131 ジェスター王国への旅路 その2
今回の旅の行程にはいくつかの貴族の領都に行く形をとっている。中でもジェスター王国とアスワン王国の国境の領都には寄る必要がどうして出てくる。貴族社会とは面倒だと感じる瞬間だ。
「エリザネス王女そしてマリリン第三王女。本日はようこそお越しくださいました。このピスタチン・バルッツエ筆頭に皆大歓迎いたしております。先ずはお部屋へとご案内させて頂きます。こちらへどうぞ。」
今、私達エリザネス王女御一行はアスワン王国ピスタチン辺境伯の領都ペリオスに来ている。大げさとも思える程の歓迎ぶりで領都中の人が集まっているのではと思う程の人が門から領主館までの間の道にズラリと道を挟んで並んでいた。領主命令が出ていたようだが、それでもやはり壮観だ。
「出迎えご苦労。いつもすまんな。」
「本当にご苦労様です。」
ニコニコ笑顔で二人の王女がピスタチン辺境伯へ返答する姿を見て、ピスタチン辺境伯も満面の笑みだ。王女二人の後ろに立つ私に所々で鋭い視線を送って来る以外は100点満点の迎え方であろう。そんな反応を示しつつ歓迎会の終了まで私を無視する形で進行した。若輩者である私は失礼のない様に心掛けて挨拶も自分からしに行っているのに全て無視する形でスルーされた。もしかして挨拶をする行為自体も問題なのだろうか?流石にそこまで、無視する形をとられていると二人の王女も気が付くが、私が気にしない様に伝えてあるので、二人の王女も機嫌を悪くするだけで収まっているのだが。
「王女様方。そこに居る若造が追う二人の婚約者になったとか?どういう事ですか?たかだが下級貴族家の嫡男如きにお二人を満足させる事等出来ないのではと思うのですが?どこが良いのですか?」
「「全てよ。」」
「なっ?」
ピスタチオ辺境伯の突然の不躾な質問に対して二人の王女の息の合った返答に、流石にピスタチオ辺境伯もたじろぐが、直ぐに気を取り直したのか私を堂々と睨めつける。
「こっこんな若造の何が良いのです!!
「顔良し、頭良し、腕良し、性格良し、完璧です。」
「何か勘違いしていると思うが、彼が私達に嫁に来いと言ったのではない、私達が行くと言ったのだ。」
「お二人は騙されているのです。王のそうです。皆、こいつに騙されているのです!!」
私を指でさしのたまうピスタチオ辺境伯。
「ほう。そこまで卿がおっしゃるのであれば、何か確証を持っておっしゃっているのであろうな?」
青筋を立てて返答するエリザネス第一王女。ただ、黙って怖い笑いを浮かべているマリリン第三王女。
「確証?そんなの簡単です。私がこやつを叩きのめしてやります。あなた方の前で!くそ若造が!決闘だ!!」
ピシッと私を指さして言い放つピスタチオ辺境伯。
「はぁ~。では・・・。」
「お待ちください!」
仕方が無く対応しようと考えた私の返答を遮る形で、ミーリアが声を上げた。
「その決闘は私がお相手しましょう!」
「お前では無い!そこの若造だ!!」
「黙れ、私のご主人様を侮辱した報いは必ず私が晴らす!!」
ビクリとしたのは言うまでもないがマリリン第三王女だ。その肩はガタガタ揺れている。何人かの王女の護衛達も引き攣った顔になっている。
「よろしいですよね?マリリン第三王女??」
「勿論です!是非とも、ミーリア様がお相手をしてやってくださいませ!!」
マリリン第三王女が変な言葉を使って答える。そして何事かをエリザネス第一王女に話したのか、エリザネス第一王女の顔色が変わり頷く。
「では、我がエリザネス第一王女の名において、ピスタチオ辺境伯とザバルティ殿の従者ミーリアとの決闘を認める!!」
「「「「なっ!?」」」」
全員絶句のこの状況。当事者の私をのけ者にして話が決定してしまうのは何故なのか?
すぐさま、屋敷の中庭に決闘の場を設置してしまう王女二人。手際が良すぎる。
「さっ、ミーリア殿とピスタチオ辺境伯はこちらへ。」
「わ、私は承諾しておりませんぞ!!」
有無を言わさない感じでドンドンと進める。無理やりにピスタチオ辺境伯の腕をとり決闘の場へ連れ出す二人の王女。ミーリアは不敵に笑ってもう既にスタンバイ中。私は一人取り残されている始末。
「これはどういう事だ???」
私は考えが追い付かない?不思議な現象だ。≪神の使徒≫である私が考えが追い付かないなど・・・。
≪すべては神の御心のままに。≫
???どういう事だ???カミコちゃんまでまともな回答をしてくれなくなる。
「私は、彼奴と決闘するのだ。お前みたいな女が相手になるわけがない!」
「私にも勝てない者が×××いやザバルティ様に勝てるハズがないだろう?」
×××?あれ?何故かそこだけ理解できない??どうしてだ???
疑問符ばかりが私の頭を回る。それにミーリアが幾分か神々しく見えるのは私だけなのだろうか?
ステータス表示も何故かおかしくなっている。段々と眼に霞がかかってくるような感じになり、私の視力が失われてくる。回復魔法をかけても治らない。なのに危険だとはカミコちゃんも言わないし、私も懐かしい気がしている。どういう事だ?と思っていると気を失ってしまった。




