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141 綺麗な顔をした男女



暖かな日差しが木々達に差し込み、動物たちが歌を歌う陽気な天気の森の中にある一本道を疾走する馬車が居る。


「ええい。もっと早く走らぬか!」


御者を務めている鎧を着た壮年の男は声を上げるが、ここまで無理をしながら走って来ていたのであろう馬たちは息が切れている様子だ。それでも何とか早く動こうとしている馬達の気持ちは痛いほどわかっているのであろう。男は声を上がらげるが、鞭は叩かない。


「くそ。私がついておりながらこの様とは。」


良く見ると、男の鎧はあちらこちらに大きな傷が出来ており、痛々しいほどに怪我も負っている様で、血が滲み出てきている。


「何故、あんな化け物がこんな時に出てくるんだ?」


男は誰にともなく叫ぶその顔は悲痛に歪んでいる。

男はいくら考えてもその理由が分からなかった。もちろんこの世界において絶対無いことでは無い。起こりえる事だと頭で理解しているのだが、だからといって心が追い付いてはいかない。


「せめて姫様だけでもお助けせねば。」


男はそう心に誓い強く思う。そして行動しているのだ。


「ギャオー!」


大きな鳴き声が聞こえる。森中に響き渡る声の方を見た男は絶望の色を顔に浮かべた。


「くそっ。もう突破されてしまったのか?あいつ等はどうなったんだ?」


そんなおり馬の一頭が限界を迎えてしまった様で、倒れてしまった。


「なっ!?」


男の乗った馬車が馬に連れられて倒れてしまう。

男は投げ出される格好で馬車の向こう側へと飛び落ちる。男は気絶してしまった。

そして馬車の荷台部分から、とても綺麗な少女がはい出てくる。一緒に居たであろうメイド服の女性も後を追う様に出てきた。


「王女様。一刻も早くこの場から逃げましょう。」


「だがしかし、爺やが倒れておのじゃ置いては行けぬ。」


メイド服を着た女は王女と呼ばれた少女を逃がそうとするのだが、頑として聞き入れなずに気絶している男へと駆け寄ろうとする。


「爺や、大丈夫か?」


それでも爺やと呼ばれた男は目を覚まさない。動く気配すらない。


「バサ!バサ!」


大きな羽の羽ばたく音が聞こえてくる。


「王女様!」


メイド服の女性が大声で呼びかけるのを聞いた王女よ呼ばれた少女はメイド服の女性の方へ顔を向けて驚愕の顔になる。


「王女様、早くお逃げください!」


メイド服の女性のその向こうにはドラゴンが口を開いて飛んでいた。その口には炎が集まっている。


「くっ。」


【死】を覚悟し王女と呼ばれた少女は眼を瞑る。『ああ、こんな事ならもっと母様に甘えておけばよかった。』そう思いながら最後の時を迎えようとしていた。


「どゴン!」


「ギャオーン!!」


しかしいつまで経っても炎に包まれる様子がない為、王女と呼ばれた少女は眼を恐る恐る眼を開けるとそこには一定の場所から炎が避ける様に両サイドへ流れている様子だった。


「何?これ?」


そこ景色をその少女は綺麗だと思った。メイド姿の女性より向こうから広がっており炎が上と左右に分かれて流れている様な感じだ。炎の川と言えるのかもしれない。


「綺麗。」


「そうだろう?」


急に澄んだ声がしてビクリとして声のした方を向くとそこには白い鎧を纏い剣を肩に乗せた美青年が立っていた。


「ビックリさせちゃったかな?」


「急に声をかけられたらビックリするに決まってるわ。」


驚く事にもう一人居た。綺麗な声の持ち主で綺麗な顔立ちをした美しい顔立ちの黒いローブ姿の女性がそこに居た。二人共にスラッとしたその姿で笑い合っている。絵になる様子とはこの事であろう。


「お嬢ちゃん。もう安心していいわ。」


「ええ?」


優しい笑みを向けて少女に言う。


「ちゃっちゃと倒しに行く。」


「めんどくさいなぁ。魔法で一発だろ?」


「うるさい!ぼーっとしてないで早く動く!」


急かされて美青年は動く。次瞬間にはそこには居ない。


「えっ?」


「お兄さんはあそこよ。」


綺麗な女性が指さす先には魔物の真ん前に立っている美青年の姿があった。気が付くと周りの炎は消えていた。


「危ない!」


「彼なら大丈夫よ。」


すると魔物の腕が青年を襲うのだが、当たらない。空振りを繰り返す魔物の動き。


「あっ。アイツはまた手を抜いてる。」


綺麗な女性は愚痴るように言うのだが、その真意がわからない少女は只々驚くのだった。


「早く倒しなさいよ!魔力の無駄でしょうが!!」


女性の声が聞こえたのか青年は右手を上げるとまたその場から消えた。消えた瞬間魔物の頭が胴体から切り離されて地面に転がる。


「嘘でしょ?ドラゴンが一撃で??」


メイド服の女性は驚きを隠せない顔で誰に話しかけるでもなく言葉を発した。

そしてドラゴンが死んでいる事を確認してから、青年はこちらへと近づいて来る。


「すっぱりと倒しちゃいなさいよ!」


「ごめんごめん。いくら狂ってしまっているとは言えドラゴンだからさ。説得できないかと思ってね。」


「それは分るけど、ああなってしまったら無理でしょ?」


美しい女性の追求に苦笑いで答える美青年。


「それより、怪我は無かったかい?」


その青年から声をかけられた少女は漸く落ち着いて我に返るのであった。






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