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明日へ向けて

前回とは違った意味で少々グロいので注意してください。


それと、前話はやっぱりほんの少し書き換えたので時間があったらどぞー。


 鬱蒼とした森の中は奥へと進むほどに大きな木が増えてきた。その中の一つ、幹の間に出来たちょっとした足場とも言える平らな空間に、双子の子供がいた。双子は白狼族と呼ばれる獣人の一種で、普通の人間と違うのは、頭の上にある獣のような耳と尻尾だ。どちらも枝葉の間からわずかにこぼれ出る朝日に照らさアれて、白銀の美しい毛並みが輝いている。

 双子の片割れである少年が、もう一人のぐったりとして眠っている少女を膝枕して周囲を警戒している。


「んんっ。ううん……?」


「リリ、起きたか」


 リリと呼ばれた少女は体を起こし、うーんと伸びをする。そして辺りを見回すと、昨晩の事を思い出したのか、急に顔をくしゃくしゃにして泣き出した。


 トトはつられて泣きそうになるのを堪えながら、リリの頭を撫で、背中を優しくさする。



 この場所を見つけた時、二人は走り疲れた体を何とか動かして木を登った。そうすると、リリは一度は堪えた涙をもう一度流しながらトトに抱き着いて泣いていた。トトが母親にされていた事を思い出して抱き返している間にリリは眠っていたのだ。



 リリの泣く声が止み、ひっくひっくとしたしゃっくりのような呼吸も収まった。そして、リリは息を飲み込むように大きく深呼吸をした。


「トト。リリはもう大丈夫なの」


 リリは一度抱き着いていた手を放すと、トトの顔をしっかりと見つめてそう言った。その顔は何事も無かったかのようとまでは言えないが、とてもすっきりしたものだった。

 そんな様子のリリを見てトトもホッと一息吐いた。


 すると、リリがトトに優しく笑いかけて再び抱きしめる。


「トト、ありがとうなの。あの後ずっと起きて見張りをしてくれたのは知ってるの」


 そう言って、リリはトトにされたようにトトを撫でた。

 突然だったので、トトは戸惑いながらも返す。


「ああ、うん。いいんだ。リリがダメなときは僕がしっかりしなきゃ」


「そうなの。だから今度はリリの番なの」


「え?」


 トトの口からは自然と疑問がこぼれた。


「トトはよく頑張ったの。うじうじしてたリリを、いつ盗賊に襲われるか分からない家から連れ出してくれたの」


「う、うん。どうしたの?急に褒めたりして」


「……」


「……リリ?」


 リリの言動が読めずに、トトは戸惑っている。


「……トトも一回泣くといいの。TPOはわきまえるべきだけど、今は泣く時なの」


「僕は大丈夫だよ?」


「大丈夫なわけないの。おとーさんもおかーさんも、それにマーシーだってもう二度と会えないの。それなのに、平気な顔で大丈夫なんて言ってても信じられるわけないの」


「――ッ!」


「トトは考えないようにしてただけなの。トトまで泣いてたら、ロクに走り回ることも出来なかったから助かったけど、今なら少し休める時間があるの」


 リリは抱きしめる力を強くする。


「――だから、我慢しないでいいの。今は少しだけ泣いて、ゆっくり休むといいの」


 トトの頭を乗せている肩に、冷たいものが当たる感覚が伝わる。


「……で、でも」


「違うの。どんなに悲しい出来事も、思いっきり泣いてしまえば次から頑張る勇気に変わるの。それに、最初にも言ったの、今度はリリの番だって」


「あ、あ゛ぁ」


 その嗚咽を皮切りに、トトは声を上げて泣き出した。


 溢れ出てくる感情のままに泣き声を上げるトトを優しくなでながら、リリは周囲を警戒し始めた。




 やがてトトは泣き疲れてすやすやと寝息を上げ始めた。


「ふぅ。ようやく眠ったの」


 リリは小声でそう言って、眠っていて重たいトトの向きをできるだけ優しく変えて膝枕する。


「トトは凄いの。朝になるまでリリを見ながらひとりで暗い森の中にいたの」


 辺りを見渡してみても明るいのは気の上であるこの辺りだけで、地面の辺りは暗くなっている。そして、森の奥へ行くほどに、鬱蒼と茂る草木と立ち込める闇で視界が遮られている。


「家の近くの森はもっと明るかったの……」


 それは双子や両親が普段から森に立ち入るために、踏み固められたりして人の手が入っていたからだ。


 リリは不安そうに眠るトトに視線を落とす。


「うう、トトが眠ってるから心細いの」


 軽く抱き着こうと思ってトトの体に手を回すと、腰にあるナイフや袋をかけるためのベルトに気が付く。


「慌ててたから持ってこれなかったけど、トトは咄嗟に持ってきてたの。昨日の移動もこれが無かったらきっともっと大変だったの。……でも袋の中身はからなの」


 ナイフ以外だと小さな袋があるのみだったので、装備はこれで全部という事になる。ナイフと言っても、枝を落としたり獲物の急所に突き立てたりするものなので、一応それなりの長さはある。


「でも、これだけじゃ心もとないの……」


 リリは「はぁー」と溜息を吐く。


「これからどうしたらいいの……。まず衣・食・住だと、衣は暫くこのままでいいの。

 食はいつもより遠くに来たけどそんなに変わらないだろうから大丈夫なの。――あっでも、水は無いと困るの。思い出したらのどが渇いてきたの……。

 あと住は……あと一日くらい交代でここに寝て、盗賊がいなくなったことを確認するついでに村に戻ってみるといいかもなの。

 さしあたって必要なのは水場なの。村では井戸から簡単に水が飲めたけど、この辺りに川があるかは分からないの」


 ふと、トトの体の上に上って来たクモに気が付く。リリはそれを無造作につかみ上げて匂いを嗅ぐと、次の瞬間には口に放り込んで咀嚼した。


「やっぱりお肉の方がおいしいの」


 お肉というのも基本的に生だ。白狼族は肉食であるが、普通の人間と同じような生活も一応可能だ。言ってしまえば、肉食であったはずの犬が雑食になったのと同じようなものだ。(犬と一緒にしたら当人たちは怒りそうなものだが)

 因みに、この世界の普通の人間が食べたら腹を壊した後、大抵は死ぬ。赤ん坊のうちから慣らせばいけるなんて言ったら、殆ど全滅する。あくまで体の作りが違うのだ。


 閑話休題。


「あ、そうだ。適当な獣道を見つけたらいいの。そしたら、どこかに水場を見つけられるはずなの。リリちゃん天才なの」


 誰も居ない森の中で独り自慢げにふんぞり返るリリ。


「あとはトトが起きたら相談して決めることにするの」


 高くなってきた日差しから、トトが陰になるように少しずつ移動しながら、リリはトトの起床を今か今かと待ちわびた。



(思いついたものもあるし)後で話を追加しておきます(予定)

追加した場合はその次の投稿の前書きに書いておきます。

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