13 横断幕
帰り道は真っ直ぐに戻った。街に戻って従者の三人組は冒険者ギルドに回収品を持って行った。
私とお爺様とお婆様の三人は武具を持って先に父上と母上が待つ屋敷へと戻った。
そして両親に話があると両親と祖父母と私の五人で一つの部屋に入り話をした。 その間、父と母は一言も言わず聞いてくれた。私の話を聞き終わり神妙な面持ちになって、父上と母上は私の傍に来るなり抱きしめてきた。
「このバカ息子が!そんな事で私達が変な扱いをする訳がなかろう!!」
「そうですよザバルティ。もっと早くに言ってくれれば良かったのに・・・。苦しかったでしょう。」
両親の言葉に胸が熱くなる。ここでもやはり泣いてしまった。転生して精神年齢は高齢だが、転生後の人生における両親の温かさを改めて痛感させられた事で心の底からこの両親の元に産まれてきて良かったと思った。
「いくらでも泣くと良いのじゃ。」
「ザバルティや。私達がついています。」
祖父母の二人にも優しい言葉をかけられる。私は幸運なのだろう。こんな素敵な家族に囲まれて育ててもらっているのだから。ようやく両親に話が出来た事でホッとした。両親も祖父母も色々と協力をしてくれる事になった。
また、皆の勧めもありポワロ叔父さんにリーファさんとジューネ等に、話をする事になった。もちろん三人の私の従者にも話をした。三人は「あ~なるほど。」って感じの反応だった。身近にいてこれでもかって位の異常を目の当たりにしてきたのであまり驚く事は無かったらしい。
「どういう理由にしても私達にとっては変わりません。」
「ザバルティ様はザバルティ様。」
「神の使徒って凄いじゃん!?」
呑気な感想まで言われる始末。ただし、口外は禁止である。下手に≪神の使徒≫って事が知れ渡ると色々と面倒な事が起こりうると想像できるから。アリソンは守れるのだろうか?不安だ。ロバートも迂闊に話してしまうのではないか?
「これは重大な秘密だからね。」
「もちろん。わかっておりますよ。なぁ?」
「重大、重大。」
心配しすぎてもダメだ。信用しよう。
「父上と母上に報告しなきゃ。」
「それダメだからな?記憶を消すよ?」
「こわぁ~。冗談だよジョウダン。やだなぁ~。」
うん。これは怪しい。怪しすぎる。
って、疑ってばかりでも仕方ない。トーマスに監視してもらおう。
「今までと同じ様に付き合ってくれれば良いから。」
「「「了解!」」」
◇◇◇◆◇◇◇
「ねぇねぇ。ザバルティ様の秘密がわかっちゃったね~。」
「アリソン。声が大きい。」
「ローちゃんは心配し過ぎだよ~。」
「またお前は俺の事を勝手にローちゃんって呼ぶ。」
「だって、ローちゃんはローちゃんじゃん?」
「二人とも止めないか。アリソンはもっと真面目に考えろ。なぜザバルティ様が我らに秘密を打ち明けてくれたのか?を考えろ。」
「でも~。」
「良いか。そもそも私達に教えなくても良かったんだぞ。」
「確かにそうだな。」
「では何故、我らに教えてくれたのか?ロバートはもうわかったな?」
「ああ。我らを信頼してくれたという事。」
「一つはそうだ。もう一つは何かしら起こった時に協力して欲しい。本当の仲間として居て欲しいと思われたのではないか?と思う。」
「どういう事?」
「我らに期待をしてくれているという事だ。親が決めた事だが、我らに心を許し。本当の意味での仲間として協力して欲しいという事であろう。」
「おぉ~。つまり親友って事だよね~?」
「そうだな。親友だな。」
「はぁ~。お前たちは軽いなぁ。」
「トーちゃんが重過ぎるんだよぉ~。」
「は?トーちゃん扱い。いやいやそこじゃない。重いって・・・」
「まぁ、トーマス。気にするな。」
「なんかムカつく。その顔。ロバートにまで舐められるとは。」
「まぁまぁ。トーちゃん元気だして。ローちゃんも馬鹿にした顔しない。」
「「なんで、お前にそんな事を言われるんだ?お前のせいだろ!!」」
お姉さんぶったアリソンに二人の反論は息ピッタリだった。
◇◇◇◆◇◇◇
「では、行ってまいります。」
「気をつけるのですよ。いってらっしゃい。」
「「「「はい。」」」」
私達四人は全ての家族に見送られた。領都を出るまでは、領民から見送られるという恥ずかしい状況だった。横断幕が作られており「ザバルティ様御一行の旅立ち!」て書いある。
「これってさ。テストに落ちました。なんて言える状況じゃないよね。」
「そ、そうですね。」
手に汗握り。背中につつっと流れる冷や汗。戦闘でもないのにプレッシャーを感じるザバルティ一行。
マカロッサ家の馬車に乗ってマカロッサ子爵領から王都へ向かったのである。




