119 ヨコダテの街から その1
キッチリ二日後に着いたとの連絡が入った。直ぐに要塞拠点から飛行艇へと向かった。
「来たか?」
「ああ。」
ラムザの隣に立ちちょっとした言葉を交わすも前を見たままだ。
「さぁて、俺の一つの仕事が始まるよ。」
「そんなに大切なのか?」
一呼吸置いてゆっくりと、しかし力強く言い切ったラムザ。
「そうだ。とても大切だ。」
色んな感情が含まれているであろう言葉だった。
◇◇◆◇◇
「こいつが、前に話した商人でプリメラだ。」
「初めまして、ザバルティ様。プリメラと申します。」
「ザバルティです。宜しくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
ラムザの紹介でプリメラという女性と初めて会った。
「ところでザバルティ様はどのような奴隷が欲しいと思われていらっしゃるのですか?」
「信頼の置ける仲間が欲しいと考えています。」
「はて?仲間ですか?奴隷なのに?」
「そうです。仲間です。ですから、実力のあった戦士や騎士や魔法使い。どんな方でも構いません。ただ信じられる者が良いのです。」
「ふふふ。変わった事をおっしゃる方ですね?」
プリメラさんは笑いながらラムザを見る。
「なかなかにご要望は難しい物ですね。忠誠を持つ者はでは無く、信じられる仲間ですか。」
「そうです。仲間です。」
う~ん。と言ってプリメラさんは少し考える様に手を顎に持ってくる。
「他の条件はありますか?」
「特にはありません。欠損している者でも良いです。」
「はて?欠損者でも良い?戦える者をお探しなのでは?」
益々疑問が浮かんでいる様子のプリメラさん。隣のラムザも首を傾げる。
「どういう事だ?」
ラムザの言葉に反応したのはシーリスだった。
「ザバルティ様。もしやザバルティ様の能力をご存じないのでは?」
小声で、ささやく様に私の耳元で言葉を紡ぐシーリスに、ハッとなった私。
「そうだった。すまない。ここには怪我人は居るかな?」
「勿論いるが、どうする気だ?」
「怪我人が居る所へ連れて行ってくれ。」
「では案内しよう。」
ラムザが怪訝な顔になって聞いてくるが、言うより見てもらう方が早いだろうと考え怪我人が収容されている場所への案内を頼んだ。兎に角という感じで案内してくれるようだ。領主の館のような場所を出て病院のような場所へと連れていかれる。
「急ですまないが、少し失礼する。」
「これはラムザ様。どうなさいましたか?」
怪我人の看病をしている者が突然のラムザの訪問でビックリしているがラムザ自身も何故ここに連れてくる事になったのかわからないままなのでまともな返事は出来ない。そこでシーリスが代わりに答える。
「突然の訪問を失礼します。ラムザ殿の友人のザバルティ様のご希望で参りました。私はザバルティ様の秘書をしておりますシーリスと申します。突然来て何を?とお思いになられるかと思いますが、怪我人の回復をしにまいりました。何人か看たいと思いますので、重傷者を数名程ご紹介頂けませんか?」
この言葉でラムザは合点がいったという感じの顔になり、周りに者も安心したような顔になった。
「それはありがとうございます。私はここで医院長をしておりますキャサリンと申します。ザバルティ様は神官様なのでしょうか?」
「まぁそんなものでしょうか?」
シーリスは私の顔を伺いながら返答する。それをラムザが助ける感じで答える。
「とにかく、重傷者を数名個室へと運んでくれ。頼むぞ。」
「かしこまりました。では、こちらへ。」
診療室の様な所へと案内された。そこで待つように言われて私達は待つ事になった。
◇◇◇◆◇◇◇
「ラムザ様。大丈夫なのでしょうか?」
「安心しろ。何か悪い事をするわけでは無い。」
「しかし。」
「それに、彼奴は私の友人だ。親友と言っても良い。だから俺を信用するなら彼奴も、ザバルティも信用してやってくれ。」
心配そうな顔の女性の名前はキャサリン。森の妖精エルフであり神官職にある。
「わかりました。たしかにエルフの者を連れてもいますし、信用してみる事に致します。」
「心配かけてすまないな。」
仕方がないというような顔をするキャサリンに謝罪するラムザ。
「では準備してまいります。」
「ああ、頼む。」
キャサリンは直ぐに同じくここで働いている仲間の元へと向かい準備する重傷者を見繕い。連れてくる様にと指示を出し、診療室へと戻るのであった。
◇◇◇◆◇◇◇
ラムザが部屋へ戻ってきて後にノックがして声が聞こえた。
「お待たせいたしました。」
先ほどの女性が入ってきた。その後ろには職員と思わしき者を引き連れており、一人の怪我人を連れて入ってきて、部屋の中にあるベットに横にして職員と思わしき者は部屋を出て行く。
「では、ザバルティ様よろしくお願いします。」
「わかりました。」
私は頷いて返事を返して怪我人の前へと向かう。ベットに横にされた者は筋骨隆々な男で、戦士と呼ぶに相応しい体格をしているが、右肩から先が欠けていた。止血は出来ている様だがまだ血が包帯に滲んでいる。また右足も膝から下が無い。とても痛々しい感じでこちらもやはり包帯に血が滲んでいる。
「この方は、見ての通り右肩から先と右足の膝から下が切り落とされています。止血をしておりますがこのまま出血が続いてしまうと命に関わります。が、今の医療や回復魔法では止血やっとなのです。」
「その様ですね。わかりました。では失礼します。」
男は意識があるものの、生きる希望を失ってしまったのか感情の無い顔をしている。
「もう助からねぇよ。それに生きていてもこんな様じゃ、何もできやしねぇ。いっそのこと死なせてくれや。」
発言も自暴自棄の内容だ。
「名前は何というのですか?」
「ふん。アンタは誰だ?」
「ザバルティと言います。」
「俺はサムズウェルだ。」
「サムズウェルさん。その傷が治るとしたら、私に誓って欲しい事があります。」
「は?治る?元に戻るってのか?そんなあり得もしない事を言うなよ!馬鹿にしてるのか?」
怒気を含んだ顔で睨みつけてくるサムズウェル。そしてそのやり取りを聞いて顔色を変えるラムザ達。特にキャサリンは怒気迄纏いだす。
「いいえ。馬鹿に等していません。ただ約束して欲しいのです。治れば私に誓うと。」




