135 圧倒的実力差
結果から言う。全員に『威圧』をあてたら、一人残らず気絶した。戦うまでも無かったのだ。競う大会であれば『威圧』なんてしないのだが、このような緊急時と思える時は気にならない。一人残らず全員を一か所に集める。そして転移の魔法を使い私の馬車へと戻る。
「シーリス。手はず通りに村へ向かう様にと王女に伝えてくれ。商人風の男たちの周りにはユカ達をつけろ。警戒しながら動けと伝えてくれ。後、ロバートとアリソンをここに連れて来てくれ。」
「わかりました。」
直ぐに馬車から出たシーリスに代わりロバートとアリソンが顔を見せる。
「ロバート、アリソン。私と一緒に村へ向かうぞ。向こうで見張りをしてくれ。」
「「はい。」」
二人を私の体に触れさせて転移する。およそこの転移は人数が増えると増える分だけ魔力を消費する。だから多用せず、ゲートを利用しているのだが、今回はゲートの無い村だから仕方がない。
「では、ここは二人に任せる。」
「わかりました。」
目の前に縄で結ばれ気絶をした約90名の者達を見た二人は一瞬顔が強張った。
「ああ、ザバルティ様の強さが既に恐ろしいレベルに来てるんだな。」
「凄すぎだよねぇ~。」
だが、直ぐに納得した様子だ。気絶しているメンバーの能力を見たのかもしれない。最近、私以外の従者の能力もドンドン上昇し、スキルも色々と獲得しているようだ。どれもこれもカミコちゃんと繋がりを得てからだが、今度確認しておいた方が良いかな?
≪お聞きくだされば直ぐにお答えできます。全て把握しております。≫
カミコちゃんは何でもお見通しのようだ。
私は二人に見張りを任せて村の奥へと向かい一番大きな建物を見つけ中に入る。そこには無人となっているが、この地下にかなりの人数が居る事が分かっているので、地下へと繋がる階段を探す。とはいえこの下に繋がる階段の場所は分かっているので、その場所の床を調べて殴りつける。「どかっん!」という音と共に床は崩れて階段が現れる。罠がないかを確認し罠を見つけたので魔法で解除してから階段を降りる。
降りきった先に扉がありその扉の鍵を魔法で解除し中に入ると部屋の向こう半分は鉄格子が嵌められており人が多数居た。しかし子供と若い女ばかりだ。
「ひぃい。助けてください!」
私を見た人々はただ怯えて助命を乞う。皆震えている。
「大丈夫だ。エリザネス第一王女の命により皆を助けに来たものだ。もう直ぐ、王女もこの村へ来る。心配するな。今、この格子をはずして外に出してあげるよ。」
「「ほ、本当ですか??」」
「ああ、本当だ。」
鉄の格子を力任せにぶっ壊す。
「「す、すご!!」」
「さぁ、出ておいで。」
少し恐怖に感じている様子が見える囚われていた人々。が、子供たちは逆に食いついてくる。
「さぁ、行こう。」
全員が格子から出たのを確認して私が先導して建物を出る。
そして他の建物にも連れて回り若い女性達を10人位を助けて回った。慰み物にされていたのであろう。鉄球みたいな物がついた鎖がつけらた女性ばかりだった。
「もう、大丈夫だ。」
鎖を断ち切り、皆を村の入り口へと連れて行くとそこには気絶している者達がおり、助けた者達は恐怖の顔になり引き攣る。
「心配するな。全て捉えている。後10名ぐらいがまだいるが、もう直ぐここに来るよ。」
皆は沈黙し頷くだけだ。
「ザバルティ様。別々の方が良いかも?」
アリソンの言葉に頷き、土魔法で気絶している者達を城壁の様な物で囲う。入り口となる所だけ空けておく。
「かっけぇ!」
「すご!」
子供たちが目を見開いて驚いている。そして若い女性達もビックリした表情になる。
「皆お腹が空いていないか?」
「「「空いてます!!」」」
子供を筆頭に全員が返事をするので、無限収納から人数分の机と椅子を用意して皆を座らせ、シチューの入った鍋とパンを出して人数分用意する。
「どうぞ、食べて。」
「すげぇ、旨そう。」
「やべぇ~。」
「具が一杯!?」
初めは戸惑いなどを見せていたが、直ぐにがっつき出した。
「美味しいか?」
「「「美味い!!」」」
「お替りもあるから遠慮なく食べてくれ。」
改めてドンっと鍋とパンの入ったバケットを真ん中に置いて、促す。
「「「兄ちゃんありがとう!!」」」
感謝をしながら、皆は元気よく食べ続ける姿を見ていると、ロバートが近づいてくる。
「ザバルティ様。もう直ぐ到着するようです。」
無言で頷き、村の外へ迎えに出る。すると、一団が近づいて来るのが分かる。トーマスが先頭にいるのが見えたので、合図を送る。トーマスがその合図を確認したようで動きが出る。それから少しして一団がこちらまで来た。
「ザバルティ様。手はず通り完了しました。」
「了解。お疲れ様。」
トーマスの言葉を受けて私は戸惑いを見せている王女の護衛に向けて説明をマリリン第三王女に頼むとエリザネス第一王女を呼び出し、一緒に村に入ってもらう。現状を確認させ、囚われの身の者達の所へ向かう。
「大丈夫か?」
「「「エリザネス第一王女!!」」」
エリザネス第一王女を見た囚われていた者達は安堵の為か泣き出した。
「父や母が殺されました。」
「爺ちゃんが殺されたよ。」
口々に報告する囚われの者達を見て改めて怒りが沸いた。




