101 精霊使いは指示を出す
「ザバルティ・マカロッサの名前がついた依頼は全て受けてやってくれ、それも最優先事項として速やかに全力を持って速やかに対処してくれ。この件については事後報告でかまわん。」
「はい。かしこまりました。前支店に通達致します。」
「後、アスワン王国にはシェリルを長としてクラウン支部も王都テーストに早期立ち上げをしろ。ザバルティ・マカロッサへの協力を惜しむな。資金は気にするな。当面はこちらを主軸として活動する。」
「はい。承りました。私シェリルが確りとザバルティ様をサポート致しますわ。」
テキパキと指示をとばす男は、念願だった息子を見つけ出した上に昔の旧友にも出会った。そしてその友人はこの世界でかなり大変な状況になり得る者として転生してきた事をつかんだ。その為にサポートする事を心に誓い。現在は巨大な力を持つ自身をフル活用するべくサポート体制を構築しているのだ。
「しかし、まさか彼奴がこっちに来るとはな。」
精霊使いのラムザは独り言の様にぼそりと言うと、感慨深げな様子を見せる。
≪ふふふ。お主がそこまで他人を信頼するとはな。≫
「彼奴は別もんだ。俺の親友だからな。」
赤い髪を揺らしながら洗うペレは不思議そうな顔を見せる。
≪親友とな?あの【神の使徒】がか?どこで友情をはぐくんだんだい?≫
「ちょっと昔にな。」
≪ほう。我が知らぬ過去か?≫
「そうなるな。」
遠い目をするラムザに火山の精霊ペレはそれ以上追求しなかった。
「さて、アスワン王国についての指示はこれで良いだろう。彼奴が上手く使ってくれるだろう。」
≪そうじゃな。アヤツならば上手くやるじゃろうて。お主も息子の所在が判ったから安心じゃろ?≫
「まぁな。それに今後はいつでも会えるようにしてくれるらしいからな。」
≪なんと。あれも信じておるのか?≫
「彼奴ならできるだろ?出来ない事は言わない奴だ。昔からな。」
≪興味深い発言じゃな。≫
ペレは考え込む仕草を見せる。それを見たラムザは苦笑する。不意にエリザが不機嫌そうな顔をして話に加わる。
「何を二人でこそこそ話してるんですか?」
「あぁ、エリザか。ザバルティの事をちょっとな。」
「えぇ~。そんな事ですか?本当ですか~?」
疑いの眼差しをラムザとペレに向けるエリザにユートゥルナは諫める声を上げる。
≪エリザさん。そんなに人を疑ってはいけません。それにお二人が言っている事は本当の事ですよ。≫
「うぅ~。ユートゥルナがそういうならそうなのね。疑ってごめんなさい。」
エリザを優しい眼差しで見つめるラムザとペレ。ユートゥルナはどうしようもないなという感じで腰に手を当て胸を張る感じでエリザに相対している。気を取り直した感じでエリザはラムザに問いかける。
「で、これからラムザさんはどうするんですか?」
「そりゃあ決まってるだろ?」
不思議そうな顔をするエリザを見つめて笑いながら答えるラムザ。
「アイゼンを迎えに行くにきまってるだろ。俺の部下を助けてやらなければな。」
「そうなるかぁ~。うん。そうよね。ラムザさんならそう言うよね。」
≪ふふふ。エリザよ。まだラムザを理解できとらんようじゃな。≫
≪本当、まだまだですね。≫
二人の精霊に窘められたエリザは食って掛かる。
「何よ。なら二人は分かっていたとでも言うの?」
≪当然じゃ!≫
≪当然です!≫
「うそ!!」
ガ~ンという音がしているかのような顔をエリザはして固まる。それを見た二人の精霊は見つめ合い笑う。
「おい。二人ともそれ位にしておいてやってくれ。見ていられない。」
≪ふふふ。そうじゃな。≫
≪ふふふ。そうですね。≫
助け船を出したラムザであったが、精霊二人に揶揄われるエリザを見て苦笑する。
「もう!知らないんだから!」
「エリザもそう怒るな。そんな反応豊かなお前が可愛いとみなが思っているんだから仕方がないと考えてくれ。」
「えっ?可愛い?皆って事はラムザさんも私を可愛いと思うって事ですか?」
「そうだよ。」
ストレートな答えを聞いて顔を赤くして下を向くエリザを見て、またまた精霊二人が笑い合う。
「もう。ラムザさんまで揶揄うんなんて酷い!」
「いや、揶揄ってないさ。本当の事だよ。可愛いと思うよ。」
今度は耳まで赤くして伏してしまった。それを見た精霊二人は大笑いをするが、今度のエリザは何も言えずにそのままの状態である。
「ミネア。居るか?」
「はい。ここに。」
「悪いが、お前もアスワンに残ってくれ。帝都ではなくマカロッサ家のアンバーの商会の方で連絡役の纏め役を担ってくれ。」
「わかりました。お任せください。」
「優先はシャルマンだ。勿論マカロッサ家も範囲に入れてくれ。」
「はい。」
「ミネア。先ずはアイゼンの近況などの情報をくれ。それからどう動くか決める。」
「かしこまりました。では纏めた資料をお持ちします。」
そう言ってミネアは直ぐに部屋を出て行く。それを見てラムザは満足気な感じで見ていた。
「アイゼン。待っていろよ。」
そう祈りを込めた言葉を紡ぐのだった。




