテントへ戻ります。」
「ああ、わかった。」
「明日にでも、予定変更の為の策を練り直しますが、基本的にはこれまで通りの行動となりますが、よろしいですか?」
「もちろんだ。任せる。」
「かしこまりました。ではお休みなさいませ。」
「ああ、お休み。」
リリアーナが今度こそ、出て行く。
「まったく、休める時間が減ってしまったな。」
独り言を言って俺は外に出た。時間が少ないから寝る事はせず、素振りでもしておこうと考えたのだ。
その日の夜空に輝く月はまん丸だったが、怪しい輝きに見えた。




