143 W(ホワイト)・B(ブラック)・S(シャイニング)
ゆっくりとした歩調で動く一団が森の道を進んでいる。
その中の豪華な馬車が中心でありゴトゴト揺られる馬車を三頭の馬が引っ張り。その周りを馬に乗った騎士が張り付く様に並んで進んでいる。
「それで、二人はどのように知り合ったのじゃ?」
「いや、どうやってって・・・。」
目をキラキラさせて聞いて来る少女であるセイレス王女を前にしてロマネスはタジタジになり、その様子を見て笑っているミネルバである。
「なんじゃ、秘密なのか?」
「そういうわけじゃないよ?」
「なら、教えてくれてもいいであろう?」
流石子供という所であるが、容赦ない質問の嵐をロマネスだけが受けているのである。早々にミネルバは上手く躱してロマネスに押し付けたというだけだが・・・。それも仕方がない事ではある。何せ王女という立場なのだから外の世界に疎い。冒険者であるだけでも質問攻めにあってもおかしくないのに、目の前にいる冒険者は有名なSS級冒険者であり、見た目も美しい男性と美しい女性ときている。子供でありオマセナ少女にとっては好物以外の何物でもないのだ。
「教えるも何も・・・。」
ちらりと隣に座るミネルバに助けを求めるロマネスを完全に無視するミネルバ。
「俺達は元々幼馴染なんだよ。」
「なんと!?幼馴染であるのか?!」
本当に興味が有り過ぎるので、セイレス王女は過剰と言える反応を示してしまうのだ。その過剰な反応を受けて益々ロマネスは言葉に詰まるのだ。今は一緒の馬車の中に居るので逃げる事が出来ない。
「だから、俺は外で見張りをするって言ったんだ。」
ボソリとこぼすロマネスを見て笑うミネルバだったが、余りにも可哀そうになってきて助け船をだすミネルバ。
「そうなの。幼馴染で悪友なのよ。小さい時から一緒に冒険の真似事をして親によく叱られたわ。」
「二人も叱られておったのか?」
「そうなの。心配ばかりかけてしまったわ。」
「そんな二人でも心配されるものなのか?」
「そうよ。セイレス王女ならより心配されるわよね?」
「そうかもしれぬ。我もよく怒られるのじゃ。仲間じゃのぉ~。」
セイレス王女の言葉でロマネスもミネルバも噴出して笑ってしまう。
「そうそう。仲間ね。」
「確かに仲間だ。」
「そうであろう。そうであろう。」
小さい少女が両手を組んでうんうんと頷くのである。可愛くて笑顔になってしまうのは仕方がない事だろう。
「ところで、セイレス王女。少しの間私達と稽古致しませんか?」
「な、何と?SS級冒険者自らが稽古をつけてくれるのかえ?」
「そういう事です。いかがですか?」
「のほぉ~。それは大変ありがたい話なのじゃ!訓練がこんな有様だったから困っておったのじゃ。じゃが、母上が許すかのぉ~?」
「母上?ああ、ティファール姉・・・ティファール女王なら大丈夫だよ。あははは。」
何かまずい事を発しそうになって笑って誤魔化そうとするロマネスに対して怪訝な顔を見せるセイレス王女。
「ティファール姉?」
「それより、ティファール女王はどんな方なの?」
「母上はとても綺麗で優しく強い人なのじゃ。私の尊敬する人で憧れの人なのじゃ。私も母上の様な女王になるのじゃ。」
崇拝と言っても過言ではないレベルの返事が来てホッとするミネルバは何とか誤魔化せたと思ったようで、うんうん。と頷きながら聞いている。
「じゃが、本当に私に稽古をつけてくれるのか?」
「もちろんよ。嘘じゃないわ。」
「やったー!!」
馬車の中であるというのに飛び上がって喜びを表すセイレス王女を見たロマネスとミネルバはまた笑顔になったのである。
その後何事も無く王城へたどり着いた。道中はずっとセイレス王女が興味ある質問を二人に浴びせ続けたのは言うまでも無い。
「ようやく着いたのじゃ。早速母上に二人を紹介せねばならないのじゃ。急ぐのじゃ。」
到着して直ぐに馬車を飛び出すセイレス王女をロマネスとミネルバは微笑んで見送ったのである。
◇◇◇◆◇◇◇
「はい!」
「なんじゃ?」
話の途中でどうしても我慢が出来なくなって質問をする私。
「何故、そんなに容姿を誇張して話してるのでしょうか?」
「誇張などしておらん。若かりし頃のロマネス殿もミネルバ殿も綺麗だったのじゃ。今は当分お会いしておらんからわからんが、その面影があろう?」
「いや、祖父母の事ではなく・・・。」
「私は、可愛らしい少女であったのも事実じゃ。今でも可愛いじゃろ?」
「あ、はい。」
「そうじゃろう。そうじゃろう。」
うんうん。と頷くセイレス女王を見てこんな感じだったのかな?って思う。
だが、よく自分を可愛いと言い切れてしまうものだ。私にはマネは出来ない。
「でも母上。そんなにあっさりとドラゴンを倒してしまう冒険者は沢山いたのですか?」
「おるわけがないじゃろう。今も昔も一握りじゃ。」
まぁそうだろうな。ドラゴンは今も昔も強い魔物である事に変わりはないであろうから。
「じゃあ、ザバるんの祖父母様はとても強い冒険者であったのですね。」
「そうじゃな。SS級冒険者であったが、SSS級冒険者になっておっても変ではなかったの。」
「そこまで?」
「本当に強かったのじゃ。」
セイレス女王は言い切った。それほど強い二人であった事を私は初めて知った。




