プロローグ~とある一室にて~
とある国、とある建造物の一室に『王』『宰相』『騎士』『魔導師』四人が揃い、床に描かれているものを見つめ、険しい顔をしていた。
しかし、その顔の奥にあるのは苛立ちなどの感情ではなく、今からすることへの後ろめたさのようなものであった。
まるで、悪さなどしたことがないない子供が、悪戯をすることを躊躇うかのような、または友人を、家族を騙すことを躊躇するかのように。
『王』は、その感情を抑えるかとができなくなったのか、息を吸い込み、口を開いた。
「本当に、これで良いのだろうか・・・」
『王』の言葉だけが、静寂を支配していた空間に響き渡る。
「仕方がないではありませんか。これが最後の希望なのですから」
『宰相』が『王』に言葉を返す。
『宰相』も、まだ躊躇いの感情を捨てきることはできていないようであったが、多少の覚悟はしているようだった。
「この国を救うためとはいえ、関係の無い者達を勝手に喚び出し、あろうことか、戦場に立たせようとするとは。私は王失格だな」
そう言って自虐的な笑みを浮かべる『王』に、『騎士』がそれを否定する。
「何を仰いますか!あなたほど国民に好かれている王はそうそういません!!」
『騎士』の言葉に『宰相』もそれに便乗する。
「ええ、陛下は多くの者達に好かれております。それはあなたが国民のことを第一に考えておられるからです。だからこの国のためにも、そしてこの世界のためにも、ご決断ください」
家臣達にこれほどの信頼を置いていることから、『王』がどれほどの人格者であるかが分かる。
『宰相』が『王』に決断を迫っていると、これまでずっと会話に入ってこなかった『魔導師』が口を挟んだ。
「陛下、お気持ちは分かりますが、もう今日しか『これ』を発動させることができません」
そう言って『魔導師』は、床に描かれた魔方陣に目をむける。
「『これ』を発動させるにしても、中止するにしても、悩んでいては何も始まりません。早くご決断を」
『魔導師』は、『宰相』と同じように決断を迫らせる。
二人の言葉を聞き、『王』は、確かにそうかもしれない、と思った。後悔をするのは後からでも良いかもしない。今は国民達のことを考えよう。なら、今取るべき選択肢は─────
『王』は覚悟を決める。
その顔を見た家臣達は、『王』の言葉を待つ。
王の取った選択肢は─────