137 村を改造する
先ずは、村の入り口近くにある小屋を選び、地下を魔法で形成する。地下5階として、一番下に今回捕まえた盗賊たちを連れて行き牢屋とした。地下四階は練習場。地下三階と地下二階に居住スペースを確保し地下一階は大きい部屋としてそのまま空けてある。兵が500人は収容できるスペースがある。勿論、その500人が住める居住スペースが地下二階と地下三階なのだ。地下二階には亜空間部屋を繋げたゲートも設置した。また、小屋の内装も綺麗に整えてあり、普通に見た感じではあの地下空間があるとは思えないこじんまりした造りにしてある。ざっと小一時間ぐらいで完成した。
「まぁ、こんなもんだろ?」
皆がちょっと引いている感じがするが、そこはスルーして捕まえた盗賊達を地下五階の牢屋にぶち込む。
そしてゲートを使い保護した者達をすぐに王都テーストにある私の屋敷に送る。そちらはアイリーン任せた。
「なるべく外の風景は見えない様にしてくれ。」
「わかりました。」
次に村人に扮する者達を連れて行く。50人の人族の男を選抜し村に配備。準備が整った所で、王女一行をレストエア辺境伯の領都ロブソンへ向かわせる。私はゲートが使える事もあり、村の整備を少しでもするべく村のいたる所に監視カメラを設置し、村の周囲の壁も魔法を使って土壁のような外見の鉄壁を用意して魔物の侵入が出来ない様にして安全を確保する。
「こんなもんかな?」
「ありがとうございます。」
「トーマス。ここは頼んだよ。ミーリアとアリソンも連絡係として小屋の方にいるからね。」
「はい。」
これで村の方の準備は完了だ。後は向こうから来るのを待てば良いが待つのも大変だ。私は村を後にして一度屋敷へ戻る。戻る途中にシーリスへと連絡をして王女に準備が整った事を伝えてもらう。
「ただいま。避難させた者達はどうだい?」
「落ち着いていますよ。精神的にやられている者も居ますので、ゆっくりと休ませる様にしています。」
どうしても、この様な時には力のない子供たちは犠牲者になってしまうのがとても悔しい。≪神の使徒≫なんて大層な物を持っていても、全てを助ける事なんか出来ない。それが歯がゆい。
≪それは仕方がない事です。一人で出来る事は限られています。例え、突出した力を持っていても一つの個体で出来る事には限界がありますから。≫
それは解っている、解っているからこそ悔しい。傲慢な考え方なのかもしれないが、こればかりは常に考えてしまうし、この様な時に自分の無力さを感じさせられてしまう。だからせめて自分の目の前にある事には全力を持って応えよう。
「美味しい物を沢山食べさせてやって、ゆっくり休ませてやってくれ。」
「わかりました。」
こんな事を指示しなくてもやってくれるであろうが、アイリーンに言ってしまう私はまだまだ未熟なのだろう。
◇◇◇◆◇◇◇
真っ白い壁。真っ白い床。真っ白い天井。全てを白で統一された空間にベットが置いてある。そのベットすらも白い。その白いベットの上には女が横になっている。死んでいないとわかるのはあくまでも息をしているであろう胸の動きでわかる程度。深い眠りについているようである。
ふと、音も無く部屋の扉が開くとそこには15歳ぐらいの男の子が立っている。そしてその白銀の髪をしたイケメンは部屋へと入り、女が横になっているベットの横へと移動する。
「問題は無いかな?」
ベットに眠る女の顔を見て確認している様子であるのだが、心配している様子では無い。
「じゃあやるか。」
ボソリと独り言をつぶやく男の子の周りに魔力?神力?の爆発的な増大が始まり直ぐに力場が発生するとベットに横になっている女の瞼が動き出す。間もなく女の瞼は開き驚愕した顔を覗かせる。
「アタイは死んだはず?!」
そして女は傍に男の子がいる事に気づき警戒心を顕わにする。
「お前は・・・。」
「ああそうだよ。貴女が思う通りだよ。」
「嘘だ?首が斬れたはずなのに。」
「確かに切れていたよ。」
「ではここは死後の世界なのかい?」
女の質問に丁寧に答える男の子が首を振る。
「いや。死後の世界では無いよ。あくまでも現世だ。」
「どういう事だい?」
女は理解が出来ないという様に首を強く振りながら益々混乱した様子を見せる。
「簡単だ。お前は一度死にかけたが私によって延命されたという事だ。」
「?」
「証拠に首に傷が残っているだろう?」
「えっ?」
女は男の子に言われて首をさする。
「やっぱり死んでいるんじゃないのか?」
女は首を斬られた瞬間を思い出したのか首の傷をさする。
「そうだな。死んだのだろう。死んだのだから、人生をやり直さないか?」
男の子の提案に女は眼を瞑る。
数分の間、沈黙が白い空間を支配する。ふと女は眼を開ける。
「人生のやり直しなんて出来るのかい?」
男の子は自信満々に女に告げる。
「人生のやり直しは何時でも出来るよ。それに貴女は『死』を体験した人なのですよ?出来ないと思いますか?」
女は大きく眼を開き頷いた。
「それもそうさね。やってみるよ。」
男の子は嬉しそうに頷いた。
「では、早速貴方がしてしまった事に対する償いをしてもらいましょう。」
「厳しい子だね。でもそうだね。」
「では、・・・。」
男の子は女に説明を開始した。




