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146 セイレス王女の訓練



数日後、ロマネスがミネルバの元へ戻ってきた。


「遅かったね。」


少し険のある言い方で出迎えるミネルバ。


「ごめんごめん。」


素直に言葉に出して謝るロマネス。


「本当に大変だったんだから。絶対この償いはさせるからネ。」


「うん。必ず償います。」


両手を合わせて拝むように謝るロマネスを見てミネルバは留飲を下げる。


「で、どうだったの?」


「うん。バッチリ手に入れてきたよ。」


仕方がないという感じのミネルバの質問に満面の笑みで返すロマネス。


「これで、動き出せるわね。」


「ああ、これで目途が立ったよ。」


「だ・け・ど、セイレス王女の訓練は任せたわよ。」


「あっ。」


ミネルバに言われて固まるロマネスであった。



◇◇◇◆◇◇◇



広い空間に多種多様な武器が並べられている。多種多様な武器に囲まれている広場に置いて武器と武器がぶつかる音が聞こえる。


「ぬおぉー!」


「まだまだ!」


武器と武器がぶつかる音に負けない声量で掛け合いをしている二人。

片方は小さい女の子であり、もう片方は綺麗な顔をした青年だ。


「甘い!もっと鋭く!!」


「はい!」


青年に指摘された少女は素直に聞き入れ鋭く鋭く武器を振るう。


「いいぞ!その調子だ。もっとスピード上げてみよう!!」


「はい!」


兎に角素直に返事をして先生である青年のいう通りに動こうとする少女。

そんな真剣な二人を少し高いバルコニーのような所から眺めている二人の女性。


「ふふふ。気合が入ってるようね。」


「二人共真剣ですね。」


綺麗な顔をした二人の女性。一人は赤いロングヘアをしており、指や首や耳に高価なアクセサリーを身につけたこの国の女王ティファール様と向かいに座り黒いショートヘアに黒いローブをきたSS級冒険者ミネルバである。


「貴方達に稽古をつけてもらえれば、あの子もより充実した訓練になるでしょう。」


「勿体ないお言葉です。」


恐縮するミネルバに優しくけれどハッキリと返すティファール女王。


「勿体ない訳が無いでしょう。あんなに集中して訓練しているあの子を見るなんてそうそう無いわ。訓練は技術もだけど心の方も大切なのよ。」


「そうですね。」


「あの子にとって憧れの冒険者である貴方達から直接教わる事が出来る環境は、最高の物だと思うわ。」


ティファール女王の言葉に恥ずかしいと思いながらも頷くミネルバ。

ティファール女王が言う通り、人は感情がある生き物であるが故に、只々肉体だけの技術を教える高等な内容でも、受ける側の心が準備できていなければ結果は普通になってしまう。逆に高等な教える技術は無くても、受ける側の心が準備できていれば結果は良くなるのだ。セイレス王女にとっての憧れのSS級冒険者である二人に教われる事は技術も高等であり、受け手の心の準備も最高に出来ているのであるから、結果も自然と良くなるのである。


「はっ!」


「おぉ!」


「セイ!」


「ふん!」


母親と赤い髪のショートヘアの少女セイレス王女と綺麗な顔をした青年ロマネスの訓練は更にヒートアップしている様である。


「さぁ、ラストスパートだ!」


「はい!」


「今度はこちらも打ち込むから確り捌けよ!」


「はい!」


セイレス王女とロマネスの奏でる激しい武器と武器の音をバックミュージック代わりにティファール女王とミネルバの二人は、暫しお茶の時間を楽しむのであった。



◇◇◇◆◇◇◇



本が並び中央に大き目な机がある部屋の中をウロウロする男が居る。


「何か手は無いか?」


ぶつぶつ言いながら歩き回る男は親指の爪を噛み、髪の毛を激しく掻く。


「くそっ!このままでは・・・。」


男の目は充血しており眼の下にはクマが大きく出来ている。


「あぁ~!」


男が嬌声を上げそうになっていると、スッという音がした。ふと振り返るとそこには黒い服を身にまとい顔まで隠している者が立っていた。その様子を見た男は気を緩めたかと思うと急にニヤニヤしだした。


「そうだな。お前達が居ったわ。」


「その通りでございます。こんな時こそ貴方様のお役に立てるというものでしょう。」


「ふふふ。では任せても良いか?相手は幼子と言えどその周りにはあの有名なSS級冒険者≪W・B・S≫が居るが大丈夫か?」


少し心配になったのか男の顔からニヤニヤは消えている。それを見た顔を隠している者は深く頷く。


「闇に潜みし我らを捉える事など、例え高ランク冒険者には出来ますまい。」


自信を漲らせながら答える顔を隠している者を改めて見て男は安堵したのかまたニヤニヤした顔になる。


「お前達が一斉にかかれば容易いか?」


「我らは闇に潜みし者でございます。死も恐れぬ我らに勝てる者等居りますまい。」


「わかった。ではその方らに任せる。」


顔を隠した自称≪闇の者≫は恭しく頭を垂れた。


「お任せを。吉報をお待ちくだされ。」


それだけ言うとスッと音がしたかと思うと存在を感じられない。


「くっくっく。アイツらを忘れておるとは我ながら情けない。それでは待つとしようか。」


男の笑い声だけが響き渡る部屋。

そんな男の一部始終を見ていた者が居るとは、その男は想像できないであろう。


「ふふふ。愚かな男。」


夜の闇に静かに広がる女の笑い声。


「貴方も終わりね。」


呟きと共に女の気配は闇に消えたのである。






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