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ガチャという音と共にビンセント支部長は青い顔をして戻ってくる。


「事実だとわかってもらえたかな?」


「えぇ、わかりました。ギルドでそういう出来事があったという話の裏がとれました。ニートが最後は炎に巻かれて出て行ったという事もわかりました。炎は貴方の仕業ですか?」


「そうだとも言えるし、そうでないとも言える。火の精霊が見かねてエリザを守ろうとしたのであろう。」


「なるほど。わかりました。では、こうしませんか?貴方がこのクラウンに所属し、ニートを除名・奴隷落ち。クラウンに所属すれば、好待遇を約束致します。どうですか?」


「俺はクラウンに興味は無いから却下だ。エリザの無償退会と賠償として金貨2000枚だ。」


「金額が増えていますよ。それにエリザさんは退会するにしても借金があります。金貨3000枚。これは払ってもらわなくては困ります。ニートのした事は彼本人から取り戻してください。」


「私はそんな借金はしていない。精々金貨50枚程度よ。」


「そんな事ないですよ。貴方に貸し与えた装備や育成費用。脱退弁償金合わせて3000枚です。契約書にちゃんと書かれていますよ。」


「ではその契約書とやらを見せて貰おう。」


「構いませんよ。」


契約書を取りに行くビンセント支部長。ニヤニヤした顔で戻ってくると、紙を男の前に差し出した。


「ほら、この通り書いてあるでしょう。」


「そんな事は書かれていないぞ?ここには、自由意志の元に退会できると明記してあるし。退会祝い金として金貨3000枚をクラウン側が払うと書いてある。この契約書に違反がある時はビンセント・ルバイストの奴隷落ちとロクサス代表の奴隷落ちが執行される。と書かれている。」


「そんなはずは!見せろ!!」


ビンセントがひったくり見て、大汗をかき始め、ワナワナと震えだした。


「こんな契約を交わした事は無い。無効だ!」


ビンセントが破こうとするも破れない。火をつけようとも燃えない。

ビンセントの震えが止まらない。更に激しさを増す。


「本物の契約書だ。なぜだ?」


「そんな事は知らねえよ!早く出すもん出せ!!」


「ひぃぃぃぃ!」


ビンセント支部長は時が止まったように固まってしまったのを、男が怒鳴り意識を戻させ動かした。

ビンセントは慌てて金貨を引っ張り出してきて男達の前に持って来る。


「これが、金貨3000枚です。」


震える声でそういうと震える手で革袋を出してきた。

男は確認すると、エリザに革袋を渡した。


「エリザこれで良いな?数えろ。」


「は、はい。・・・ちゃんと有ります。契約履行です。」


エリザがそういうと契約書は青く光り消えた。


「ほぅ。良かった~。」


ビンセント支部長は力が抜けたらしく座り込む。するとその前に男が仁王立ちした。


「金貨1000枚は賠償金として持って行く。金貨2000枚は返してやる。ただし、交換条件がある。」


「な、なんでしょうか?」


「契約を俺としろ。このような事態が起こらないように支部内の教育を徹底しろ!仲間をいたぶるのはクラウンの本当の目的からかけ離れているだろうが。」


「すいません。もう二度と今回のような事が起こらないように致します。」


「あぁ、忘れていた。お前の名前で交わしている契約書は全て書き換えさせて貰った。全て自由退会が出来るとしてある。流石に祝い金なんぞは無いがな。俺が妥当と思う内容にした。よく確認しておけ。」


「は、はい~。」


と言ってビンセント支部長は白目をむいて倒れた。実際にこの支部において奴隷落ちした者は幸いにもいなかったのを男は確認している。また、契約は自己責任でもある為、自分で対応するべきとの思いもあるようである。


「じゃ、帰ろう。」


「は、はい。」


≪面白い物がみれたわ。あっはっは。≫


倒れたビンセント支部長をそのままにして、三人はロクサス支部を出た。出て行く三人をロクサス支部内に居た者達は遠巻きに訝しい顔でみていたが、誰も止めに来なかった。


「エリザ。これで許せ。」


「はい。ありがとうございました。ですが、このお金は要りません。クエスト達成の報奨金として受け取ってください。」


「いや、流石にそれは出来ない。ちゃんと持っておきなさい。」


「いえ。貴方が居なかったら、私は確実に奴隷落ちさせられていました。なので、救ってくれた貴方にこそこのお金は貰って欲しいのです。」


≪そこまで言われて受け取らぬという選択肢はないぞ。それに人間。子供を見つけるためにも金は必要であろう?≫


「そりゃ、そうだが。」


「えっ?子供を探しているんですか?」


「そうだ。その為に旅をしている。」


「では、そのお金を使ってください。その代わりお願いがあります。」


「なんだ?」


「私にもお子様を探す旅に同行させてください。協力させて欲しいんです。」


「それはありがたい申し出だ。でも本当に良いのか?ここには戻ってこれないぞ?」


「大丈夫です。私には身寄りはいません。それに私を助けてくれた方に協力したいって思うんです。今度は助けるのは私の番です。」


≪ほれ、人間よ。協力をしてもらえばよかろう?我もエリザと共に居るのは楽しいから嬉しいぞ。≫


「そこまで言うならわかったよ。よろしく頼む。」


「ありがとうございます。まだまだ未熟者ですが、末永くよろしくお願いいたします。」


「いや、結婚じゃないから!」


エリザは頬を赤く染めながら、笑顔で男に言った。男は満更でもない様子で突っ込みを入れる。

三人は微笑みあうのであった。










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