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150 歴史的変化の裏側で



「ですから、ティファールお姉さんにお願いがあるんです。」


「ふむ。かまわんぞ。要するに家を継げる者に女も認めればいいんじゃな?」


「そういう事です。」


「元々、そういう構想があったんじゃが中々反対が多くて進まんかったじゃが、良い機会じゃろう。進めてみよう。」


ティファール女王は快諾する。ある意味歴史的快挙がおこなわれようとしているのだが、本分はそこでは無い為、詰めた話はしないが後のこのジェスター王国にとって大きな変化をもたらした事案であるのは間違いない事である。実際にこの後に女性の当主が沢山排出される事になったのだ。そしてジェスター王国は実力主義がより強固になったのである。



◇◇◇◆◇◇◇



「兄上!それは誠の事ですか?!」


「うむ。今回の魔族の襲撃をビリトリア公爵の事件を受けてティファール女王が前から練っていた構想を進めたようだ。よって、女性であっても家を継ぐ事が出来るようになった。事件が大きかった事で誰も反対できず、承認されてしまった。」


「何ていう事でしょう・・・。前からその構想があったのですか・・・。」


「そうよな。皮肉な話だが、お前がまだあのビリトリア公爵の元におれば、お前の娘にも公爵家を継ぐ権利が与えられておったであろうな。しかし、当のビリトリア公爵が起こした事での変化では継ぐ事など出来なかったが・・・。スラング公爵家はお取り潰しが決定した。ビリトリア公爵以外の家中の者はお咎めなしと決着したがな。」


兄の話を聞いた妹は下を向いて肩を揺らして泣くのであった。それを見た兄はビリトリア公爵に対する憎しみを増すのであった。



◇◇◇◆◇◇◇



「さて、本命はどう動くだろうか?」


「そうだね。早くにこの事(女性の当主を認める事)が決まっていたら、恐らくこんな事にはなっていないだろうから、恨むんでは無いだろうか?」


「誰を?」


「そこが難しい所だよね。願わくば、自身の家族に向けずに置いてくれると良いんだけど・・・。」


「諦めるかしら?」


「とりあえずの仇は打てた形になってるからね。」


「ティファール女王に向かう事。王族に向かう事だけは嫌だよね。」


「こればかりは、私達にはどうしようも無いわね。」


「そういう事だけど・・・。」


「どうしたの?」


「やっぱり、少し動くよ。今回の本命には情状酌量の余地があるから、悪い決着だけは嫌だから。」


「そう?まぁロマネスが言うなら止めないけど、あまり乗り気にはなれないわ。」


「そうか。とりあえずティファール女王にも相談してみるよ。」


「そうね。それが良いと思うわ。」


ロマネスとミネルバの話し合いは決着をみたのだが、最終判断をティファール女王にしてもらう事にしたのであった。



◇◇◇◆◇◇◇



「・・・という訳なのです。」


「信じられぬ。う~ん。そんな事が出来ようとは・・・。」


深いため息を漏らすティファール女王。


「事実です。良ければ、一度話をする機会を設けてはいかがでしょうか?」


「何?」


「それだけの事を直に手を出さずに結果を導き出す手腕はある意味で置いて策略家として優秀です。優秀な人物を味方にするというのは大切な事ではありませんか?」


「確かに・・・じゃがのう。」


「心配はわかります。しかし政は清さだけでは回らないのでは無いですか?時には汚れる事も厭わずにやる事も必要でしょう。」


「そうじゃ。・・・・わかった。一度話をしてみよう。」


ロマネスの説得を受けてティファール女王は今回の本当の黒幕と話をする決心をしたのである。



◇◇◇◆◇◇◇



「ふぅ~。後はティファール女王が上手くやってくれるだろう。」


「そうは言っても護衛を任されたじゃない?」


「ミネルバ。それは僕は護衛だけど、君は一緒に居る様にと言われていたよ?」


「えっ?え~!!」


シレッと大役をミネルバに押し付けるロマネス。


「僕は、この後セイレス王女の訓練があるから行くね?」


「ちょ、ちょっと、待ちなさいよ!!」


ガシッと腕を掴もうとするミネルバの腕をヒラリと避けたロマネスは脱兎の如くその場を逃げ去る。


「今日という今日は許さない!!」


逃げるロマネスを鬼の形相のミネルバが追いかける。いや、鬼神となったミネルバが追いかける。持てる全ての能力を駆使して・・・。



◇◇◇◆◇◇◇



「えっと?≪ロマネスは死んだ≫んですか?」


わかっているけど聞かない訳にはいかなかった。


「ううん。≪ロマネスは死んでも死にきれない状況を創られた≫が正しいわね。あれは本当に恐ろしかったわ。」


セイレス女王は大きくブルリと震えて歯をガチガチさせた。それを見て私は祖母であるミネルバ・マカロッサを絶対に怒らせないと心に誓ったのである。



◇◇◇◆◇◇◇



「クシュン。」


「大丈夫かミネルバよ?」


「変ですね?誰か噂してるのかしら?」


「おお、そういえば、ザバルティの奴が今頃ジェスター王国のセイレスちゃんの所じゃろうな。」


「そうでしたね。何だか懐かしいわ。」


孫が用意してくれた孫の家の一室でくつろぐ老夫婦は懐かしい過去を思い出し談笑するのであった。


「今でも思い出すと腸が煮えくり返りますわ。」


「何の事じゃろうか?」


とぼけるロマネスを苦笑いで見るミネルバである。歳をとっても変わらない様だ。


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