もふ洗顔
朝。春も近づくと猫も布団の中では寝なくなる。
その温もりが恋しく、寂しいと思う反面、嬉しいこともある。
猫は私の頭の横で丸まっている。
身体をちょっと寝返りさせると顔がもふもふへとダイブさせることが可能となる配置だ。そこが猫の定位置。
だから私はまず寝返りをうつ。そしてダイブ。
もふもふ。モフモフ。
顔を右に左に堪能する。
時計回りしたり、反時計回りしたり。
止められない止まらない。
――パシッ
そこへ邪魔するものがある。
猫本人である。
猫パンチが飛んだのだ。
仕方がなく、本当に仕方がなく、泣く泣く離れる。
――バシッ
離れようとすると捕まえられる。
猫は本能によって逃げる物に対して捕まえずにはいられない。
捕まってしまったら、仕方がない。もふっとした毛並みの中へと舞い戻る。
再度、二度寝ならぬ、二度もふ洗顔。
もふもふ。モフモフ。もふもふもふ。
うぉおおおおお、心地えぇっ~
――パシッ
再度停止ボタンが押される。それによって、仕様がなく、しょうがなく、離れる。今度はゆっくりと猫が反応しないように慎重に。
猫も興奮して目が覚める。
顔を洗い始める。
まずは目ヤニを飛ばされる前に取り除かないといけない。
猫の洗顔はちゃんと目ヤニもとる。
ただし、その成長した目ヤニは拭われた手(前足)でどこぞへと飛ばさるか、舌で舐めとられてペッペッと吐き出される。
そうなる前に拭き取っておくのが出来れば最上。
しかし白黒の猫の黒い部分が目頭まで来てると判別がし辛い。
猫は顔を洗う時、まず手を舐める。数回舐めて濡らすとその手を顔へと持って行く。そしてそれでもって拭うのだ。
そのとき、何故か毎回、手を持ち上げてもう一回余分に空中を舐める。
そのエアペロペロが非常にかわいい。
間抜けでなんとなく愛らしいのだ。
他の子がそんなことしていないので癖なんだろう。
そして普通に洗顔。
以前いた猫に一度、洗顔中の手桶の中の水を舐め始められたときは困ったものだ。
バチャバチャと顔を洗いスッキリして目ヤニなどを洗い落とす。
濡れた顔と手を拭くときに思う。
ホントは猫を連れてそのお腹で顔を拭いたい、と。
だがそうすると顔に猫の柔らかい毛が大量に付くことになる。だから出来ない。我慢する。
ただでさえ猫を飼っているとタオルにもすでに付いているのだ、猫の毛が。
口の中とかにも勝手に舞い込んでくる。
メシのときの茶碗やお浸し、味噌汁の中。
白米の中の白い毛は分かり難くて困る。
そんな日常。