134 避難者と遭遇した王女一行
目の前でようやく馬車は停止した。
「どうしたんだ?」
「魔物がこの先の村で暴れているんだ。私は命からがら家族と共に逃げてきた。どうか村の者を助けに行ってやってくれないか?」
馬車を操縦していた男は私の質問にそう答えた。
「家族は?中か?何人居る?」
「妻が一人と子供が二人。父と母と弟夫婦が居る。」
私の質問に答える男は商人の様な恰好をしていた。トーマスに商人を見張るように指示を出し、私は馬車の中を確認する。確かに商人風の男が言った通りの様子の者達が馬車の中に居る。
「確認した。少しここで待て。」
「わかりました。」
商人風の男は素直に聞き入れ待つ様子を見せる。私は王女の元へ行き商人風の男が話した内容をそのまま伝える。
「では、護衛を二隊に分けて村への援軍としよう、後、二人ほどこの先のレストエア辺境伯とピスタチン辺境伯にも救援要請をだそう。」
すぐにエリザネス第一王女は判断を下し指示を出すのを私は待ったをかけた。
エリザネス第一王女とマリリン第三王女だけに聞こえる声で話をする。
「村への援軍は私が一人で行きます。この事態は怪しすぎます。」
「しかし、それではザバるんが心配だ。」
「私一人の方が動きやすい時もありますよ。ただ、あの商人風の男を黙らせるのに私の隊を全員動かします。ここにアリソンとロバートとミーリアを王女の護衛に置いておきます。後、私の隊の者も直ぐにひき返させます。いざという時の為に馬車の亜空間に待機させておく兵も200人位用意しておきますので、ご安心を。」
王女二人が頷くのを確認してロバート、ミーリア、アリソン、シーリス、ユカを呼び手はずを話す。
ロバート、ミーリア、アリソンは王女の側に。シーリスは馬車の入り口で待機。ユカは私設兵団を指揮させる。王女二人には商人風の男たちの監視と受け入れをお願いする。
「わかった。ではザバるん気をつけて。」
「ザバるん、ケガをしない様に注意してね。」
「わかってる。大丈夫だよ。」
王女二人に見送られながら私達は手はず通りに動く。トーマスは私とユカと一緒に援軍という形で一緒に動く。半刻先のポイントで私はトーマスとユカに戻るように指示を出す。
「十分に気をつけて帰ってくれ。たぶん襲われる事は無いと思う。ここから野営地までの間にある敵のマークのあるのは魔物の気配とあの商人風の者達だけだ。」
「わかりました。お気をつけて。」
私は馬を走らせ村へ向かう。途中に魔物とかいるがスルーした。急いでいる風を装うためだ。そうあの商人風の男たちは全て敵を示すマーカーがついていたのだが、証拠となる物がないので、警戒をしながらの受け入れなのだ。それにおかしいと思わせる点はいくつかあった。先ず、商人風の男や馬車の中の者達に汚れが見えなかった事。村が襲われて家族が全員逃げれている事。それだけでも十分おかしいのだが、更に、荷物に見せている所に5人程隠れている事も分かっている。あちこちに剣も隠してあるのを確認できている。これは≪神の使徒≫の力による所が大きいのだ。
「さて、そろそろ村が見えてくるぞ。」
≪向こうは迎撃の準備が出来ている様子ですが、もう既に見張りと思わしき者共があちらこちらに居ます。≫
カミコちゃんに注意を促されたが、私も確認出来ている。さて、今回はどのようにするかな?相手はおよそ100名ぐらいの様だ。盗賊にしてはそこそこの規模だ。先ずは見張りから潰していくか?
馬から飛び降りて飛翔して見張りらしき者達の所へ常人では見る事の出来ない速さで移動して一人一人を気絶させて縄で縛っていく。敵が「えっ?」って驚くと同時にドカって感じで気絶させていく。約10名ぐらいいた。そして馬に戻り村へと向かう。少し行く村の入り口に大勢の人が武器を片手に待っていた。
「おうおう。騎士様がようやくお越しだぜ。」
「罠とも知らずにのこのこやってきてるじゃん。」
「つうか、一人?しかいないな。」
どよめきと嘲笑が混ざった感じで私を迎え入れようとしている。聞こえていないと思っているようだ。馬を降りてそこに居る者達の前に私が立つと、奥からボスらしい女が出てきた。
「よう、騎士様。お待ちしておりましたよ。」
ニヤニヤしながらこちらへ話しかけてくる。あえて無言で返す。
「おやおや、もしかしてびびっちゃったかなぁ?大人しく命乞いでもするかい?」
「がははは、そりゃ見ものだな。」
「早く、命乞いした方が良いんじゃないか?」
ボスの揶揄いに乗って他の者も揶揄ってくるが、それも無視して黙っている。
「おいおい。だんまりかよ?」
「来ているのも脱いで、全て持ってこっちへ来いよ?」
まだ、揶揄おうとしてくる。私は黙っているがどのように対処するかを悩んでいた。
なぜなら、相手を見ると私にとっては雑魚過ぎる相手だからだ。
一人 VS 80人
人数では圧倒的な相手だが、私に匹敵するような実力者を見る事がないからだ。
正直言うとまともに相手をしなくても『威圧』を使うだけで気絶しそうな相手なのだ。
「はぁ、今日はついてないな。」
私は独り言を呟き剣を抜いた。




