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詩集 残雪の声

雪女

作者: 紀希枝

冷たい青の雪原に

たたずむ雪女がいます

空を冷やす冴え月の

銀色の光が降りそそぐ

その広い雪原で

ひとりでひっそりとたたずんでいます


冷たい青の雪原に

かじかむ雪女がいます

月より冷たい積雪が

世界を青く染めあげる

その寒い雪原で

ひとりでひっそりとかじかんでいます


冷たい青の雪原で

一人を待つ雪女がいます

血の気の失せた白い頬

血の気の失せた紫の唇

その青い雪原で

一人をひっそりと待っています



初雪の降る日には

二人で逢瀬を重ねていました

毎年雪の降る日に

二人で会う約束をしていました

毎年雪が溶ける日に

また来年の約束をしていました


初雪の降ったその日

二人で落ちあうはずでした

その一年の間に

男が死んでいたことを知らぬまま

女はひとり待ちつづけていました



冷たい青の雪原に

知らない雪女がいます

初雪を待っているその間に

男が死んだことを知らぬまま

その寒い雪原で

一人をひっそりと待っています


冷たい青の雪原に

知らない雪女がいます

男を待っているその間に

自分が死んだことも知らぬまま

その寒い雪原で

ひとりでひっそりと待っています

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