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145 女王の発表で。



翌日、女王の宣言が王国中を駆け巡る。


「セイレス王女の修行をあの噂のSS級冒険者パーティー≪(ホワイト)(ブラック)(シャイニング)≫にしてもらう事にする。」


驚愕の内容であった。そもそも冒険者の地位がある程度高い世界であるが、王族のしかも時期女王という立場の者が冒険者に師事するというのである。基本的には貴族や騎士や由緒ある家の者に師事するのが当たり前の世界である。前代未聞の事である。ただし、一般的な冒険者では無い二人(W・B・S)はSS級冒険者であり、世界に名の通った冒険者であるので信用度は計り知れない。それを公表されたという事はセイレス王女の護衛に世界でも有名な冒険者が付いたという事だ。つまり牽制に繋がるのである。


「くそっ!!」


と叫ぶのはセイレス王女を亡き者にしようとした者だけだ。貴族の反応を伺うという側面もあるのだ。

案の定、反対を強く表明した貴族が居た。それは、ビリトリア・スラング公爵だった。

スラング家は先々代の女王の兄弟で第一王子であった者の子孫にあたる家である。王族の血筋なのだ。


「どういう事なのです?!どこの馬の骨ともわからん者に、セイレス王女を師事させるのですか?」


凄い剣幕で怒鳴るかのような発言をするビリトリア公爵を一瞥して言い切るティファール女王。


「何か不都合があるだろうか?彼らはSS級冒険者であり世界でも有名な冒険者である。我がジェスター王国は古来より強者であるべき女王の姿であろう。それになる為に世界でも有名なSS級冒険者達に教えを乞うのが批判されるような事には思えんが?」


「しかし、・・・。」


「くどい!王である私が決めた事。何か文句があるのか?」


まだ抵抗する言葉を探していたビリトリア公爵を遮り、強硬手段で話を終わらせるティファール女王は怒気を現し魔力を高めて開放する。

いつもとは違う顔や態度も見てビリトリア公爵以下はビックリしている。それもそのはず、ティファール女王はそもそも魔術が得意な強者であり、温和な対応しかしていなかったのだ。淑女とはこう在るべきと考えて素を出していなかったのだ。それが、有無を言わさない為とは言え、怒気に魔力の高まりを見せつける行為、つまり【威圧】を放ったのだ。ビックリしない訳がない。


「す、すみません。出過ぎたマネを致しました。」


そう言って引き下がる以外にビリトリア公爵には手段が無かったのだ。



◇◇◇◆◇◇◇



「くそっ!」


持っていたグラスを投げつけてバリン!という音を立てながら悪態をつく男。


「どうしたのです?!」


走り駆け寄ってくる女を睨みつけ更に悪態をつく。


「うるさい!お前は黙っていろ!!」


容赦なく平手打ちを女に浴びせた男は酷い顔になっている。


「どいつもこいつも!!」


更に花瓶を投げつけて壊す男は荒んだ顔だ。


「女が出しゃばりやがって!!」


男尊女卑の典型的な発想だ。そもそも女だあろうと男であろうと関係ない。ひねくれた考えで自分に都合が悪くなると「女のくせに」と女の所為にする情けない男の発想である。しかし、それが分からないから人は自分に甘く、他人に厳しいのだ。人の業であるかも知れない。


「今に見ておれ!」


そう男が吠える中で先ほど平手打ちを喰らわされた女はニヤリと笑うのであった。その異様な光景を見ている者が居るとは知らずに。



◇◇◇◆◇◇◇



「これは酷いね。」


「でしょう?どうしようか?」


そう言ってミネルバとロマネスは腕を組みながら考え出す。


「どうも裏がありそうだね。情報を集めるしかないかな?」


「そうかもしれないけど、どうするの?」


「当分の間、セイレス王女の教育係はお願いしていいかな?」


「それは構わないけど・・・。」


「じゃあ決まり。俺は少し情報集めをおこなってくるよ。」


そう言うとロマネスはサッと居なくなる。


「もう。ジッとしてられないんだから。」


残されたミネルバは肩を落とし仕方がないというジェスチャーをしながら女王に会いに行く事を決めたのだった。



◇◇◇◆◇◇◇



ロマネスが向かった先は、依頼をかけてきた依頼主の使いの者が居る場所である王都ジュピター内にある宿屋である。受付には小さな女の子がおりその子に声をかけるかける。


「やぁ、久しぶり。」


「いらっしゃい。あれ?今日はお姉ちゃんは一緒じゃないの?」


「ああ、別行動中なんだ。」


「ふ~ん。で、今日は泊まるの?」


「いや、今日は食事だけなんだ。頼めるかな?」


「大丈夫。好きな席に座って。」


「ありがとう。」


好きな席にと言われたロマネスは早速店内のいつもの場所へと座った。適当に注文をしてエールをチビチビやっていると不意に後ろの席に人が座った。


「順調なようだな。」


「ああ。」


ぶっきらぼうに返事をするロマネスに対していら立つ様子も無く続ける。


「で、今日は何の用だ?」


「例の件絡みで情報が欲しいと思ってね。雇い主に会わせて貰えないかな?」


その言葉を聞いて一瞬だけ戸惑いがあった様子が伺えたが、何も無かった様に返す。


「主に聞いておこう。また明日ここで。」


そう言うと後ろに座っていた者の気配はフッと無くなった。


「まったく。態々面倒な対応をしないといけないのは本当に嫌だな。でもしないとミネルバがうるさいからなぁ~。」


ボソリと独り言を吐きながらエールを呑むロマネスであった。







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