164 死んだ後に。 その3
「その者が、ステファネスであり、エリザネスが首を落としたハズの者か?」
「はい。その通りです。」
今はセイレス女王とドコラテヌ宰相の前に連れてこられた。勿論連れて来たのは彼だ。アタシの横には教官のシェリルが一緒に居る。それと彼のメイド兼秘書というハイエルフの綺麗な女性シーリスと人族の綺麗な女性ミーリアが一緒だ。いつぞやにシェリルが言っていたが本当に綺麗な女性ばかりが彼の側に居る。
「エリザネス第一王女は憶えていらっしゃるのでは無いですか?」
「確かに、首を斬ったはずです。でも・・・ザバるんの力ですね。」
「その通りです。」
この場にはアタシを殺したエリザネス第一王女と一緒にいたマリリン第三王女も居るのだが、それより彼を『ザバるん』って呼んでいないか?婚約者だからと言って調子に乗ってないか?
「・・・良かった。生きていたのですね?ザバるんが動いたのでもしやと思っていましたが、この目で確認出来て嬉しいです。」
また、ザバるんって・・・。あれ、ミーリアさんとシーリスさんにシェリルの顔色が少し変わったような?
「今後は彼女には『この国の目』になって貰うべく鍛え上げました。」
「どういう事じゃ?」
「はい。ドコラテヌ宰相からお聞きしましたが、この国には国の中には情報部という物が存在しないとお聞きしました。間違いないですよね?」
もしかして・・・、同士というのは?
「それはそうじゃ。力こそ正義じゃ。ちょこまかと策を講じるのは好きではない。」
「それも一理ありますが、そのような事の為に後れを取る状況が出来ていませんか?」
「確かにその通りじゃが。」
婚約者達を認めていない?皆密かにザバルティ様をお慕いしている?
「『情報は命』如何に正確な情報を集めるかが、大切である。と私はこのジェスター王国の創始者であるプロメイラ様がおっしゃっていたとお聞きした事があります。その考えは小国だからこそではありません。正確な情報はお金を出してでも手に入れるべき物です。力でねじ伏せるのは最後の手段です。」
「そうか。そこまで婿殿が言われるのであれば、そうなのじゃろう。しかし、その者は信用が置けるのか?」
という事はアタシも狙える?アタシも挑んでも良いのか?
「大丈夫です。先日彼女と契約を交わしました。彼女は、ステファネスはもう私の仲間の一人です。これからはこの国の『正義』の為に、弱き者達の為に動いてくれます。なぁ、ステファネス?」
「はい。アタシはザバルティ様をお慕いしています・・・す?」
私は話を聞いていなかった。頭の中で考えていた事が急に話を振られて言ってしまった!
私は顔を真っ赤にして最後疑問形で言葉を失った。
全員の視線が痛い。特に女の視線が・・・。
「ありがとう。そんな風に思って貰っているとは思わなかったが。」
ザバルティ様も驚いてはいるものの笑顔である事が救いだった。がギラギラした敵意のある目線が周りから浴びているので私の顔は青くなっているだろう。
「いや、ほらアタシを助けてくれた人を裏切るなんて出来ないじゃないか?な?」
「まぁ、この様に彼女も言っております。私を信じて頂いているのであれば、彼女も信じてやってください。」
「うむ。そこまで言われてこちらに断る事は出来ん。ただ、情報を貰ってもそれに報いれるかは別じゃぞ?」
なんとは話は進んでくれた。危ない危ない。
「それは勿論です。情報はあくまでも情報です。それをどのように利用するのかはセイレス女王とドコラテヌ宰相次第です。」
「わかった。それならば私に文句は無い。」
了解を得れた様だ。
「少しお待ちください。確かに情報を得るというのが大切なのはわかりました。ですが、その者は私にあっさりと負けた者。実力不足かと。」
「確かに、エリザネス第一王女のが言う通りです。なので、ここで一騎打ちをしてみませんか?」
えっ?そういう事を言っちゃう?今のこの状況で一騎打ちって前より怖いんだけど?
「私は構いません。ザバるんが言うのでしたらしましょう。」
あれまたギラリと周りの目が光った気がする。
「良いよな?ステファネス?」
「あ、はい。大丈夫デス。」
そう答えるしかないよ。だって『殺れっ!』って目で脅してくるんだ。あのお三方が。
「そうか。では訓練場に移って一騎打ちをする事を許可しよう。」
「ありがとうございます。」
ああ、なんて日なんだよ?
アタシを簡単に殺した相手と早くも再戦なんてさ。
「大丈夫。ステファネスは強くなってるよ。」
ザバルティ様は私の近くに寄ってくると肩をポンポンして言葉をかけてくる。
はぁ。まぁしゃないか?ザバルティ様に言われたらヤルしかないか。
「負けるんじゃないよ。」
ザバルティ様の後にシェリルが近くに寄ってきてボソって言ってくる。
「負けたら・・・どうなるかわかってるでしょ?」
「えっ?」
「それに周りを見てみな。」
アタシはシェリルの言う通り周りに目を配ると、そこには二人の修羅が居た。
その二人の顔には『負けたら、私がお前を殺す!』って書いてあった。
あぁ、ここが地獄なんだな。




