10 試練 その4
「よく来たのぉ~。マカロッサ。」
結論からいうと本当にお爺様だった。
「あっ。えっ?え~!?」
「ようやく、子供らしい反応を見せたなぁ。」
なんて言いながら、キーファさんと余裕の表情で俺を見るポワロ叔父さん。なんか、悔しいな。なんでお爺様がここに居るのかはわかっていない。
「ビックリしたかの?」
お爺様が説明してくれた。このダンジョンはマカロッサ家初代が見つけた物で、完全制覇したようだ。その時にダンジョンマスターから気に入られたようで、ダンジョンマスターと会う事が出来た。そして、ダンジョンマスターと結ばれた。それ以降、このダンジョンはマカロッサ家が人知れず継承してきたようだ。爵位を譲った老後の仕事としておこなっているようだ。だから、このダンジョンにおりダンジョンマスターとなった者は墓のあるこの丘の屋敷に引っ込む形で住んでいるようだ。この事は一族の秘匿とされており一族以外では居ないという事だ。あれリーファさんは知っていたような気がする。
「それは追々、俺から話そう。」
とポワロ叔父さんが言うので、また教えてくれるだろう。
で、このダンジョンは一族に教える事と試練とを兼ねて代々使われているようだ。ダンジョンマスターの意向で中は色々変化させる事ができるようで、試練の時と平常時では仕様が異なるそうだ。いつもは50階層にしていて、ダンジョンマスター部屋にどうやっても来れない鬼畜仕様になっているみたいだ。
「しかし、ザバルティよ。お前には驚きだ。まさかアレを倒してしまうとはのぉ~。予定外であったが、良い物を見せてもらった。」
「ザバルティ。お前は何を相手に戦ったんだ?」
「それは、ワシとザバルティとの二人の秘密じゃ。それより、お前はこの後の準備をする為にキーファと先に戻っておれ。わし等は少し話をして戻る。」
「わかりました。キーファ戻るぞ。」
「はい。ではロマネス様、先に失礼します。」
「うむ。」
と奥にある魔方陣に向かうと消えた。後から聞いたが、転移魔方陣で、お爺様の屋敷に繋がっている。
「では、ザバルティよ。お主の秘密を話してもらおうかの。」
剣呑なフインキを醸し出しお爺様が私に聞かれた。これはどうすべきか?話をしても良いのか?
しかし、異常な姿を見せてしまった後だから話すしかないのではないだろうか?
≪信用できるお相手であるならば、話をした方が良いと思われます。≫
そうだな。これ以上は隠す方がおかしいな。覚悟を決めた。
「実は・・・。」
◇◇◇◆◇◇◇
「面白い。転生とな。ザバルティは前から特別な感じがしておったが、そのような事があったとはの。神の寵愛か。しかし、その神の名がわからないというのも変であるが、神の思し召しであればそれも仕方のない事であろう。ザバルティが転生者であろうと、我が孫に変わりはない。ここまで一人でよく頑張ったな。」
全てを伝えた。そして、この事はお爺様は口外しない事も言ってくれた。更に、出来うる限りの協力をすると言われた時は目頭が熱くなって泣いた。自分では認識していなかったが、随分と心に負荷が掛かっていたようだ。神の使徒と言っても人間の心を持っているのだから仕方がないかと思う。
「では、あまり待たせるのも悪いかの?では参ろうか。」
お爺様との会話でいつの間にか時間が立っていたようだ。お爺様に促されて転移魔方陣に入り転移した。厳かな空間であったダンジョンマスターの部屋から一瞬にして石壁に囲まれた場所に出た。ここはお爺様の屋敷の地下にある部屋だった。部屋から一階へ戻るとお婆様がいらっしゃった。
「久しぶりですねザバルティ。元気そうで何よりです。」
「はい。お婆様。御無沙汰しております。」
「では、皆が待っていますから、この剣を持って行きましょう。」
といって、お婆様から家紋の入った剣を渡された。この剣が試練を越えた者に渡される剣である。
白色をした剣はシンプルなデザインで片手剣のようである。代々試練を越えた者それぞれに用意される。家紋が入っているのは皆同じだが、デザインや種類が違うのである。
「その剣はホワイトドラゴンをイメージしたものじゃ。魔鋼によって出来ておる。まだエンチャントは掛かっておらんが、付与に耐えうる構造になっておる。付与はお主が出来ると聞いておったからしておらんが、この剣は一流といわれるドワーフに作らせた物じゃ。自信の一本じゃ。」
「では、ザバルティ。行きましょう。」
この後、皆がいる外へ出て、試練を越えた事を証明したのだった。




