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130 チャンプリンとオードリーン



「チャンプリンさん。私と契約しませんか?」


「はて?何の契約でしょう?」


「奴隷専売契約です。貴方が手に入れた奴隷を私に全て回してください。ただし、普通の健全者は私は必要としていない。欠損者や病に侵された者達だけで良いのです。貴方が仕方が無く引き取ってきた欠損者や病持ちの奴隷を全て私に回してください。」


「少しお待ちを。そんなに通常使い出来ない奴隷を買いこんで貴方は何を成さるのか?」


少し険しい顔で私の真意を確かめようとみてくるチャンプリンさん。確かにこれだけではわからないよね。


「少し、込み入った理由があるのですが、う~ん・・・私を信用しろと言っても難しいですよね?」


「申し訳ありません。貴族様である事と強い方である以外に私は貴方を知りませんので・・・。」


少し困った顔になるチャンプリンさん。


「そうですよね。では、賭けをしませんか?このフロアに居る者達を完全に治せたら?私の奴隷になってください。ただし治せなけば、私が貴方の奴隷になりましょう。」


「えぇ?治す?完全にですと?!」


「そうです。完全に治すのです。」


「欠損者も居るし、不治の病と診断された者も居るんですよ?」


あり得ないという顔を見せるチャンプリンさん。深く考えだし少し経ってから覚悟を決めた顔になる。


「良いでしょう。治せるのなら奴隷にでも何にでもなりましょう。ただし条件があります。」


「何でしょうか?」


「治せなければ貴方が奴隷になる以外に、ここに居る者達を全て10倍の値段で買い取ってもらいます。そして最後まで面倒をみてやってください。」


「賭け成立ですね。」


頷くチャンプリンさん。


「ではこのフロアにいる全ての奴隷達を一か所に集めてください。後、チャンプリンさん以外の従業員はその場所から出してください。中には奴隷と私とチャンプリンさんだけです。」


「わかりました。」


直ぐに部屋を準備させ欠損者や病気持ちの奴隷だけを集めた。中には自分で動けず、寝たきりの者も居る。部屋の外には私の仲間が見張っている。巡業員は通常業務に行かせている感じだ。


「では、始めます。」


合計で27人も居る欠損や病気持ちの奴隷を前にして私は進み出る。固唾をのんで見守るチャンプリンさん。いつも通り≪神の使徒≫の力を開放し魔力を込めて手をかざす。強い光が辺りを包み視界は真っ白になる。


「眩しい。」

「神々しい光だ。」


呟きが部屋を駆け巡って少し経ち、光が収まる。


「う、嘘だ?」

「信じられん!!」

「おぉ、神よ!!」


あちらこちらから、嬉し泣きの声と感謝の声が聞こえる部屋に変わったのだった。


「貴方は神か?」


チャンプリンはそう呟いてた。


「チャンプリンさん。貴方の奥様も治してありますので、様子を見に行ってあげてください。」


「えっ?はい!」


ダッとチャンプリンさんは駆け足で部屋を出て行った。



◇◇◇◆◇◇◇



結論から言おう。奴隷は完璧に治った。勿論心の傷は分からない。しかし外傷や病気は全て治った。そしていつもの如く、一人も漏らす事なく皆が私の信者となった。チャンプリンも例外ではない。ただ、チャンプリンを奴隷にはしていない。協力者となってもらったのだ。今後は欠損や病気を持った奴隷は専売として私に売ってくれ事になった。従業員をどうするのか?って問題が出てきたので、チャンプリンさんが信頼できる者なら構わない事と今後はここでは回復させない事を取り決めた。その上でこの商館にゲートを繋ぐ事にした。


「妻まで治して頂けるとは、何と言って良いか・・・ありがとうございます。」


たぶん先ほど迄泣いていたのだろう、目がかなり充血している。知らない人が見たら暴走している悪人

顔だ。『鬼の目にも涙。』ふとそんな言葉が頭を過った。チャンプリンの奥様は行商時代に一緒に働いていた際に魔物に襲われて足を欠損していた。欠損や病気を持った奴隷に対してこの世界では異常な対応をしていたのはそれが理由だった。それでも商売品であり人権が奴隷には無いこの世界でのチャンプリンさんの行為には前世日本人の私には十分共感できる。偽善的に映ったとしても、今この人が出来る最大限をしていたのだからやはり凄い事だ。この世界の常識では考えられない行為であるのだから。


「本当にありがとうございます。」


チャンプリンさん奥さんのオードリーンさんはとても綺麗な女性であり、初めて紹介された時はビックリした。閻魔大王みたいな恐ろしい顔をしている旦那さんをみてこの綺麗な奥さんをみると本当に『美女と野獣』の世界があるのだと改めて思う。年齢は軽く40を越えているらしいのだが、見た目は20代中間。別に種族がエルフとかっていう訳では無い。人族なのだから、いわゆる『美魔女』ではなかろうか?何か秘密の魔法や薬を使っているのかな?


「では、これから頼みますね。」


「勿論です!ですが本当にこんなにお金を頂いて良いのですか?妻まで治して頂いているのに、治療費の方が高くついてしまうのでは?」


「いいえ。それは違います。私は貴方の行為に感銘したから今回はこのような処置をとらせて頂いただけです。それに、チャンプリンさんは本当の悪行をおこなって欠損したり病気をした奴隷は扱っておられないのでしょう?だから今回は特別です。あくまでも貴方の善意の行為に対する私の勝手な行動ですから気になさらず。」


「わかりました。このご恩は一生かけて報いらせてもらいます。」


「約束だけはお願いしますね。まだこの事を公表するつもりが無いので。」


「もちろんです。これから宜しくお願い致します。」


チャンプリンさんとオードリーンさんは二人揃って見送ってくれた。




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