154 私は見た。 その2
あの衝撃的な件の数日後にまた私は見た。
「セイレス女王とベロニカ第二王女とギャニック第一王子。そしてディスラテヌさんにドコラテヌ宰相。数時間を私に頂けませんか?連れて行きたい所があるのですが。」
唐突にあのお方はおっしゃった。
「それは構わぬが、何処に連れて行くというのじゃ?」
「それは内緒ですが、そうですね・・・旧友がいる所とでも言いますか?今はお伝え出来ないというのが正しいですね。」
「そうか・・・。ではドコラテヌ宰相、護衛の準備をしてくれ。」
「いえ、ちょっと待ってください。護衛も従者も必要ありません。私に与えてくださっている一室に来て頂ければ大丈夫です。」
「はて?」
母上は心底不思議そうにしていたのだが、姉上があのお方のしようとしている事が分かるらしく付け足す。
「母上。全てをザバるんに任せておいてください。」
「安心して頂いて大丈夫ですよ。」
「ふむ。そちらがそう言うのであれば構わぬが・・・。宰相どうじゃ?」
「5時間位であれば問題無いかと。」
「そうか、では明日の昼食後に集まるとしよう。」
ドコラテヌ宰相の承諾を得て母上が決定された。
「ありがとうございます。これで一つ家族に恩を返せます。」
そうあのお方はおっしゃった。
◇◇◇◆◇◇◇
そして翌日の約束の時間になった。
「今日は、無理を言って時間を作ってもらいありがとうございます。」
「いや、構わんよ。婿殿の頼みであれば数時間程度問題は無い。むしろ数時間で申し訳ない。」
代表して母上が答える。
「ベロニカ第二王女とギャニック第一王子もごめんね。色々したい事があるだろうに。けど絶対楽しめると思うから、楽しみにしててね。」
「「はい。」」
私と弟のギャニックはそれだけしか答えられなかったのだが、あのお方の優しい笑顔を向けられると赤面する自分を自覚し恥ずかしいだけなのだが、あのお方は緊張していると思われたのか更に優しい笑顔になり言葉を続けてくれる。
「そんなに緊張しなくても怖い事なんて起こらないし起こさせないから安心してね。」
「お気遣い、ありがとうございます。」
なんとか絞り出して答えれた私を褒めてやりたいと思う。
「では、皆さんちょっとした旅をお楽しみください。では行きましょう。」
あのお方の案内によって奥の部屋へと続くであろう扉に入るとそこは真っ白な部屋であり3つの扉があった。その上、綺麗な顔をしたダークエルフの方々が四名程いらっしゃった。
「準備は出来ているかい?」
「はい。」
中心にいる方にあのお方は声をかけて返事を受けた後、私達に振り返り紹介してくれた。そして本人も挨拶をしてくれた。
「お初にかかります。ザバルティ様の命でこの空間を管理しておりますブリエンド・セリンエンデスと申します。お見知りおきを。」
その中心に居た一番綺麗な顔をしたダークエルフの方が自己紹介を兼ねて挨拶をしてくれたので、母上から順に挨拶を返した。
「では、こちらです。」
真っ直ぐ先にある扉を開きブリエンドさんが入っていく。順番について入っていくとその先は先ほどと同じ様に真っ白い部屋になっており、今度は扉が多数あった。そして同じ様にダークエルフの方が数名待機しておられた。
「問題無いか?」
「ございません。」
言葉を交わすブリエンドさんと待機していたダークエルフの方。
「では、こちらです。皆さまお待ちですよ。」
お待ち?皆さま?そんな事を考えながら次の扉を入っていくとそこで私は見知らぬ方々が居られた。
「ひさしぶりじゃのぉ。セイレス王女。いや、セイレス女王よ。」
その声を聞きそちらを向いた母上の反応は凄まじかった。
「うそであろう?ロマネス様にミネルバ様ではないか?」
そして、同じ様にディスラテヌ叔母さまもビックリして眼を見開いている。
「ワシは夢でも見てるんじゃろうか?」
「それにしてもお互いに老けたのぉ。」
その言葉を聞いて母上とディスラテヌ叔母さまはキッという顔になってロマネス様のお腹に同時パンチを喰らわせる。
「「相変わらず、レディに対する発言がわるうございますね!!」」
息ピッタリの二人の前でお腹を押さえて蹲るロマネス様。その横であらあらという顔になっているミネルバ様。
「今のは、貴方が悪いわ。ごめんなさいね。セイレス女王にディスラテヌ伯爵。」
「「いえ。すいません。つい手がでました。」」
恐縮する二人に優しい笑顔で答えるミネルバ様。
「さぁ、こちらに来て、隣の部屋に息子達が来ているわ。」
「本当ですか?ですがここは一体どこなのです?」
母上がビックリしながらもミネルバ様に聞いている。
「腹が・・・。」
「ふふふ。それは向こうでユックリとお茶でも飲んで話しましょう。」
あくまでもロマネス様を無視して話を進めるミネルバ様。
「さぁ、隣へ行こう。」
私とギャニックの手を取り誘ってくれるあのお方に連れられるがまま、私達は隣の部屋へと入っていった。
「いらっしゃい。ようこそ我が家へ。」
皆が入った所であのお方はおっしゃった。我が家へと。
「今?我が家と言われなかったですか?」
私はあのお方へ聞き直した。
「そうだよ。アスワン王国王都テーストにある私の家だよ。」
「「「「「えっ?え~!!」」」」」
連れてこられた私達は驚き大声を上げてしまったのだった。




