159 策謀に対する策 その1
「婿殿、その辺はどうじゃろうか?」
色々と遠回りをした感じは否めないが、セイレス女王は私にある事を聞いてきた。
どう答えるか?それが悩みどころだ。
「そうですね。今調査中という所ですね。」
イエスともノーとも取れる答えをした私にガッカリとした様子のセイレス女王があまりにも不憫だと思い。
「ただし・・・。」
「ただし?」
「斬首したハズの者は生きていますよ。」
「誠か!?」
「ただ、もう少し待ってやってはもらえないでしょうか?私も今回の事に対して思う所がありますので。」
食い気味にになったセイレス女王に諭すように話をする私。
「うむ。わかった。婿殿に任せよう。」
「ありがとうございます。必ずや報告いたします。」
快諾してくれたセイレス女王の為にも確りと働きます!と心に誓った。
◇◇◇◆◇◇◇
「彼女の成長具合はどうだ?」
「そこそこにはなってきているかと。」
「で、あの村の状況は?」
「度々、使者が来ているようですが、その都度予定通り捕まえており、情報を吐かせておりますが、核心的な情報を持っている者がいないというのも事実です。」
「まぁ、情報が入らずとも今頃、アイツ(レストレア辺境伯)は眠れない日々を過ごしているだろうさ。」
ふと、会った時の事を思い出していた。悪徳商人のような姿が浮かび、青ざめている様子が想像できた。
「だが、あれだけ大胆な行動をアイツが起こす輩とは思えない。黒幕がいるハズだが、連絡を取り合っていたり、使者が来ている様子は無いのか?」
「残念ながら今の所はありません。」
首を振り答えるシーリス。
「困ったな。尻尾を中々出さないとはな。そこそこに頭が回るんだな。」
「はい。」
「では、この王都ジュピターに居る貴族に探りを入れてみてくれ。」
「わかりました。ですが、こんなに回りくどい事をされなくても、あの女を出せば済むのでは?」
「いや、貴族の世界では難しいな。結果的に位が信用になっているからな。」
残念ながら、信用証拠にはなるまいな。
「そうですか。人族は面倒ですね。」
「そうだな。」
シーリスはハイエルフなので、貴族社会がわからないのであろうが、面倒であるというのは共感できる。人と言えば、前世では部下に罪を擦り付ける者をたくさん見てきた。実行犯を部下にさせて「私は知らない。」と言って逃げおせる奴らを。ここでも同じだろう。本当の黒幕は「私は知らない。」と言い張り下の者を切り捨てるだろう。だから、黒幕の正体に拘って動いている。圧倒的証拠を見つけようとしているのだ。見つけてしまえば、この国においての最高責任者であり最高権力者でもあるセイレス女王に裁いてもらえば良い。だが、証拠だけは手に入れないとダメだ。黒幕を捕まえてこそ本当の決着になる。
「では、ご指示通りに王都内で情報を集めましょう。」
「うん。頼むね。」
シーリスと別れてから私は彼女の所へと向かった。
◇◇◇◆◇◇◇
白で埋め尽くされた空間に居る女は空間のこちらから飛んでくる武器を躱したり叩き落したりしながら耐えている。
「へぇ。このレベルまで耐えれるようになったのか?」
飛んでくる武器はもう目で追えるスピードでは無い。それを危ういながらも全て躱すか叩き落しているのだじゃら、もやはスピードは一級品という事だろう。
「思ったよりは成長しているな。」
「そうかもしれませんが、まだまだです。」
教官役のシェリルが答える。シェリルはラムザの部下だ。私とラムザとの間の連絡係でもあるのだが、密偵をきたえるのならとラムザから協力をしてもらう形になり、シェリルが役に就くという事になった。
「しかし、この空間は良いですね。素晴らしい教育環境です。」
「ありあがとう。ところで、彼女は任務に入れそうかな?」
「この調子でいけば、後に三日あればそれなりになると思いますわ。」
やはり、成長が早いのは間違いないな。
「はやり教官が良いと成長も早いんだな。」
「いえ。私の教育などたいした事はありません。」
「謙遜するな。貴女は凄いよ。」
「ありがとうございます。」
シェリルは笑って謝意を述べる。
「少し、王都の周りをしらべさせているのだが、中々敷居は高いようで難航しているんだ。」
「そうでしたか。では私の部下を10名程、放っておきましょう。数日以内に情報を報告させて頂きます。」
「助かる。ありがとう。」
これで、ある程度の情報は入ってくるだろう。
「ところで、ラムザの方はどうなっている?上手くいっているのかな?」
「今の所の問題なく予定通り事が運んでいるようですよ。」
「このまま、上手くいくと良いな。出来ればあの地下を緊急用にして欲しくないからな。」
「そうですね。あの綺麗な都市はそのまま平和な時に利用できると良いですね。」
雑談のような情報交換をしているとひと際大きな声が聞こえた。
「どりゃあ~!!最後!!!」
その声と同時に大きな槍が空間中央に居る彼女に向かって飛び出した所のようだった。
「はぁっ!」
少し下がったかと思うと瞬時に上段蹴りをする彼女の右足の元に大きな槍は砕けて転がるのだった。




