125 ヨコダテの街から その7
「これは、やり過ぎだろ?」
「そうなのか?やり過ぎなのか?」
「地上だけでも十分やり過ぎですよ?」
ラムザとアイゼンさんは二人揃って『やり過ぎ』とおっしゃる。
「でもワクワクしない?」
「そりゃあ、するけどこれに見合う金は用意できそうにないぜ?」
「褒章は期待してないよ。私の気持ちさ。」
ほっと安堵の顔を見せるアイゼンさん。これではいったいいくらの金が必要かわからないという思いが出たのは仕方がないだろう。
「でも本当にこの場所を頂いて良いのですか?」
「勿論です。ただ、私の拠点となる場所を頂きたいとは思っていますが、それ以外は全て譲渡しますよ。」
「ありがとうございます。」
アイゼンさんは信じられないという思いがあったのだろうが、私の言葉を聞いて安心し感謝を伝えてきた。
「この場所で生活し生きていく事も可能です。それに脱出場所も用意しています。ここより南西に100キロ先にある森の中の小屋に繋がる道も用意しました。ああ、これ渡しておきます。」
ミサンガタイプの魔法アイテムを渡した。これを装着していると脱出場所につながる避難経路のトラップが発動しないという物だ。
「これは?」
「魔法のアイテムで、避難経路に設置したトラップが発動しなくなる証みたいな物です。ほとんど使う事は無いでしょうが5本用意しましたので渡しておきます。もしまだ必要であれば言って頂ければ作りますので、気軽に言ってください。」
「わかりました。かさねがさねありがとうございます。」
深く頭を下げたアイゼンだった。
◇◇◇◆◇◇◇
結果的に要塞より早くにヨコダテの街の防衛強化の為の改修工事は終わった。理由は簡単で、私の力をフルに活用したからだ。後は設備面での防衛力強化をする事になる。
魔法道具のカメラの設置と監視室の設置を今回導入する事になった。カメラはよく闘技場などで使われている物を監視カメラとして城壁に沢山設置した。そのカメラの映像をみる為の監視室も準備した。外壁に設置と言ってもかなりの数がある為監視室は相応の大きさになっている。
「こんなにあるのか?」
「そうだな。これで壁を越えてくる相手にも対処しやすくなるだろ。」
「何か、近未来的な都市になっていくな。」
ラムザの驚愕した顔を見て思い出した。ラムザがこの世界に転移したのは20代だという事を思い出した。
「ああ、そうか。お前は知らないんだったな。」
「何をだ?」
「お前がこっちに来た後の日本はいや、地球はカメラなんて当たり前の世界になったんだよ。」
「うそだろ?」
「いや。冗談とかじゃなくて真実だよ。」
「マジか?!すげぇな。」
確かにそうだと思う。私達の子供の頃はカラーテレビでなく白黒テレビが基本だった。その後カラーテレビが出てきた。そんな時代しか知らないラムザが今の地球を想像するのは難しいだろう。私だって信じられない事だらけだったのだから。
「ああ、人間って凄いな。」
「そうだな。人間は凄いよ。」
技術の進歩は凄いと思う。私が死ぬ時には携帯で映像が見れるようになっていたのだから、ある意味オソロシイ事だと思う。
「電気って概念はこの世界にあるか?」
「いや、俺も長い事こっちにいるが聞いた事はないな。魔法は雷だしな。」
やっぱりな。これは電気を通さない物質を探す事が出来れば、色々と電気製品を作る事が出来て活用する事が出来るかもしれない。科学を発展させる事で新たな扉がこの世界に開くかもしれない。
「おっ。また何か企んでるな?」
「まぁな。」
その後は二人して黙ってヨコダテの街を見ていた。
◇◇◇◆◇◇◇
その後の内装や建物の構築はセシリアの弟子のハフマンを代表に立てて進める事にした。ここまでやっておけば、後はダンバル一家が中心になれば、難しい事では無い。地元の建築関係の者に仕事を与える事になるので、私は報告を受けるだけにした。
他国への折衝にはラムザが赴き、一国一国周り説得して回っている。もう既に周辺国はアイゼンさんとヨコダテの街の独立を容認し国として対応する事を表明している所もある。そのうち、このヨコダテの街にも各国の大使が来るようになるだろう。
「この街をハイマーと名前を変え、国名をザバルティにしようと思います。」
突然のアイゼンさんの告知にビックリした私は拒否。ザバルティという名の国名は不採用となり代わりに『スパルタ』と言う名前はどうかと提案したのだが、すんなりOKが出て、都市国家スパルタとなった。勿論あれから名前をとりました。また都市国家スパルタの地下の街の名はハイマーで決着した。そうラムザの苗字からとった名前だ。正式名称は都市国家スパルタ地下都市ハイマーという事になる。つまり公開する街にしたのだ。その為に城の近くに地下都市へと向かう道を用意し地下都市ハイマーの道に繋げる事になった。
つまり城から抜けなくても行ける様にしたのだ。
これで普通に人がどちらの街にも出入りする事が出来る様になったのだ。
「さて、そろそろあの国へ向かわないと行けないかな?」
≪そうでしょうね。王女も首を長くして待っておられますよ。≫
そうだよね。現場も落ち着いてきてるから、そろそろ動かないとね。




