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179 それぞれの動き 


「で、例の者の動きはどうだ?」


「まだ、大きな動きは無いようです。」


「そうか。でレストエア辺境伯とは連絡がついたか?」


「いえ。まだ連絡がついておりません。女王の私兵がレストエア辺境伯の居城を固めているという情報は入っておりますが、それ以降の情報はピタリとはいっておりません。」


厳しい顔になる貴族風の女の前で片膝をつき報告する従者のような恰好をした男。

ピリピリとした空気感が辺りを包んでいる。


「わかった。下がってよい。」


「はっ。」


男は女に言われるがまま素直にその場を辞する為に後ろを振り向く。

その時の男の顔が歪んでいたが、女は気づいていない。男は部屋を出ると足早に自身にあてがわれている部屋へ入る。


「コランデ。ピラッキオ隊を呼べ。」


「かしこまりました。」


部屋の中には跪く女がおり、男に返事をする。


「遂に動かれるのですね?」


「仕方が無いだろう。アイツはもう動けんよ。それにしてもあの女王がここまでスピーディーに事を運ぶとは思わなかった。本国に報告をしておかねばなるまいな。」


「かしこまりました。連絡鳩を飛ばしておきます。」


「うむ。頼む。」


「ところで、シャズナ様。我らの前にはだかるのはセイレス女王だけなのでしょうか?」


「どういう事だ?」


「どうも、あのエリザネス第一王女の婚約者のザバルティ・マカロッサがこちらへ来て以降、状況が芳しくない様に思えるのですが。あの者は何者なのでしょうか?」


「少なくとも、武に優れた者というのは間違いが無さそうだが、それ以上は情報がない。不気味な存在ではあるが、まだ15歳。関わらねば問題が無かろう。子供に国外の事など、どうしようもなかろうよ。」


「そうでしょうか?」


「わからぬ者を警戒し過ぎても物事は上手く進まぬ。それにこれまでが順調すぎたのだ。まぁ、見張りだけは確りつけておけ。眼を放さぬようにフラーヌにきつく言っておけ。」


「かしこまりました。では、支度を致します。」


コランデは部屋を出て行く。コランデもまたこの屋敷でメイドをしているので、怪しまれる事は無い。


「まったく。女は用心深過ぎてイカンな。」


独り言を言うシャズナはそんな自分を笑うのだった。



◇◇◇◆◇◇◇



「ようやく動きがありました。見張っていた屋敷から伝書鳩が飛び立ちましたので、捕まえ、密書を奪いました。現在、鳩は私の部下に命じて追わせております。こちらが密書です。」


「シェリルご苦労様。情報が入ったら直ぐに報告を入れてくれ。」


「かしこまりました。」


シャリルから、密書を受け取りながら聞いた。


「ところで、ステファネスの方はどうだ?」


「ステファネスですか?毎日子供達に振り回されていますよ。」


「だろうな。わかった。ありがとう。」


シェリルが報告を終えて部屋を出て、代わりにシーリスが入って来る。


「ザバルティ様。どのような内容ですか?」


「今、受け取った所でまだ読んでないよ。」


「そうでしたか。」


「だいたいの内容はわかっているけど、確実にはわからないからね。」


そう言いながら、封を開けて読む。


「やっぱりか。これで、後は鳩が行く先が間違いなければ、裏はとれるね。」


私が想像した内容で間違いなかった。


「シーリス。ビラッキオ隊っていうのが、居るようだ。情報を集めてくれないか?」


「かしこまりました。」


シーリスが出て行き、今度はミーリアが入って来る。


「ザバルティ様。明日の昼には要塞の方が完成するとの報告をうけました。明日、要塞の方へ顔を出されますか?」


「そうだな、そうする予定にしておいてくれ。」


「かしこまりました。ではカーリン・ダンバルにその様に伝えておきます。」


ミーリアも私の部屋から出て行く。今の私は自分の屋敷、つまり王都テーストの屋敷に居るのだが、同時に三カ所に居る事になっている。気がついたら。我ながら、多忙だなと感じるが、だからと言って今の状況がイヤなのではない。


「社畜とかいう者になってしまったのかな?」


『それはどうでしょうか?現在楽しんで動かれているわけですから。」


私の独り言にカミコちゃんがツッコミを入れてくれる。平常運転中だ。


「そろそろ、ステファネスにまた動いてもらうとしようかな?」


『今はあの子達の面倒を確りと見せる方が良いのでは無いですか?』


そうか、子供達が居るもんな。迂闊に動かして悲しい出来事が起こってしまっては意味が無いしな。


「では、ロバートとトーマスを呼んで、久々に彼らと共に動くとするか。」


『それがよろしいかと思われます。』


カミコちゃんのお墨付きも頂いたので、久々の男三人で進めますかぁ~。


「アイリーン。居るかな?」


直ぐに部屋の入って来るアイリーン。


「はい。ここに。」


「アイリーン、悪いんだけど学校が終わったら、ロバートとトーマスを私の所へ呼んでくれないかな?」


「かしこまりました。」


アイリーンも直ぐに部屋を出て行ってしまう。


「皆せっかちになっちゃったのかな?」


と呟いたものの、そんな事は無い。単純にレスポンスが早いだけなのだが、やはり気にはなるのが上司の心情かな?






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