所詮は初戦2
性懲りもなく3話目です
スコップゴブリンを狙いに走って近づいて行く。
振り挙げる動作が見えた時点で速度を落として空振りを誘う。
振り下ろしたスコップが地面にあたり道路にヒビが入る。まともに当たればケガだけでは済まないだろう。
その隙を狙って切りかかるが避けられる。肩に傷をつけることができたがそれだけだ。
勢いのままに走って距離を離す。反撃を警戒したのと、もう一匹の鍬を持ったゴブリン(以下、鍬ゴブ)が俺を狙ってきたからだ。というか戦闘中に足を止めるなんて自殺行為だ。常に動きまわらないと死角を突かれてしまう。敵の数の方が多いと尚更だ。
投石していた時に気づいたけど身体能力で言えば俺たちが上だろうけど、タフさはゴブリン達が上だ。一方的に攻撃を仕掛けて軽くない傷を負わせているはずなのに衰えが感じられない。しかも2匹とも俺の攻撃範囲より長い獲物を持っている。能力向上のおかげで動きはある程度とらえることは出来るが簡単に躱せるかと言えばそうでもない。今のやり取りだけで心臓はうるさいぐらいに鳴るし冷や汗はかきまくりだ。
スコップゴブリンと距離を離し、あらかじめ用意していた投石用のコンクリートを鍬ゴブの顔にめがけて投げる。避けられたがすぐに距離を詰めて切りかかる。鍬を狙い武器破壊に成功。返す刀で斬りつけて結構深い傷を負わせることができた。スコップゴブリンの警戒も忘れない。近づいてきたのが分ったので切っ先を向けて牽制する。多少ひるんだようで動きが止まる。その一瞬の隙が命取りだった。頭に矢が貫通し倒れこむ。圭吾さんの援護だろう。そこで気を抜いたのが悪かった、鍬ゴブが殴りかかってきたのに対処が遅れた。とっさに左腕でガードしたが勢いのままビルの壁にぶつかり倒れこむ。折れてはいないようだがしびれが強くてうまく動かせない。
迫ってくるのが見えたのですぐに立ち上がり切りかかるが簡単に避けられる。バックステップして距離を離そうとするが喰らいついてくる。それならばと後ろに下がりつつ片手で突きの体制を整えて刺突する。勢いのままに突っ込んできた鍬ゴブは避けることができず背中から刃を生やすことになった。
そのまま倒れこむ鍬ゴブ
「はぁ、はぁ、何とか勝てた」
とんでもない疲労感を感じるが笹宮さんのことを思い出し辺りを見渡す。
離されてしまって見つけることができない。
「笹宮さーん」
壊れたビルの間を通りながら叫ぶ。
「芥か、ここだー」と声のする方に行ってみると所々擦り傷があって服がぼろぼろになっている笹宮さんと座って疲れた顔をしている平さん2人が手を振って答えてくれた。
無事のようで安心した。
圭吾さんともすぐに合流できた。
「はじめてにしては、俺たち、かなり良かったんじゃないか?危ないところもあったけどな!」
「援護ありがとうございました、2対1はすごく怖かったですけどおかげで助かりました」
「お疲れさん、アタシは1匹でも手こずってたのにやるじゃん。バット持ちのゴブ強かったわー」
「全員無事で良かったわ。守ってくれてありがとね」
とお互いの健闘を称えあった。
無傷じゃなかったけど初勝利には違いなく、誰も死ぬことなく終えることができて本当に良かった。
「え?」
「あ」
「んー?」
「これって」
突然、不思議な感覚に陥った。反応から察するに3人も同じみたいだ。
俺は雷焔の新しい力の使い方を突然「理解」したんだけど、レベルアップってことなんだろうか。他の3人にも聞いてみる。
「あの、さ…武器の使い方が突然分かったんだけど、その様子だとみんなも?」
「おう、矢のバリエーションが一個増えたのと、簡単な場作りができるようになった」
「アタシも澄ノ極の使い方が分かった、っていうか分からされた感じだな」
「んー、私は制限が解除されたって感じかな、ちなみに戦闘に使える魔導術が2つ、支援魔導術が3つできるようになったわ」
「これってレベルアップってやつじゃねーか?やべぇな、すげー嬉しい」
「そうだね、でも一つ言いたいことがあるんだ」
「奇遇じゃん、アタシも」
「それなら俺もだな」
「「「平〈さん〉強くなりすぎじゃない?」」」
続きます。