122 ヨコダテの街から その4
「ラムザにアイゼンさん。よくお越しくださいました。すいません。諸事情によりこちらの屋敷へと足を運んで頂きまして申し訳ありません。」
「気にするな。」
「問題はありませんよ。所でどんな話でしょうか?」
「この街の防衛設備についてなのですが、測量が終わりましたのでその報告と、これからの計画についてです。」
「ほう、もう終わったのか?」
「早いですね。」
「それで計画の事なのですが、どれ位の規模をご希望か?と思いまして。」
「それは、王都レベルの強固な物だ。お金にかかっても良いから立派な物にしてくれ。」
「・・・。」
「ラムザの意見は分かったよ。で、アイゼンさんの意見は?」
「・・・。それなんですが、お話しても大丈夫なのでしょうか?」
「ザバルティになら構わない。」
真剣な眼差しを見せるラムザとアイゼンさん。
「それでは。」
一息ついて話し出すアイゼン。
「私達はこのヨコダテの街を王都に定めて、ここに新たな王国を築くつもりなのです。」
なるほどね。確かにこのアイゼンさんがこの地の領主っていうのは少し無理があると思っていた。ハーフって基本的にこの世界では差別される側の人々だ。そのアイゼンさんが主導している様子のあるこの街はある種の異常事態と言える。頷く私を見てアイゼンさんは続ける。
「ここに、魔族とハーフを中心とした国を造ります。私はこの魔王国の衰退を、叔父の暴政を止めたい。それが故に私達は立ち上がりました。ですが、少数である私達は劣勢の反乱軍です。そこへラムザ様が助勢に来てくれました。それでも覆せる程の事にはなりません。」
「つまり、ただの反乱軍ではなく正規の軍として活動し、大義を掲げて動く。という事ですか?」
「そういう事だ。」
ビックリした様子のアイゼンさんの代わりにラムザが答える。
「だから、ここの街の防衛力を上げる必要がある。それも魔族の軍団を退ける程の物がいるのだ。」
「今は、ラムザ様の攪乱作戦により叔父の軍団は動けずにいます。ですがそれも半年から一年の猶予が手に入った位の物です。」
「その間に他の国からこの街を国として認めさせる必要があるという訳か。」
「そういう事だ。」
驚愕の顔を隠せないアイゼンさんにまたラムザが答える。
「いったい、貴方は何処迄見通しているのですか?本当に神ではないのですか?15歳とは思えない。」
「アイゼン。こいつはな、ただの15歳とは違うんだよ。神でも無いがな。」
「そういう事です。ですが、アイゼンさん一つだけ良いですか?」
「何でしょう?」
「アイゼンさんって魔族の王子だったんですか?」
「えぇ。そうです。どうか致しましたか?」
「いえ。私としてはそっちの方がビックリする内容だと思うのですが?」
「ははは。あの奇跡を起こせる貴方がビックリしてくれる方が驚愕ですよ。」
驚き合う私とアイゼンさん。魔族の王子がハーフって方が驚くよね?だってプライドが高い事で有名なのが魔族だからね?
「ザバルティ様。そろそろ本題に入りましょう。」
隣に控えるセシリアが我慢出来ないといった感じで私の耳元でつぶやく。
「では、本題に戻りましょう。今回お呼びしたのはこれを見て頂くためです。」
そう言って合図をセシリアに送るとセシリアは待ってましたといった感じで布を取る。するとそこに現れる模型。この街を中心とした周辺の模型なのだ。
「これはヨコダテの街?」
「そうです。そしてこの街の未来の形はこれです!」
模型の街の周辺が動き出す。そしてひと際輝くと新しい風景に変わる。
「こ、これは?」
「未来のヨコダテの街並みですよ。」
中央に王城が立ちそびえる。今の街並みは城を中心として西南地区から東南に至る形になっている。
「海を埋め立てるのか?」
「そう海を埋め立てて飛空艇基地を北東地区に置き兵舎区域にし、港を挟んで北西地区を貴族や士族区域とし、城を中心にして南側の北部を商業区域として南側南部を一般区域にします。また港から繋がるように城の防衛も兼ねて大きな堀を造り船が通れるようにします。これにより税も掛けやすくなると思われます。いかがでしょうか?」
ラムザとアイゼンさんの二人は面食らった感じになっている。
「これを半年で造る事は可能なのか?」
「いえ。3ヵ月で造るつもりですよ。ただ、大まかな所はって事で細かい所は追々というのが正直な所ですが、少なくとも防衛面では3ヵ月を予定してます。」
「くっくっくっく。はははは。わはははは!」
急に笑い出すラムザ。
「これは本当に可能なのか?やれるのか?」
笑顔で聞いてくるラムザ。気が狂ったのか?と周りの者は思っているんじゃなかろうか?
「ああ、出来るとも。今の私達なら可能だよ。ただな金が唸る程必要だぞ。」
「かまわんよ。まさか、こう来るとは思わなかったよ。」
「良い案だろ?」
「ああ、凄く良い案だ。なぁ、アイゼン。」
突然フラれたアイゼンさんは、アンタらにはついていけないという様な顔を見せる。
「ラムザの事だからここを数百万の人が住める都にするつもりだったろ?」
「ああそのつもりだった。」
やはりなって顔をして返す私を見ているラムザ。
「では、明日から頼むぞ。」
「任せておけ。お前も飛空艇の量産をしっかりしろよ?」
「ああ。そっちに集中するよ。」
さぁ、要塞もこの王都予定地も確りやり切ってみせる。




