124 ヨコダテの街から その6
ヨコダテの街の外壁は石で高く積み上げるという和風の城に見られる壁を採用した。そして街の周りに人工の川もどきを造り、海へとつなげる事にした。川の幅はおよそ5m。深さも5m。近くの川に繋げる事で潮の満ち引きでの海の影響を少なくする。もちろん、要所要所の橋も忘れていない。基本的に折りたたみ式の橋にしている。折りたたむと頑丈な壁に早変わりだ。操作はボタン一つという近代的な物にしてある。また用水路の建設も生活を考えると欠かせない物だ。街中に設置した。更に排水路も設置する。そして戦争時の水不足を考えて、用水路の出発ポイントの街の中に造水設備も完備した。ここら辺の生活水に関する設備は要塞の方でも設置している。
壁は三重構造となっている。中心に魔障壁を造りその両方を鋼で囲い、その更に外側をレンガで囲う。こうする事で外観を守りながら突破されにくい物にしている。繋ぎはモルタルを使い見た目重視。魔法で造っているので繋ぎ目は基本的には無いのであくまでも外観になるレンガの部分のみ。
こうして私一人で1か月を利用し街の大まかな造りを構築した。防衛力に直接的に関係する場所の構築だ。そして次の2か月目にシェルターを地下に造った。ただの洞窟の造りではなく、生活が出来るレベルの物を造った。上の街の更に大きく2倍の敷地面積とした。地下100メートルの位置に造ったのだ。そのままでは空間があっても潰れてしまう。その為に空間を鋼と魔障壁と石で補強し空間の一定の間隔の場所に柱を設置した。また空間の高さは100メートルにした。地上と地下の天井の幅が100メートル。地下の天井から地下の地上まで100メートル。合わせて地上の地面より200メートルが地下の地面という事になる。またこの空間には海水などが入らない様にと防水加工もしっかりしている。
地下の空間の用水路と排水路も造水施設も完備出来ている。また、地下に人工の川も設置してある上に街の構造と田園も用意してあり、自給自足を地下の空間でも出来る様にした。そして城も建造している。
人工の太陽も魔法で作成した。これはつまり魔法道具という分類になる。これもボタン一つである。
この地下空間と地上は城と城が繋がっている。地上の城と地下の城が繋がっているという事になる。
この地下空間に私の拠点とゲートで繋がる場所としてマカロッサ家所有の屋敷を用意させてもらった。王都テーストの屋敷とも繋げている。そしてこの地下空間のもう一つの繋がる場所としてヨコダテの街から南西に50キロ離れた森の中に小屋を造っておりそこの隠し部屋に繋がっている。また小屋の方から安全にこの空間に入るのは極めて困難だ。ある特定魔法道具があればその道も安全に通る事が出来る様にはしてある。
空気も入れ替える事が出来る様に空調設備も完備してある。全ては魔法道具になる。勿論どの設備にしてもサブを用意してあるので問題は無い。
「ここまでやってしまえるのも、私が生活している場所でないからだが、やり過ぎの感は否めないな。」
「本当です。もう脱帽ものですよ。」
「【建築神】の本領発揮っていう所でしょうか?」
私の言葉に反応したセシリアとシーリスの言葉に乾いた笑いで返す事しか出来ない。
「本当に【建築神】にしか出来ない事ですよね?」
「私にしか出来ないかもしれないね。は・は・は・は。」
やはり乾いた笑いになった。後先考えず、ただただ、私が考えた事を私の出来る事でやってしまった結果だ。
「ここまで地下空間を仕上げたから、後は使う者の方で運用は考えてもらうとしよう。運用の仕方によっては地上と地下を城以外で繋げる必要が出てきそうだな。」
「その時はどうするんですか?」
「そうなれば、地上の兵舎区域からここに繋げるとか、どこかの道の端からここも道に繋がるトンネルみたいな物を造るしかないかな?」
「出来るんですか?」
「?出来るよ?他には大。型の上下昇降機みたいなのを造るとかね。」
「昇降機?」
「そう。昇降機。地上と地下を縦でつなぐ移動床?みたいな物だね。」
「床が動くんですか?」
「そういう事になるね。」
「あり得ない・・・。一度、ザバルティ様の頭の中を見てみたいと思いまよ。」
物騒な事を言うセシリアにうんうんと頷くシーリス。怖いからそういう事は口に出さないで欲しいと思うのは私だけだろうか?
≪この世界の常識から考えると不思議でたまらないのですよ。≫
そうかもしれない。色々とある試行錯誤の経緯をすっ飛ばして、構造を教えているからこの世界にある概念から外れているもんね。ただ、この世界は魔法があるから色々と出来てしまうんだけどね。近い内に電気を発電する設備を構築しないといけないかな?それがあれば、普及する物が増えるもんね。
≪まだ、やらかすつもりですか?≫
少し冷たい感じのカミコちゃんの声を聞いてしまった。自重した方が良いのかな?
後日、ラムザとアイゼンさんをここに連れて来たのだが、あまりにも常識を離れていたのか、地下空間に木霊する二人の乾いた笑い声であった。




