102 精霊使いは過去を懐かしむ
アイゼンの近況の報告を受けたラムザは眉間に皺をよせる。随分とアイゼンは旗色が悪いようだ。兵士数が違い過ぎるというのが一番大きく、どうしても戦局が動かないのだ。一人一人の戦力はアイゼン側の方が強いのだが、数の暴力を真面に受ける局面ではどうしても押されてしまう。つまりゲリラ戦を展開するしかないのだ。そうなると、官軍というイメージはつきにくく、賊軍のイメージを拭えないでいた為に味方が増えるスピードが遅く厳しい展開となっており、劣勢に立たされている。
「以上が、アイゼンが置かれている状況の様です。」
「そうか。かなり厳しいようだな。」
「その様です。」
ミネアの報告に眉を寄せるラムザにペレが声をかける。
≪このような状態では、表立って助ける他なにのではないか?≫
「そうだな。商会とクラウンの立場から協力する事を表明するか。」
「それでは、今後に影響が出ませんか?」
≪そうじゃな。それが懸念事項じゃな。≫
皆が沈黙する。それぞれがこの件について情報から考察し熟考する。そんな沈黙を破ったのはエリザだった。
「とりあえず、アイゼン君に会いに行きましょうよ?」
≪≪ふふふ。≫≫
「「ははは。」」
そこに居た四人は示し合わせたかの様に笑う。
「ちょっと。何で皆笑うんですか?」
「確かにエリザの言う通りだ。先ずは会いに行こう。ミネア、およそで良い場所は分かるか?」
「勿論です。」
「またスルーですか?良いですよ~だ。」
ラムザとミネアがエリザをスルーする形で話だし、エリザは顔を膨らませて拗ねてしまう。それを放置して進める二人。
「では、先ずは接触を図ろう。その後の事はその後に決めよう。ではアイゼンに連絡をしといてくれ。」
「わかりました。」
「よし。じゃあ次の航海の行き先はアイゼンの故郷に決定だ。」
「了解です。すぐさま準備に取り掛かります。」
そう言うとさっとミネアは部屋を出る。
「では俺は、ザバルティに会いに行ってくる。彼奴も忙しい奴だから、今を逃すと当分は会えないだろうからな。」
「あっ、私も行きます。」
「すまない。彼奴とは二人だけで会いたい。」
「えぇ~。」
「じゃあ、エリザは夕食に合わせて例のステーキハウスで待ち合わせにしよう。」
「で、デートですか?」
うふ(⋈◍>◡<◍)。✧♡。って顔になるエリザに優しい顔を見せるラムザ。
「そうだ。デートをしよう。」
「やったー!!」
飛び跳ねながら喜ぶエリザを精霊二人に人一人が見て笑っていたのだった。
◇◇◇◆◇◇◇
「というわけで、当分はこっちに戻らん予定だ。」
「そうか。すまない。色々気を使わせて。」
「やめろよ。俺とお前の仲じゃないか。」
「ありがとう。でも夏には一度は戻るんだろう?シャルマンが楽しみにしていたぞ。」
「そうだな。一度戻ろう。その時には連絡をするよ。」
「そうしてくれると動きやすい。夏は開けておくよ。」
個室の中で話込む二人。ラムザとザバルティの二人は気兼ねが無い様子で話をする。
「だから、テーストの街ではシェリルに声をかけてくれれば問題ない。明日にでもお前の屋敷に向かわせるよ。それにシャルマンの近くにはソフランを置いておく。常に警戒させておくからお前は自分の周りに集中して大丈夫だ。」
「わかった。それにしてもお前は国際派だな。活躍の舞台が世界か。」
「何を言ってるんだ。直ぐにお前も世界を舞台に動かなければならなくなるさ。俺よりお前の方が大変になるんじゃないか?」
「なんでだよ?」
「そりゃ、第一王女と第三王女の二つの国の王女と婚約したんだから、どう考えても忙しくなるだろうが。」
苦いお茶でも飲んだかのような顔になるザバルティ。
「確かに違いない。」
「だろう?それにしてもさ、異世界とは言え土管がある空き地で野球をやっていたハナタレ小僧の俺達が世界を相手に色々とやる事になるとはなぁ~。」
「そうだな。そうだ。あれ憶えているか?お前が打った球が空き地の隣の頑固おやじの家のガラスを割ったのを?」
「それは、お前の方じゃ無かったか?」
「いいや、それはお前だよ。ゆ・・・ラムザ。」
一呼吸おいてラムザと言い直したザバルティ。
「そうだったかな?ザバルティ。」
「あぁ、お前が怖がるから、私も一緒に行って一緒に怒られたんだから憶えているよ。」
「そんな事もあったな。ところで、あの女の子はどうしてた?」
「その女の子?」
「俺達のアイドルだよ。」
「「あゆみちゃん」」
二人一緒になって名前を言って、笑い合う二人。過去の思い出に花を咲かせる二人は色々と話をした。初恋の人のその後の足取りや、学校で起きた出来事や学校の特徴ある先生の話など尽きる事がない。
二人にとっての共通の話題であり、楽しかった日々の話をすると時間の経過は早く二人はお腹が減って時間の経過をする程に夢中になって思い出話に花をさかせた。
「おっと、いけない。エリザと夕食デートをする事になっていたんだ。」
「そうか。ではお開きだな。」
「あぁ、では次会う時は夏。お互いに体に気をつけて頑張ろう。」
「そうだな。でも勘違いするなよ。私は15歳だ。お前はそれ相応の歳なんだから、無茶するなよ?」
「言ってくれる。同い年だったのにな。人生何が起こるかわからんな。」
「まったくその通りだ。」
「それじゃ、またな。」
「ああ、またな。」
二人は固く握手をすると店を出てお互いの道へと歩みだした。




