112 要塞設営 その7
「なるほど。難しい問題だな。」
海を見ながら答えるラムザ。いや訂正しておこう。海を下に空から見るラムザだね。今は移動中の飛行艇の甲板で王女と秘密の件を相談している最中だ。空中で早い速度にも関わらず髪の毛は少しなびく程度なのは風の精霊のおかげだ。夜の風は身に染みるのだろうがそれも感じない。満月のような星空の綺麗な風景が目に入って来る。
「だが、お前も面白そうな人生を送っているようだな。」
「茶化すのは止めてくれ。別に草食系というわけでは無いが今は考えられん。」
「まぁ、そうかもな。」
ラムザは少し揶揄う感じで答えてきたが、本気で言っている様子は無い。
「ただ、そう簡単にはいかないんじゃないか?」
「そうなんだ。どうするべきか悩んでいる。」
「いっそのこと、仲間にしてしまえば良いんじゃないか?どっちにしろお前に対してホの字ならお前が困る事はしないだろう?」
「そうだとは思うが、マリリン第三王女はまだ良いとしても、エリザネス第一王女は王位継承権が高い。だから問題になる。」
「逆にお前が王になるっていうのはどうなんだ?」
「はぁ?そんな事考えた事も無いよ。面倒だろう責任者は。」
本気で居やがる風の私に対して容赦なく切り込んでくるラムザ。
「そうは言ってもなりたくても成れないんだぜ?王様には。責任ぐらい取り方を知っているだろう?」
「まぁ、、それはそうだが。」
「俺としては秘密を共有して口外させない方が楽で良いと思うぜ。」
それしか今は無い気がしているのは確かだ。【神の使徒】の事はまた別問題だが、ゲートの事は話して理解してもらった方が楽だ。
「そうかもしれないな。しかしもう少し考えてみるよ。」
「そうしろ。まぁどんな状況になっても俺はお前の味方だ。助けが欲しい時はいつでも言え。」
「ありがとう。期待しているよ。」
はははと笑って話を終える。
「じゃあ、私は帰るとするよ。」
「もう少し夜空を楽しまないのか?」
「ああ、明日も早いから戻って休むとするよ。」
私はラムザにそう告げて馬車へと帰る事にした。ラムザはグラスを傾けてもう少し夜空を楽しむと私に告げて月明かりを楽しみだした。ゲートを通り馬車へ戻った私は直ぐにベットに直行して直ぐに寝た。アッという間に寝付いていた。
◇◇◇◆◇◇◇
「ザバルティ様、おはようございます。」
「うん?おはよう。もう朝か?」
亜空間なので外の風景が判るわけでは無いので、朝陽がが入る事はない。こうしてミーリアやシーリスが起こしてくれる事に甘えて時間も見ていない。
「朝食の準備が出来ております。」
「わかった。少しシャワーを浴びてくる。」
「かしこまりました。」
シャワーを浴びて着替えて馬車のゲートから屋敷の食堂へ向かう。朝はこうして警備以外の者達以外の直属の従者達と朝のミーティングを行いながらの朝食をとる。
「今日は、セシリアに指揮を任せたい。大丈夫か?」
「問題ありません。かしこまりました。」
「ザバルティ様は遂に向こうへ行かれるのですか?」
「いや、まだ向こうは着いていないよ。今日は王女2人と話をしようと思っていてね。それで時間が欲しいんだ。」
ミーリアが質問してきたのでそれに返答する。
「婚約者と朝からですか?」
なんか棘のある言葉だな。
「そうなるね。ミーリアは同席してくれ。シーリスはすまないが、セシリアの方に着いて名連絡役をして欲しい。」
「「かしこまりました。」」
こんな感じの指示を出して朝食を終える。さて、今日のメインは話し合いだがどれくらいの時間がかかるのだろうか?昼は楽しく食事をしたいもんだ。
「では、私から王女様二人に連絡を入れます。どちらでお会いになられますか?」
「それなんだけど、今日はここにお呼びしようかと思っている。」
皆がビックリした顔を見せるが私は続ける。
「その為に馬車の外に茶会の準備をして欲しい。」
「つまりは、秘密を打ち明ける準備をするという事でしょうか?あの二人は信用できるでしょうか?」
「そうだね。それを確かめようと思っているんだ。【神の使徒】の力を使って判断するつもりだ。」
その場は静まり返るが納得した表情を見せたので話を続ける。
「このままでは、動きが取れなくなってしまうからね。仕方がないと腹を括ったんだ。賛同してくれるかな?」
「私達にザバルティ様の意見に反対する者など居りませんよ。」
トーマスの返答に周りは頷いている。
「そうか、ありがとう。ただ、マズイと思えば提言して欲しいと思う。それで嫌う事は無いから安心して言ってくれ、これはお願いだ。」
「「「「「わかりました。」」」」」
さて、準備を万端にして王女二人を迎えるとしよう。二人の反応が楽しみでもある。
「では、コーネスは茶会の準備を頼む。ブリエンドは馬車の方のゲート前で待機をしてくれ。そしてミーリアは同席の準備を。ユカも警備として同席準備を頼む。」
「「「「かしこまりました。」」」」
ある意味での勝負の時だ。反応次第では厳しい対処も必要になるかもしれないが、今の打開策の一つだ。やれる事はやろう。




